004.スキル試し
「身体強化スキルにしたそうよ」
「そうか。でも、なんで身体強化スキルにしたんだ? 大体の子供は火属性魔法スキルを習得するらしいぞ。ちなみに父さんもだな――」
「お父さん……?」
ママの殺気を感じ取って父親は黙り込む。
まあ身体強化スキルなんてサブスキル扱いだもんね。
一般的な身体強化スキルの使い方は、魔法戦闘時とかにスピードを強化したりするのに使う。
剣とかの戦闘では大体そのスキルに身体強化スキル的になものが含まれているため使われないらしい。
「う~ん。色んなスキルに応用できそうだから?」
そんな適当なことで誤魔化したが、まあ子供のことだからって感じで親も納得してくれたので良しとしよう。
でも、しっかりとした理由はある。
身体強化スキルって極めたら最強でしょ?
例えばスピードを高めたとしよう。そして相手が魔法を使ってきたとしても避ければ攻撃を受けることもないし、防御力を高めれば攻撃を受けてもダメージが少なくて済むし、その隙をついて攻撃すれば勝てる。
まあ、この中で一番使えそうかなって。
ちなみにもう一つ悩んでいたのはテイマーだ。
テイマーってモンスターを操ることができるじゃん? だったら自分が戦う必要はないし、極めれば最強クラスのモンスターをテイムすることが可能だし。
でも僕としては、自分が戦闘に参加して戦いたかった。
だって、その方がカッコイイよくない?
ヒーローって身体能力で戦うイメージあるからさ。まあ本来だったら二十歳くらいの人間が何を言ってるんじゃいって感じだけどね。
あとはモンスターを操るだけだと強くなった感覚も味わいにくいだろうしさ。
「まあ、これから色んなスキルを習得できるしな。今のスキルを色々考えたところで大した問題はない!」
お父さんはそう言うが、実際は違うんだけどね。
まあ口に出して言ったら色々と面倒だし家を追い出されかねないから、まずは平和に物事を進めて多少強くなったところでカミングアウトすればいいだろう。
「よしっ、早速トレーニングでもしますかね」
結局のところ強くならないと意味がないわけだから、善は急げだ。
◇◇◇
僕はスキルを習得したその日からトレーニングを始めることにした。
とはいっても何をすればいいのか分からないし、とりあえずは親から許可を貰って森に行くことに。
僕が住んでいるのは少し大きめの村だ。
周りは森に囲まれていて、王都からはかなり離れている。
「でもスキルレベルを上げるためには最適か」
まずこの森はモンスターが出現しない。
だから親も三歳の僕を一人で行かせることができたのだろう。
ちなみにモンスターを倒すにはもっと先の森などに行かないとならないようだ。
でもいきなりモンスターと戦いたくはないからね。まずはスキルのレベルを上げてモンスターを倒せるくらいにはならないと。
「ここら辺でいいかな」
もしも何かあったときのためにあまり家から離れないようにはした。
もしかしたら盗賊やら何やらがいるかもしれないからさ。でも今まで一度も村でそんなことが起きたことはないらしいから、村人も森の外に出ない限りは安全だ、と言っている。
「でも何すっかなー」
本当に何をすればいいのか分からん。
身体強化スキルは攻撃力と防御力、スピードとスタミナの四つを上げることができるらしい。
だからその四つを上げる方法が分かればスキルのランクを上げやすくなるというわけだ。
スキルレベルが上がれば精神も鍛えられるらしい。
「とりあえず木でも殴ってみようかな」
漫画とかだとよく木を殴るトレーニング的なことをしていた覚えがあるし、おそらくこれをやれば攻撃力が上がるんだろう。
そして僕は身体強化スキルを発動する。
身体強化スキルは常に発動できるわけではない。色々と消耗するものがあるから、常に発動していたら死んでしまう。
「こんな感じかな」
身体強化スキルを習得した時になんとなくスキルの発動の仕方が感覚的に分かっていた。
いまいち説明しにくいが、身体からフワッとパワーを出す感じ。フワッと、ね。
「結構パワーがみなぎってくるな」
少し身体が軽くなったような感じと、今なら何でもできるんじゃないかというパワーの両方が感じられる。
「よしっ
僕は覚悟を決め、思いっきり木に向かってパンチをした。
「痛ったッ!?」
僕の大事な拳に激痛が走る。
まあ、そりゃあ木を殴ればこうなるだろうけど、身体強化で若干威力が増しているのもあって想定よりも拳へのダメージが大きかった。
「木に変化はないな」
まあ三歳児、しかも身体強化スキル習得したてなのに木を簡単に倒せたら異世界が恐ろしすぎて前世に戻りたくなってしまうよ。
「でも少しはスキルゲージ上がったな」
スキルゲージというのは、そのスキルのレベルアップに必要なポイントの貯まり具合を表したもの。
「あと攻撃力ゲージも上がった」
攻撃力ゲージも似たようなもの。これを上げに上げまくればめちゃくちゃ強いパワーが手に入ると思われる。
「こんな風に色々とテストしてトレーニングメニューを組み立てればいいのか」
僕はそれから一日かけて色々と身体強化スキルについてテストしたのだった。