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ヘキサグラム エクスチェンジ  作者: ktrb(かたりべ)
7/11

ヘキサグラム エクスチェンジ 01 妖歌姫ーセイレーン Ⅱ

まずはこのページを開いて下さった皆様ありがとうございます。よろしければ読んでやってください。


昨日の投稿からじわじわPVが増えていくのが嬉しくて、いつもより肌色マシでお届けしたいとお思います。ご覧になって下さっている読者様、本当に本当にありがとうございます。


それでは楽しんでいってください。

また後書きでお会い出来ますように。

10 八雲魅月(やくもみつき)の事前準備

20250206

13:30



「ねぇぇえ、みっちゃんみっちゃん、オラァお腹が減ったんです。ペコペコなんです。」


ソファーの背もたれに全力で体を預けてずり落ちそうになっている、不肖過ぎる私の兄、八雲陽臣(やくもようしん)が餌付けを要求してくる。えぇい、うっとおしい。


「みっちゃんさん、陽兄(ように)ぃがお腹減ったって...」


「イヤイヤ、みっちゃんさんはアナタ。マイシスター!八雲魅月氏!」


「みっちゃんはやめれ、ってちっちゃい頃から何度も言ってるじゃん。ホントに脳味噌溶け始めてるんじゃないの?」


「...だとしても愛する妹の名前を忘れるワケがねー!そうだろ、みったん!」


「アイドル風にしても許さぬ。冷凍庫にある食品、片っ端から食べていいから少しは大人しくしてて!どうせ夜にはここ引き払う予定だから。好きなだけ食べちゃってどーぞ。」


陽兄ぃはそう聞くやいなや、全身を振り子のようにして立ち上がり脱兎の如く冷蔵庫に向かう。


「えっナニ、俺達明日からホームレス?やっべぇ、っすね!ホームレス交換者ここに爆誕?!」


そういいながら、手にした冷凍食品を()()()()()()()()()()


「一応、陽兄ぃの脳味噌でも普通に暮らして行けるだけのお金は、土地転がして貯めてあるから当面は問題ないよ。まぁ、陽兄ぃだったら別に家なくても大丈夫でしょ。」


「オッホォー!妹からほめられちったい!」


気色の悪い奇声を上げながら冷凍焼きそばをすすり出す心底愚兄。

見れば、右手に箸。左手で解凍という器用かつ奇怪極まりない所業でベルトコンベアー宜しく、エネルギーを蓄えていく。


「陽兄ぃのリクエスト通り、6時くらいから始めるけど、その準備でしばらく潜るから、その間ホントに大人しくしといてよ!この前みたいに、おでこに肉とか書いたら百辺死なす。」


「......それフリ?」


「フリじゃない!死んじゃえ![励起(ドライヴ)]!」



あの馬鹿アニキの相手をするのがイヤになった私は、自分の身体を置き去りに電子の世界へ潜入(ダイブ)する。


昔のアニメかなんかで[ネットの海は広大だ]、みたいな台詞があったけど、実際その通りだった。


でも私の場合、そんな情報の海の中で溺れることなく、ノータイムで必要な情報をピックアップして、直感的にプロテクトを突破して、この世界に氾濫しているあらゆる電子情報を手中におさめるコトが出来る。


はっきり言って電子の海(ここ)ではチートの塊だ。


まぁ、その分代価もそれなりなんだけど。



私達が能力に目覚めたのは何年前だったっけな...データに頼ってる分、どうでも良いことはあんまり覚えないようにしてるなんて、陽兄ぃのコトは笑えない。


ワケのわからない宗教に頭から爪先までどっぷりと使ってしまった私達の両親は、ご多分にもれず親としての責務を放棄した。


ろくに食事も与えられずにどんどん私達の体は痩せ細っていって、いよいよヤバいという段階になったとき、エクスチェンジャーとしての私達は産声を上げた。


あとから調べてわかったコトだったけど、本来ステージ1と呼ばれる段階から順々にステージが上がっていくハズが、私達はいきなりステージ2からだったみたいだ。

双子で同じタイミングに能力に目覚めたからなのか、お互いの能力が共鳴でもしたのかはわからないけど、取り敢えず自我の喪失みたいな状況は私達には当てはまらなかった。


陽兄ぃの能力が発現していたから、気付いた時には家の中がちょっとした火事になってたけど、別にあの家に特に思うこともなかったから、端末一つ持ち出して、私達はあの牢獄から自由になった。


それからは慣れてきた自分の能力の特性を利用したり、陽兄ぃが食べ物盗んできたりして、徐々に人間らしい暮らしを手に入れていった。


この特区は人類の新天地ということもあって、最新の電子技術がふんだんに使われていたから、12歳の子どもでも、私の様な異能があれば、普通に中学校に通うことさえ可能だった。ザル過ぎだろ、実験調査特区(ココ)


そんなこんなで栄養をしっかり取って、よく寝て、よく遊んで、こんなに立派に育ったある日。


あー、何時だったっけなぁ。確か2月1日かな?


