003.スキル決め
今日は僕がスキルを習得できる日。
三歳になると貯まったスキルポイントを使って、一つだけスキルを習得できることになっている。
これは法律とかではなく、この世界に存在する『絶対に破れないルール』らしい。
通常は大した行事でもない。
しかし僕にとっては人生で一番重要なのである。
そう、僕はこの世界で一つだけしかスキルを習得しないと決めているから、今日習得するスキルだけで人生を生き抜いていくことになるわけだ。
普通の人たちよりも重要度が高いということ。
他の人たちは年齢を重ねたり、モンスターなどを倒した場合なども貰える。
だから普通はこんなところで深く悩んだりしない。
家庭によっては親が全て決めるところもあるらしいが、僕の親は自分で決めてくれるそうだ。
しかし父親は納得してないようで、これはママの意見によってのことらしい。
ちなみにママは美人である。
それとは逆に父親は野獣だな。それなりに強い冒険者らしい。
ちなみに僕はママに似て美形だと思う。まだ三歳だから確かなことは言えないけど、このままいけば良い感じなるはず。
でも逆に兄の方は父親に似てしまったらしい。可愛そうに。まあ良いスキルを貰えた副作用とでも思ってこの先の人生をたくましく生きてほしいものだ。
まっ、そんなことより僕のスキルの話だ。
僕はスキルを一つしか習得できないのともう一つ、初級スキルしか習得できないという意味不明な条件が課せられている。
この条件は僕が自分に課せた条件ではない。どうやら世界の決まり、要はこの世界のシステムみたいなものだ。
僕はこの条件を知った瞬間、心が揺らいだ。
本当に一つのことしか極めないという条件ままでいいのか? もしかしたらC級かD級のスキルを習得してからでもいいんじゃないか? かなり葛藤した。
でも僕は自分のルールを破るのが怖かった。
前世で失敗してるし、何より神様のような存在がいるかもしれない。もしも自分に甘かったりしたら天罰が下るではないだろうか、という恐怖。
そんな葛藤の末、僕はこの初級スキルと一生向き合っていくこと決めた。
「昨日説明した通りにやれば大丈夫だ」
「分かった」
僕は半透明ウィンドウのようなものを展開する。
これは最初この世界に来て一番驚いたことなんだけど、どうやらこの世界は近未来のゲームのようなもの近い。
これを見た時は本当に異世界かどうか怪しんだね。
スキルとかもゲーム感が凄いし、色々とゲーム要素が多すぎる。
まあ異世界ってこんなものだろうと思っておくことにしよう。それをを考えるのは何故時間というものが存在しているのかを考えるようなものだしね。
まあスキル習得の話に戻るけど、僕の半透明ウィンドウに映し出されている自分のステータスや名前の上に、『スキル』という項目がある。
「ここをクリックと」
ちなみに手とかを使わず頭の中で操作している感じだ。
スマホもこんな感じだったら最高だっただろうに。
もしも異世界に来なかったら、前世の文明もこんな感じに進化したりしたのだろうか。
「見てみたかったかもしれない」
まあ前世への未練は色々とある。家族とか数少なかった友達もどうしているか気になるしな。
でも考えると悲しくなるからやめとこう。
「で、この中から選ぶんだよね」
「そうだ」
スキルのページには、『火属性魔法』『回復魔法』『テイマー』『身体強化』などの初級スキルが並んでいる。
まあどれも弱そうだ。
ちなみに『火属性魔法』には進化系的な『炎属性魔法』があってこれはB級くらいの強さはある。
だから『火属性魔法』はお試しみたいなものだ。
「さあ、何にする?」
父親とママの視線が痛い。
まあ自分の息子の初スキルだもんな。気になるのも仕方ない。
でも僕は正直言ってこの中からすでに二つの選択肢に絞ることができてる。
どっちにするかだが……。
「う~ん」
その二つを色々と再度シミュレーションしてみる。
スキルの存在を知ってから色々悩んだのだが、やはり最後までこの二つは悩み所だ。
だけど心の中では大体決まっていると言ってもいいかもしれない。
使える使えないより、僕がやりたいことをするのが一番だろう。
正直なところ初級スキルなんだから何を選んだところで変わらない。
逆に言うと何を選んだところで後々後悔はするはずだ。今までの僕の人生経験上。
「決まった」
「おお、そうか!?」
「何にするの?」
僕はスキルのページに表示された4つの中の一つに意識を向ける。
『本当によろしいのですね?』
最終確認をされる。
まあ、もちろんOKだ。
『スキルを習得しました』
ああ、決めちゃったよー。ヤバい、どうしよう。
女子高校生のごとく心の中で騒ぐ。
「ディラン、どんなスキルにしたの?」
「うーんとねー」
「身体強化スキルかな……」