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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん
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第8話 増えた同行者



箱庭から空間魔法のドアを通り、俺の故郷である世界に来ている。

早苗ちゃんの決意を聞いて俺は了承した。前々から魔法を使いたいという夢は聞いていたから、いい機会だと思い戦い方を教えることにしたのだが……。


「はぁ~、異世界は実在したのね……」


茶髪の髪を後ろで1つに結び、マラソンランナーが付けているようなサングラスをかけた女性が周りを見ながら感想をつぶやいている。

また、その隣の女性はまだ今の状況が信じられないのか、早苗ちゃんの左腕に自分の腕を絡ませて開いた口がふさがっていない。


「………」


肩まである髪が、風であおられ自分の顔にバシバシ当たっていることも気にならないほど驚いているのだろう。

だがとうとう早苗ちゃんに、まとめられて一つに結ばれている。


その早苗ちゃんは、俺の顔をちらちらと見ながらバツが悪そうにもじもじとしている。

たぶん、友達二人を同行させてしまったことを謝りたいのだろう。


特に人数制限もかけていなかったし、異世界に行けるなんてことを信じる人がいるとは思わなかった俺にも落ち度はあるとはいえ、一応後で注意はしておくか。


とりあえず、今は…。

「早苗ちゃん、まず、その2人を紹介してくれるかい?」


「は、はい。 私の左側にいるのが大木ほのかちゃんで、さらにほのかちゃんの左側にいるのが林田響子ちゃんです。二人とも私の友達……です…」


最後の辺りのセリフが聞き取りづらかったが、二人が早苗ちゃんの友人であることはわかった。



「えっと、響子ちゃんとほのかちゃんでいいか?

まず三人とも、異世界にようこそ。

この世界は日本と違い魔法をはじめとしたファンタジーの世界だが、魔物のような危険もすぐそばにある事を覚悟しておいてくれ。

これから早苗ちゃんにこの世界での戦い方を教えるのだが、二人も一緒に戦うのか?」


俺が早苗ちゃんたち三人に対してしゃべり始めると、響子ちゃんもほのかちゃんも真剣に俺の話に耳を傾けてくれた。

そして、俺の質問にも答えてくれる。


「さなと同じでお願いします」


「私もさなちゃん、キョウちゃんと一緒に戦います」



2人とも早苗ちゃんと同じように決心したので、さっそく三人に戦えるように武器を渡していく。

「では、三人に武器を渡します」


俺が収納空間から武器を出そうとすると、ほのかちゃんが質問してくる。


「あの店長さん、お願いがあるんですが……」


「て、店長さん? ……まあいいけど、それでお願いとは?」


「はい、写真いいですか?!」

そう言ってほのかちゃんはポケットからスマフォを取り出し、俺に見せてくる。

さっきまで止まっていた思考はどこかへいき、とことんこの異世界を楽しむ気なのだろう。

…いい笑顔だ。


「あー、写真や動画をとるのは構わないが、おそらく箱庭へ続くドアを通るときにデータとか飛んでしまうと思うぞ?」



「……あの、それってどういう……」

あれ? 三人ともこの世の終わりって顔をして驚いているな。


「実はね、この世界と箱庭の世界とは時間の流れが違うみたいなんだよ。

どれくらい違うのかはまだ調べてないから分からないけど、おそらく100年単位で違うと思う。

今は『時空魔法陣』を使用して時間の流れを調整しているから問題ないんだけど、この魔法陣ではデータ保護まではできないみたいなんだ。


だから、そのドアを通って箱庭に入った途端、スマフォなどに入っていたこちらの世界で記録したデータが消えてしまうんだ。

ただ、この世界に来るまでのデータは消えないから、そこは安心していい」


三人とも自分のスマフォを手にして、少し残念そうに見ている。

「……残念だ、異世界を移した動画なんて話題になったのに」


「ね~」


「データが飛ぶって、店長が確かめたんですか?」

早苗ちゃんが食い下がってくるが…。


「ああ、俺のスマフォでさっき確かめたから間違いないよ」


「さっきって、私たちが箱庭で着替えている時ですか?」


「そうだよ」

早苗ちゃんと箱庭経由で日本に帰りついてから、早苗ちゃんのバイト時間が終わり、さて異世界を調べようかという時にそこの2人が早苗ちゃんに電話をかけてきた。


そして、電話で話してうちの事務所で合流、その後早苗ちゃんの不用意の発言で異世界へ4人で行くことに。

で、動きやすい服を着てなかった早苗ちゃんたち三人のために、俺が持っていた服を今回だけ貸すことにして箱庭の家で着替えることに。


俺はその間に、異世界の遺跡の写真をと思い、異世界で遺跡の写真を撮って箱庭で確認するもデータが飛んでいた。何度か確認したが同じようにデータが飛ぶ。

こうして記録ができないことが分かったのだ。


……たぶん他のやり方があるんだろうけど、今はこのまま行くとしよう。



「では、三人に武器を渡しておく。防具は今は用意できないから俺が魔法で守っておく」

そういうと、俺は収納空間から早苗ちゃんたち三人に武器を渡していく。


早苗ちゃんたちは、俺から受け取った武器を眺めながら質問する。

「店長、これって『拳銃』ですか?」


「さな、これってたぶん『拳銃』じゃなくて『魔法銃』とかいうものじゃない?」


「響子ちゃんが正解だ、この世界では『魔導銃』というものだよ。

君たち三人は戦いにおいては素人だ、だから遠距離武器にしておいた」


ほのかちゃんは、何かのスイッチが入ったのか『魔導銃』でいろんな構え方を試している。

あれって『中二病』とかいう病気だったか?



「打ち方は地球の『拳銃』と何ら変わらない。ただ、弾を込める必要がないくらいだろう。

その『魔導銃』から出る弾丸は氷系の魔法で作られたものだから、属性に気を付けるように」


「わかりました!」

ほのかちゃんが生き生きと元気に返事してくれる。

早苗ちゃんと響子ちゃんが少し引いているのは仕方ないのだろう。








第8話を読んでくれてありがとうございます。

漸く次回より異世界を冒険します。

しばらくポーション屋の非日常が繰り広げられますが、ご了承ください。


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