ヘキサグラム エクスチェンジ 01 皇換者ーエクスチェンジャー
まず初めに、気まぐれに本ページ開いて下さった皆様に心から感謝を。ありがとうございます。
当作品はぶっちゃけますと、異世界行きません。転生出来ません。俺ツエーも一部の人間を除いて出来ません。女の子も巨乳美乳幼女お姉さん満遍なく出ますが主人公しゅきしゅきになるか分かりません。大体出来ないことだらけの中、歯を食いしばりながらナニクソと頑張る少年少女達の成長物語と、それを見守るおじちゃんおばちゃんお兄さんお姉さんの話になる予定でございます。予定は未定ですが。
あまり肩ひじ張らない様に楽しめる作品にする所存です
更新ペースは週1から2くらいになると思います。ご容赦ください。
もし気が向いて最後まで読んでくれる方がいるのなら、その際は後書きでお会いしましょう。
20250202
『ねぇねぇねぇ、知ってる?ノストラダムスの大予言。昔、流行ったらしいオカルトネタなんだけどさ、なんか結構マジモンの話なんじゃねぇかってカレシが言っててェ。』
『うっは、クソきめぇっすね。んー、なんでしたっけ、のすふぇら...』
『おい、コラ。てめぇ今なんつった』
『だから、のすふぇらなんとかですって。』
『ノストラダムスだっつーの!』
『そっすか、流石パイセンっす。チョロアマNO1は伊達じゃないっす!んーと、のすとらだむす...っと』
『なにしてるん?』
『うっは、ちょ、このヒゲのオッサンすか。胡散臭さ振り切ってますね、こりゃ。ってか、キバヤシとか誰だよ、コレ!ヒャっヒャっヒャ...』
スマホ片手にゲラゲラ笑う同年代くらいの女子を横目に信号待ちで足を止める。もう暦は2月を迎え、六方を海に囲まれたこの街では、容赦のない寒波が立ち並ぶビル群の隙間から横殴りに吹きすさぶ。
口元まで覆うコートのファスナーを一番上まで上げようとしたその瞬間、ポケットからの微かな振動を感じ、相手を確かめずに着信に応じる。いつも通りの通過儀礼。
『コード へパイストス、仕事だ。二二〇〇現着。詳細は後程端末に。』
「了解」
それで十分だ。万が一しくじったとしても、後腐れなく使いつぶされるのが俺の仕事。
ちくりと刺さるいつかの誰かの言葉に蓋をして、寒空の中オプションを受領しにラボに向けて進路を変える。
見つかるも八卦見つからぬも八卦。とっとと終わらせて食事にしよう。ここまで冷え込むならラーメンあたりがベストか。......そんな益体もないことを考えながら、明かりが目立ち始めた繁華街を背に歩みを進める。
01 天霧暁良の人事異動
20250204
「失礼いたします。」
そう告げて極めて趣味の悪い局長室に足を踏み入れた。ふと視線を下げれば、そこには脂ぎった面をテラテラに光らせた節制の概念を彼方にブン投げて久しいであろう肉の塊...否、我等が栄えある特区治安維持局の局長の姿。
「いやぁ、非番中に呼び出してスマンね、天霧クン。しかしこれもキミの栄転を誰より早く伝えるのが局長である私の務めだと思ってのことなのだよ。」
気色の悪い猫撫で声を上げて、粘つく視線を腰のあたりから胸元にかけて上げて止める。コイツはセクハラと言う言葉を知らんのか。内心で舌打ちし、この男の顔面に拳を打ち込み続ける様子を脳内に描きながら口を開く。
「栄転とは?そのお言葉から察するに人事異動ということでしょうか。お言葉ではありますが着任してからの対象Eへの対処に関して問題はないかと...」
「私は栄転と言ったのだ、天霧クン。キミのその類い稀なる対象Eへの対応力が、あるお方の目に留まってね。この私が是非にと上申したのだよ。」
本気でキメ顔をかましている馬糞、いや局長とこれを機に顔を合わせなくて済むのなら、余程の僻地であったり相当な厄ネタでない限り、それは大変結構だと返答を決める。
「大変光栄です。局長のご厚意に甘えさせていただきます。差し当たって次の出向先についてお伺いしたいのですが...」
「今年の8月に国連直轄で新機軸の独立治安維持部隊が新設されるのは知っているかね?全世界6ヶ所ある特区の中、最初のテストケースということで、私にその話が回ってきてね。その部隊員の選定から管理までを君に任せようというワケなのだよ。早い話が新設部隊のケースオフィサーだ。もちろん新設に辺り、キミをバックアップするスタッフも国連から派遣されてくるので心配はいらないよ。」
......このブタは何を嬉しそうに語っているのか。確かに局の食堂でそんなウワサを耳にしたけど。オブラートをひっぺ返せば、途轍もなく胡散臭い構想の実験部隊を作り上げてそれを管理運用しろと......
