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くっころ女騎士さんが鬱で死にそう。  作者: 呑竜
「第四章:女騎士さん、覚醒す」
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「魔王の娘はいなくなった」

いつもお読みいただきありがとうございます(=゜ω゜)ノ

ラフィーニャ失踪からの怒涛の展開、お楽しみください!

 ~~~タカミチ~~~




「キッコ。ラフィーニャがいなくなったってどういうこと?」


 慌てて駆けつけてみると、ラフィーニャの部屋の真ん中で、キッコが真っ青になって立ち尽くしている。


「それがその……わたしにもわかんなくて……。ただその……朝から返事が無くて、昼になってもやっぱり同じで、食事にも手をつけてなくて……。今までそんなの無かったから、さすがに変だと思ってマスターキーで入ってみたらもぬけの殻で……」


「昨夜、最後に話したのはキッコなんだろ? 何か心当たりになること、ないのかい?」


「──タカ兄ぃ」


 キッコの肩を抱いたノッコが、きっと目線をきつくして僕を睨んだ。


「キッコを責めんな」


「あ、ああ……ごめん」


 言われて初めて、僕は自分の表情の険しさに気づいた。

 自分がどれだけ無遠慮な質問をしたのかにも。

 今一番辛い気持ちでいるのはキッコなのに。

 

「ついつい……ホント、ごめん」


 気まずくなった僕は、改めて部屋を見回した。

 上代村ここへ来てから数週間の、ラフィーニャの生活の名残りを目で追った。


 荷物は意外なほどに多かった。 

 東京からの宅配物とアマズンからの購入品で、八畳間が埋まりそうになっている。


 漫画やゲームソフト、アニメのDVDやキャラクターのフィギュア。

 ゴスロリ衣装に靴、チョコにスナック菓子にジュース類。

 とにかくいろんなものが法則性無視で雑多に積み上げられ、一番奥のノートPCが乗っている文机に辿り着くまでには、踏み石みたいにところどころ空いた空白地帯を踏んで行かなければならないほどだ。


「ここで、あいつは……」


 一日中過ごしていたのか。

 誰にも顔を合わせぬように閉じこもって。

 トイレには皆の隙を窺って行って、風呂には深夜に入って。


「ずっと……過ごしてたのか……」


 母親を失って、家臣たちに裏切られて。

 エルズミアにいられなくなって、逃亡先として選んだここでも過ごし辛くなって。

 その気持ちはいかばかりだろうかと考えた。


「タカミチ……」


 メディがそっと、僕の服の裾を掴んできた。


「探そう。探さなければ」


「うん……そうだな」


 僕は強くうなずき返した。




「なあタカ兄ぃ。キッコがなんか、言いたいことあるって」


 ノッコに背中を押されるようにして前に出てきたキッコが、今にも消え入りそうな声で言った。


「その……そのね? 思い出したの。わたし昨夜、言ったの。ラフィーニャ様が言ってたから。タカ兄ぃさんと仲直りしたいって、出来ればメディさんとも上手くやりたいって。だから……村に伝わるあの伝説の……」


「伝説のってもしかして……アマハトの岩屋いわやのことか?」  


 僕の問いに、キッコはこくりとうなずいた。


 あま羽音はおとの岩屋。 

 通称アマハトの岩屋。


 日本の古来神の一柱である天若大神てんじゃくのおおかみの降臨の地とも言われるそこは、この周辺の隠れた名跡だ。

 岩盤に深く掘られた横穴はなかなかの威容だが、迂闊に入り込んだ者は強すぎる神気によって動けなくなり、いずれ衰弱して死んでしまうという言い伝えがある。


 言い伝えと言っても根も葉もない噂話の類ではない。

 かつては本当に死者を出したこともある危険な場所だ。

 正体は地底から噴出する有毒ガス。

 だからこの辺の人は近づかないし、入り口にはバリケード、さらには立て看板だってしてあるのだが……。


「アマハトの岩屋の近くには願い事をなんでも叶える花が……天若生てんじゃくせいが生えてるって教えちゃったの。もちろん、初めての人には危ない場所だから、わたしがついて行ってあげるねって……。言ってたんだけど……」


「……なるほどな」


 それを聞いたラフィーニャは、じっとしていられなかったのだろう。

 あるいは自分ひとりで取らなければ意味がないと考えたのか。


 どちらかはわからない。

 わからないけれど……。


「OK。だいたいわかった」


「……タカ兄ぃ、わかったってどういうことだ?」


 口元を引き結んで覚悟を固めた僕に、キッコが恐る恐る訊ねてきた。


「そんなの決まってるだろう。ラフィーニャを探しに行くのさ」 


「だけどそんな……準備だってすぐには……」


「速攻で済ませる」


 ラフィーニャがどこまで入り込んでいるかわからない以上、ガスマスク等の装備品は必須だ。

 もちろんそんなすぐに用意出来るものではないから、何か似たようなもので代用するしかないのだが、さてどうするか……。




「おい! タカミチ!」

「タカミチ! やべえど!」


 健吾と亮太が、息せき切って駆けこんで来た。

 僕の姿を認めるなり、口々に叫んだ。


「クマ牧場に向かってた車が横転したってよ! ヒグマが三頭脱走して、こっちの方に来てらってよ! 絶対家の外さ出るなって!」

「おめえんどこ娘っ子さたくさんいたべよ! すぐに言い聞かせねば!」


『…………っ!?』


 さらなる緊急事態の到来に、僕らは顔を見合わせた。


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