それくらいに、ある人物から幾重にもプロテクトが施してある私の個人端末にメッセージが届いた。


[この世界のテクスチャーの向こう側を知りたくないか?]


差出人は不明。IPアドレスさえ追跡出来ないような、そんなワケのわからないメール。


そのメッセージの送り主にちょっと興味が出て来てしまった私は、自分の異能をフル活用して差出人とのコンタクトに成功した。


差出人は自らをベテルギウスと名乗って、私に今回の遊びの概要を説明すると、遊び終わった後のアフターフォローの情報だけ残して、また足取りが掴めなくなった。




『っと、ここら辺のアングラサイトなら、それなりのバカがそれなりに引っ掛かってくれそうかな。うん、架空の電子マネーを適当な口座に突っ込んでそれをランダムに振り分けて...』


まぁ、雑兵モブ達の諸君も数を揃えれば、それなりの時間稼ぎにはなってくれるでしょう。


きっと天霧(あまぎり)ってお姉さんは、一般人を殺したりしないだろうし、こっちも後腐れなく楽しめるハズ。


もう一人のヘパ君は陽兄ぃがご執心だし、取り敢えずタイマンの状況を作るまでの仕込みはOK。


『あとはその二人を釣るための仕掛けだけど...さぁ、どうすっかなー。陽兄ぃに直接行ってもらうのは確定としても、そっからのフォローがなぁー。陽兄ぃ、控え目に言っても相当アレだしなぁ。』


多分オートで陽兄ぃの位置座標を特定するくらいは、向こうもやりそうだし、いっそのこと移動は上を使ってもらった方が足がつかなくていいかもなー。


『うん。決めた。陽兄ぃの負担がちょっと増えるけど、変にこねくり回すより、そっちの方がスムーズにいきそうだ。』


よし、これであとはベテルギウスがご所望の情報だけパパっと手に入れて、終了でござる。


『えっと、名前は聞いてあるから...んー、楽々ヒットか。警戒心の欠片もないなぁ。コイツら。いゃ、一生懸命逃げてコレなのか。』


取り敢えず二件の個人プロフィールを私の端末に保存しておく。


それじゃぁ、戻ろっかな。そろそろ戻んないと、私の身体が心配だ。

電子の海に漂っていた意識を浮上させていく。その感覚は水中から押し出される感覚とそっくりで、心地の良い倦怠感が私を包んでいく...浮かぶ浮かぶ(ちゃぷちゃぷ)...浮かぶ浮かぶ(とぷりとぷり)...




私の身体に帰還する。と同時に、身体にのし掛かってきた地球の重力が私を出迎えてくれる。


うーん、愛が重たい。

目を開けると、私の瞳と同じ色をした、二つの翡翠とこんにちは。


「って、近い、ちかいぃ!なんなの、また肉って書いてたの?!」


「違う。違うとき。違えば。違わい!!」


ナニ、その四段活用?


「いよいよ、みつきちのヨダレさんが無視出来ない量になってたから、お口フキフキして上げようとしてたのです!」


見ると陽兄ぃが言ってた通り、胸元までヨダレでぐでんぐでんになっていた。うーん気持ち悪い。


「陽兄ぃ、私お風呂はいってくるから。わかってるよね...」


「わかってますよー、覗かないです。妹のお風呂を覗きたがる様な変態は、地獄の業火に抱かれて眠れ!第一、俺は貧乳(まないた)より巨乳(ふたごやま)の方が好きですので!」


マジもんの変態にバイザーを全力でぶん投げる。


「死ね!死ぬとき!死んでしまえば!!もっぺん死ね!!!」


「いい、四段活用ですね!流石魅月ちゃん!」


そう言って飛んできたバイザーを足で蹴り上げ、頭に被る変態機動。


その様子を横目に大股でお風呂場に向かう。



「はぁー、なんなのもう!いつの間にかまたパンイチに戻ってるし。」


ぐずぐずになっていたお気に入りのロンティーを脱衣かごに突っ込む。太ももで粗くカッティングされたホットパンツも手を使わずにそのままかごに入れる。


上下で揃えていた、薔薇のレースの下着に包まれた自分の身体を姿見で確認する。


そりゃ、確かに全国平均とくらべて、多少ちょっとリトビット、サイズは小さめなのかもしれない。

それは甘んじて受け取ろう。

だがしかし、そういう需要だって世界には厳然と存在してるワケだし、何より私の身体は発展途上だし、まだ15だし!


可能性という名の獣を私は信じている......


そんな切なる祈りと共に、私は拘束具(フロントホック)を開放する。

カチッ、スルッ、プラーン


なんの抵抗もなく、ブラが肩口に垂れ下がる。


胸に沸き上がる哀愁に気づいていないフリをして、少しだけ伸びてきた肩口に掛かる自分の青髪に手を沿える。


別に陽兄ぃと同じ赤髪がイヤだったワケじゃない。陽兄ぃと同じ方向を向くだけの自分じゃなくて、違った見方で陽兄ぃと同じ方向を目指して生きたいと感じた衝動に任せて、長かった髪をバッサリ切った。そのついでに髪も青色に染めた。


今ではこの髪は自分の身体で一番気に入っている。

私が私としてこの世界に立っていられる証そのものだ。


うん、とっとと入っちゃおう。


右手の中指をパンツのお尻側に引っ掻けて、そのままスルスルくるぶしまで下ろしていく。今日はちょっと長めの励起(ドライヴ)だったから、もしかしてって不安も少しあったけど大丈夫だ。粗相はしていない。


......揉むと大きくなるという都市伝説が存在する。一瞬、その誘惑に負けそうになる。...けど、大丈夫だし、何もしなくても大きくなるし!そんな誘惑なんかに絶対に負けない!!