しかしまぁ、ここで全力の仕事が出来ず燻り続け、ブタの下卑た視線に晒されるよりかは幾分マシかな。
「謹んでお受けします。それでは着任の準備に取り掛かりますので失礼させて頂きます。」
またクソくだらない食事の誘いやら何やらが聞こえる前に、足早に部屋を出た。直後、測った様なタイミングで風鈴の音色を思わせる声が掛けられる。
「おめでとー、アキラ。ようやくブタのケツ拭いから解放されるんだー。でも話を聞く感じだと、そっちも大分キナ臭そうな感じだよねぇ。あんなポンポン返事しちゃってよかったの?」
局長補佐であり私の同期の三笠ともり。この特区治安維持局、通称"特安"のほぼ全ての個人情報をあの手この手で手中に収めている影の女帝。あのブタの飼い主でもある。
完全防音のあの部屋での会話を当然のように把握しているのは推して知るべしといったところ。
「いーンです。大体この稼業で生活してるヤツは、総じて蓋を開けて中身のぞいてみれば対象と大して変わんない方が多いんだから。そこら辺はともりの方がよく知ってるでしょ。ダイジョーブダイジョーブ。それより一服しよ。ここの喫煙所ともしばらくお別れになるワケだし。」
「そっかー、アキラとここでタバコ吸うのももう最後になっちゃうのかー。寂しいなぁ。そんじゃ、最後のタバコデートに出発しましょう、そうしよう!」
そう言って歩き出したともりの後ろ姿は、同姓の私から見ても変な気分にさせられる程圧倒的な蜜の匂いが漂っている。
日本の血が半分、後の半分はロシアとフィンランドらしい。そのせいか日本人離れした肉感的な不二子ちゃんスタイルと腰まで届くゆるくウェーブしたブロンド、止めに少し垂れた目尻という女の武器を装甲車に満載したようなその威容はまさしく男性特効の化身と言って差し支えない。
正中線を一切乱さないモデル歩きで男性局員の視線をちぎっては打ち返しちぎっては打ち返しながら目的地に到着する。
「ごめんなさい、ちょっと使わせてもらえないでしょうかー?あっ、今吸ってるのは最後まで美味しく吸ってもらって大丈夫なのでー。」
ともりんスマイルが炸裂。おとこはしぬ。
「イヤー、ゴメンね、ホント。直ぐに済むからさ。」
そう続けて私も赤マルをくわえながら、ヤニ臭さが染みついた部屋に入っていく。私の顔を見た直後、中にいた局員たちの顔に緊張の色が浮かび始める。ともりとの会話のチャンスを伺っていた局員たちは、我先にタバコをもみ消して外へと出て行った。
「そこまでビビらんでも良かろうに...スタイルだけなら私もともりとそんなに変わんないのにな。」
苦みを含んだ紫煙を吐き出しながら、格別に甘い缶コーヒーをちびちび。あぁ、生き返る。
「それはアキラがしっかりお化粧しないからだよ。せっかくの美人さんでお料理だって上手なのにいつもほぼノーメイクで、キレーな黒髪だっていつもサイドに一纏め。もうホントもったいないよぅ。」
細身のタバコのフィルターにうっすらリップの後を残して、ともりが上目遣いでこちらをのぞき込む。続けて声のトーンを気持ち下げて、
「今回の新設部隊の件...アキラなら問題ないだろうけど。色んな所から最近不可解な情報が上がってきてる。この前アキラが担当した案件も、現場に突入したら構成員のチンピラ達が軒並み昏倒してたって話じゃない。その突入前後、ビルの壁面に立っていたっていう人影の姿も確認されてる。それにその前日、こっちの領海ギリギリまで護衛を着けたロシア特区からの貨物船が入港したって報告も昨日情報部に回ってきた。」
「部隊新設に合わせて他国からの介入があるかもってワケか...まぁ、あり得ない話じゃないね。でも、そういったゴタゴタは大好物だったりする自分はやっぱりどっかおかしいんだろうなぁ。アハハ。」
