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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん
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第9話 最初の町



異世界に来てから3時間後、俺たち4人は遺跡から東へ向かって歩いていた。

俺が遺跡をじっくり1時間かけて調べた結果、かつて俺を追放した城だったことが判明。


そこから、さらに調査をしてみたが何も分からなかった。

しかも調査中に魔物が何頭か出現することもあり、俺たちは早々に遺跡を離れることにしたのだ。


遺跡のあった場所は小高い丘の上にあったようで、召喚陣のあった場所から東に大きな町のようなものが見えたため、こうしてその町へ向けて歩いているわけだ。

遺跡から荒れ果てているとはいえ、一応の街道が伸びていたのは助かった。


その街道をたどり、東へ向かう途中で俺たちは今、休憩をとっている。

現代人の早苗ちゃんたちに、徒歩で町へ向かうのはきつかったようで休憩にもかかわらずぐったりと横になっていた。



「店長、町まであとどのくらいですか?」


「たぶん1時間もかからないと思うけど、早苗ちゃんたちにはきつかったようだね」

ぐったりとする3人を見ながら、俺は苦笑いを浮かべた。


「きついなんてものじゃないです、歩くのもそうですけど。

魔物と戦うのがあんなに恐ろしいものだったなんて……」


早苗ちゃんは、今も思い出したのか少し震えている。

でもそれは仕方ないだろう、初めての戦闘が小さかったとはいえドラゴンではね……。

もちろん小さいとはいえドラゴンだ、大きさは軽トラぐらいあるし空は飛ばなかったが突進力に加えブレスを吐いてくる。


最初はパニックになっていたようだが、俺が魔法で牽制・防御をすることで何とか落ち着かせて3人そろって『魔導銃』を撃ちまくり何とか戦えていた。

最後は俺が止めを刺したが、この戦闘でレベルも上がったが度胸もついたようだ。


次の魔物からはパニックになる事なく対処していた。


「まあ、初戦の魔物がドラゴンではしょうがないよ。

それでも次の魔物との戦闘はうまくたちまわっていたと思うよ」


「あ、ありがとうございます……」


早苗ちゃんは少し照れたように俯いてお礼を言ってきた。

もうすぐ町に着くと思うし、ここでちゃんと休憩して出発しますか。




そして、何ごともなく1時間ほど休憩してから出発。

ほどなくして町の外壁が見えてきた。

しかし、次に移動するときが来るなら馬車か何か乗り物を用意した方がいいかな。


そんなことを考え反省していると、早苗ちゃんたちは町の外壁の高さに驚いていた。


「……すごいです、石の煉瓦でこんな壁を造っているなんて……」

高さ10メートルほどの外壁を下から上へと見上げて驚いている3人。

しかし、日本にもこれだけの建物はめずらしくなかったような気もするが、外壁ってことがめずらしいのかも。


「みんな、あそこから入るみたいだから行くよ?」


外壁を見上げて固まっている3人に声をかけて、門を目指して歩いて行く。

後ろから文句を言いながら3人が付いてきたのをちらりと確認して、俺たちは門の行列に並んだ。


「店長さん、町に入るのになぜ並ぶんですか?」


ほのかちゃんは武器を持ったまま俺の後ろに並び、質問をしてきた。


「ほのかちゃんもそうだけど、武器は休憩の時に渡した腰のポーチにしまっておきなさい。

町の中には危険は少ないからね。

それと、町に入るときに犯罪歴なんかを調べるために並んでいるんだよ。

町の治安のためだね」


「そうなんですね……」

ほのかちゃんや響子ちゃんに早苗ちゃんは、俺に注意されてようやく武器を腰のポーチにしまい込んだ。


「じゃあ、町に入るためにお金はどうするんですか?」

ほのかちゃんの後ろに並んでいた響子ちゃんが今度は質問してきた。


「勿論俺がみんなの分も払うから問題ないよ、俺たちはまだ身分を証明できるものを持っていないからね」


「持っていれば払う必要はないと?」


「ああ、入場税は登録したギルドの証明があれば、そのギルドが代わりに払ってくれるからね。

もっともその分、依頼報酬や会費なんかで徴収されることになるんだけど……」


俺の説明を3人とも何とも言えない顔で聞いていた。

一応納得してくれたのだろう。




「次っ、前へ!」


門のところで調査をしている兵士に呼ばれ、俺たち4人は一緒に前へ進む。

門のところにいる兵士は5人、2人が門の両側に立って行き来する人たちを見張っている。

残りの3人のうち1人は女性の兵士のようだ。


声を出している男の兵士が隊長だろう。

一人だけ腰までしかない短いマントをしているし、髭を生やしていて偉そうだ。

若い男の兵士と女の兵士の側に木の台に載った大きな丸い水晶が置いてあった。

この水晶は『賞罰判定水晶』という魔道具のひとつだ。


俺がいた頃にもあったから、ずいぶんと長い間使われているんだな……。


「では、身分証の提示をお願いします。

身分証がない場合は、こちらの水晶に1人ずつ手を置いてください」

女性の兵士が俺たちに行動を促すと同時に、若い男性兵士が腰の剣に手をかけている。

もし何か怪しい行動をした場合の対処なのだろう。


俺は気にすることなく水晶に手を置くと、女性兵士が確認して、

「はい、大丈夫です。 次の方…」

……どうやら、俺の犯罪歴は抹消されているようだ。



「……はい、全員犯罪歴はありませんでした」

女性兵が笑顔で隊長に報告する。


「よし、入場税に1人銀貨1枚をもらう。

そこの兵士から仮滞在許可書を受け取って町へ入れ。

ただし、仮滞在許可書は3日しか効果がない、それまでにどこかのギルドで身分証明を作るように」


隊長さんはすぐに次の人のもとへ行く。

俺たちは若い男性兵士から許可書を受け取り門をくぐって町へと入っていく。



おそらく位置的に町の西門にあたるこの門は、大きさは大型の馬車が二台並行ですれ違うことができる幅があり高さも見たところ、外壁の上まで届いていたから7・8メートルはあるのだろう。


門の扉は金属製で厚さが30センチほど、コマとかを付いてないみたいだから魔法で重量を軽減させて動かしていると見た。

でもこのくらいの厚さが無ければ、魔物の襲撃とかには耐えられないのだろう。

そんなことを考えながら門をくぐると、外壁の中の町が目の前に広がる。


日本の町を知っている俺でも、ワクワクしてしまうのは何故だろうか。

日本の町を初めて見た時と、似ている感覚に懐かしさもこみあげてきていた。


「さなちゃん、ここって結構大きな町なのかな?」


ほのかちゃんが早苗ちゃんの左腕に抱き着いて興奮している。

また、響子ちゃんも口角が上がり笑顔で興奮しているのが分かった。

もちろん驚きながらも早苗ちゃんも興奮しているのがまるわかりだ。


「わかんないけど、結構人多そうだね」


……とりあえず、するべきことをしてから観光といきますか。








第9話を読んでくれてありがとうございます。


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