自分の中でもよく解らない葛藤と対峙するのは、それまでにしてお風呂場の扉を開ける。


陽兄ぃのあとだから、お湯の温度を確認して、しっかり人が気持ち良く浸かれるくらいに調節。


その間に口元のヨダレ共々、蓄積した疲労をシャワーで洗い流す。


あー、やっぱりお風呂は大好きだ。そりゃ、声だって出ちゃうよ。


「あぁ、ンぅ...んっ。ふぃー。」


頭から程よい温度のお湯を浴びながら、手の感覚だけでいつものソレを探り当てる。


丁度、頭の大きさ大の穴が中央に開いているドーナツ状のソレを、濡れた頭に装着する。

私はお風呂は好きだけど、シャンプーが苦手だ。


単純に目に入った時の痛みが我慢出来ない。

気持ちの良いものはすべからく快感一色であるべきなのだ。


手に出した、シャンプーで髪をマッサージしながら、お気に入りの薔薇の匂いに包まれる。目を瞑っている分、その香りがはっきり嗅ぎとれる...気がした。


ボディーシャンプーも薔薇の匂い。間違っても陽兄ぃのボディーシャンプーに手を着けてはならない。


アレは凶器であり、アレを喜んで身体にぶっかける陽兄ぃ自身も狂気の具現だ。


ナニ...あのガンギマリメンソール。せっかくあったまりにきてるのに、凍死するかと思ったわ。


体を満遍なくごしごしして、まとめてお湯で流す。

泡が全部流されて、気持ちツルツルしてきた体を一撫でして、最後にコンディショナーで仕上げ。


ふー、さっぱりしました。


あとはゆっくり、体をあっためて......




「...ちゃーん!魅月ちゃーーん!!みつき総大将ぉーー!!!」


......もう、聞こえないフリしてたのに!


「なんだ!一等兵!!!」


ガチャリ


「電話、でんわ!ベテ公からでんわ。」


.........マジ?


「わかった。端末持ってきて。あと、いいからとっとと扉閉めて。」


「試してガッテン!」



指示通り端末を持ってきた陽兄ぃをお風呂から追い出して、湯船に浸かりながら通話に応じる。


「ハイハイ、自称 コード アルテミスこと八雲魅月でございます。ベテルギウスさんでいいのよね?」


(あぁ、君の推察通りだ。こうして会話をするのは初めてになるがね。)


加工された電子音声が小さめのお風呂場にこだまする。性別を隠したいのか、それとも肉声を失っているのか。

どっちでもいいや。


「そーですね。あっ、敬語の方がいいですか?それとも砕けた感じ?」


(キミの好きな方で構わないさ。例の送り主と届け先のデータは手に入れられたかな?)


「どっちもダイジョブです。積み荷ブンどられてから、慌てて色々住居変えてたけど、あっさり特定出来ました。」


(流石に仕事が早い。もし余裕があれば、追加の仕事をお願いしたいのだが。その分の追加報酬もそちらに届けてある。)


「んー、内容次第ですかね。なんとなく想像はつきますケド。陽兄ぃ向きの仕事でしょ?」


(話が早くて助かるよ。我々はこちらの送り主のほうを担当する。)


「で、私達でこちら側の届け先を担当するってコトですか。陽兄ぃの余力次第かなぁ。」


(出来たらで構わない。勿論、私が直接出向きたいところではあるのだが...)


「わっかりました。陽兄ぃにも伝えておきます。」


(そうか、ならキミの端末に報酬(オモチャ)の詳細を送っておくので確認しておいてくれ。)


「今度はお茶でもしながら、ゆっくりお話ししたいんですが。」


(ハハハハハっ、そうだね。ティーセットを用意して待ってるよ。それでは楽しんでくれ。)


NO SIGNAL


液晶とにらめっこ。んー、男かな女かな?


いい加減そろそろ出なきゃのぼせちゃう。


さてさて、これで準備は整った。


三日月の形に口元が歪む。きっと忘れられない夜になる。


そんな予感を胸にしまって私の中の月蒼嬢(アルテミス)が踊り出す。


ここまで読んで下さった皆様ありがとうございます。お疲れ様でした。


如何だったでしょうか。

八雲兄妹はアタマを使いながら、アタマを極力使わずに産み出された、個人的にはお気に入りのキャラになってくれました。


もっともっと皆様に愛されるキャラ作りを目指していきますので、よろしければ今後もお付き合い下さい。


それでは長々と失礼しました。

また次回も皆様とお会い出来ますように。

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