「ンもう!こっちは本気で心配してるのにぃ。笑い事じゃないんだからね!いくらアキラが現場慣れしてるからって、今回ばっかりは胡散臭過ぎるのよ。これまでのエクスチェンジャー案件はまだ対象がステージ1止まりだったから良かったケド、それ以上だったら相手が何してくるか本気でわからないんだからぁ!」
......そう、今出てきたエクスチェンジャーって連中に関する事件を総合的に極力穏便に解決するのが私達特安のお仕事だ。21世紀を間近に控えた1999年7月15日、全世界6ヶ所の海上に突如として現れた正六角形の巨大な島。
およそ埼玉と東京を合わせたくらいの質量の島が、6ヶ所同時に映画のフィルムを中抜きしたようにポンと姿を表したのだから、当時は大混乱だったらしい。
丁度、世間も世紀末ブームってヤツで盛り上がってたコトもあって、ノストラダムスを筆頭とするオカルトや世界規模の地殻変動、果ては宇宙人襲来の前兆なんてのが大真面目にテレビを賑わせた。
その間の調査の結果、放射線や大気組成、地質や磁場などに異常が見られないと判るや否や、各国の政府は文字通り降って湧いた新しい領土の主権を口角に泡を飛ばしながら主張し、それぞれの国家情勢や策謀が沈静化するまで5年。そこからの本格的な実地調査を名目とした都市建設とインフラが形になるまで更に5年。
そんな胡散臭さの塊の様な島に住居を移したがる物好きな国民が多数いたこともあって、急速にこの実験調査特区は各国家の新しい生活圏としての形を整えていった。
しっかりとした生活基盤があれば、そこには自ずと人間らしい営みも形成される。つまりセックスと出産だ。この特区で命の種を受けて産声をあげる新生児達。そんな彼らは何事もなく太陽と海に囲まれた新天地で健やかに成長していくと誰もが感じていた。
しかし2021年5月、ロシア特区にて史上初、特異な能力を持った、後にエクスチェンジャーと呼ばれることになる12歳の少女が発見保護される。保護されるまでに要した人員及び被害総数は、特区に駐屯していた軍と警察から重軽傷者が153名、及び装甲車が4台。これだけ派手に暴れておきながら死者が0というのにも理由があるのだが......
「......キラ!アキラってばぁ‼ンもう、聞いてるの?!タバコの火。」
フィルターいっぱいまで灰になってるタバコをもみ消す。
「あぁ、ゴメンゴメン。そんなにモーモーいってると冗談抜きに牛になっちゃうぞっと。」
ちちをもむ。やさしく。
「ンあッ、こんな所でやめてよぅ...火ィついちゃうからぁ....やめてェ...ねっ」
ホントにすごいなコレ。なんだコレ。
火がついちゃうらしいので名残惜しいが手を放す。
「そんなに心配してくれるのはホントにありがたいケド、言うほど悲観してないかも私。むしろかなり面白いコトになるような気がする。うん。オラワクワクしてきたってばよ!」
「いつもの直感ねー。了解。アキラのソレ大体当たるのよねぇ。なんかソレっぽい情報が入ったらこっちから連絡するから。引っ越しはアリ?ナシ?」
「まだわかんないなぁ。今日中に端末に辞令くるだろうから確認しだい連絡するわ。今日はデスクとロッカー片して帰る。引継ぎとかは明日中に済ませるから、隊の方には私から言っとくよ。」
「わかったー。じゃぁまた明日、会えたら会おうねー。」
女子高生か、お前は。とつぶやき後ろ手でバイバイ。
さて、今晩は何を食べようか...
ここまでお付き合いくださってありがとうございました。
ハイ、というワケでね。少年少女成分はどっかにファラウェイしちゃってた一話目でしたね。ホントに申し訳ございません。次回以降はしっかりティーンエイジャー(死語)出てきますので。ホントホント。
若干というかほとんど舞台背景の説明になってしまって反省しております。
もしこんな未熟な作品でも、ちょっとだけ付き合ってもらえるだけでとてもとてもありがたいです。もし感想とかダメ出しとかあったらジャンジャンコメント下さい。
それでは皆様とまたお会いできます様に。重ねてお付き合い頂きありがとうございました。