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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん
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第6話 これからを考える



「帰って来たー!」


日本の職場にある箱庭へつながるドアが、勢いよく開くとそこから笑顔の早苗ちゃんが先ほどの言葉とともに出てきた。

自分の知らない異世界へ転移させられ、これからどうなるかと、無事帰ってこれた今、改めて考えると怖くなって震えてしまうようだ。


「……本当に、帰ってこれてよかった~」



早苗ちゃんが出てきた後から現れたのは、腕を組み考え事をしている店長こと俺。

今俺は、この箱庭へ続くドアの仕組みを思い出しながら考えていた。きっかけは向こうの世界から俺の箱庭へつなげる際に起こったトラブルだ。


最初、向こうの世界でスペアの箱庭に繋がるドアを出し開けようとすると鍵がかかっているかのように開かなかった。

このドアに鍵がかかる仕組みなんて取り付けていなかったので、ドアを丹念に調べていくと、どうやら時間速度が向こうの世界と箱庭で大きな差があったことが原因だったのだ。


「…つまり、箱庭の1時間と向こうの世界の1時間は、

同じではないということだよな……」


この時間の差に気づいた時、俺の中である仮説が成り立ったが今はドアを何とかしないと後ろで睨んでいる早苗ちゃんが怖いから対処を考えた。


それはドアに時空魔法を付与することで、それぞれの世界の時間軸で固定され出入りによってその世界の時間軸が動き時間の流れを同じに見せるというもの。


「わかりやすく言うなら、箱庭から向こうの世界に行って何年向こうの世界で過ごそうが箱庭の時間は全く進んでいない。という感じかな……」


正午に箱庭から向こうの世界に行って、夜になって向こうの世界から箱庭に戻っても箱庭は正午のままだった、というところか。

………説明が難しいな。


とにかく、向こうの世界と箱庭の時間の流れは違っていたということだな。

ちなみに、箱庭と日本の時間の流れは同じになっている。これは俺の推測に過ぎないが、どうも空間魔法で作った異空間は使用している世界の時間軸に固定されるようだ。


今回でいえば、日本から箱庭への道をつなげた時から時間の流れがこちらの世界の時間の流れに固定されたようだ。

今考えれば、日本から箱庭へ最初に入った時、箱庭内の成長した姿に驚いたが、あれは当然の結果だったんだな……。




「店長、そんな難しい顔してないで仕事済ませましょう」


早苗ちゃんが、掃除機を手にして俺の側に立っている。

「それと、うろつく前に靴は脱いでください」


俺は自分の足元を見て、部屋の中で靴を履いていたのを今になって気づいた。

早苗ちゃんを見ると、すでに靴は脱いで掃除機で掃除をしている。

俺はすぐに靴を脱ぐと、空間収納にしまいドアを閉めて隣の部屋に移動した。


すると、俺が移動したことを確認してドアのある部屋に掃除機をかけ始めた。

……これは箱庭とこの職場とをつなぐドアの箱庭側のドアの位置を考えないといけないな。

そんなことを考えながら、俺は注文品のポーションを確認していた。




部屋の外から聞こえる小学校のチャイムが、早苗ちゃんのバイトの終わり時間を知らせてくれる。

今日も学校のチャイムは休まないよな。


「それじゃあ、これで帰りますね……

ところで店長、今日召喚された異世界なんですけど、どうするんですか?」


「ん? どうするとは?」


「店長、今日ずっとあの異世界のことを考えていたでしょ?

だから、何時でも行けるようになったから調べに行くんじゃないかな~って」


……早苗ちゃんにもわかるぐらい、ずっと向こうの世界のことを考えていたのかな……。

そうだな、早苗ちゃんには教えておいたほうがいいかな。


「……早苗ちゃんにはお見通しだったか。

確かに、この後調べに行くつもりだったよ」


「店長一人でですか?」


「向こうの世界は、おそらく俺が追放される前にいた世界だから、早苗ちゃんには危険だと思ったからね。魔物も出るし……」


早苗ちゃんは少し困った顔をしながら…。

「それじゃあ、安全な場所で呼んでください」


「安全な場所って、早苗ちゃんも行ってみたいの?」


「勿論! 向こうの世界の人に会ってみたいし、どんな暮らしなのかも気になるし、そして一番気になるのが魔法! 私も使ってみたいんです魔法を!」


早苗ちゃんが興奮気味に俺に訴えてくる。

俺はその姿に少し怯んでしまった。


「ど、どんな魔法を……

早苗ちゃんは、どんな魔法を使いたいの?」


「それは勿論、空間魔法です!

便利じゃないですか、どんな大きさのものでも、たくさんの量であっても収納空間に入れるだけで両手が使えて重さも気にすることないって。

しかも、現金を入れておいても盗まれる心配なし!」


………どうやら俺の空間魔法の収納を使うところを見て、羨ましかったようだね早苗ちゃん。

そんなに興奮して魔法が使いたいアピールをしてくるとは。



「なら、早苗ちゃんがどんな魔法が使えるか確かめてみようか?」


早苗ちゃんは、目をキラキラさせて驚いている。

「そんなこと、出来るんですか?!」


「勿論、簡単にできるよ。

『ステータスオープン』と唱えるだけで、早苗ちゃんが魔法が使えるかどうかわかるはずだよ」


……あれ? だんだんと早苗ちゃんが落ち込んでいくぞ?


「……店長、それやったことあります。

でも、私のステータスは表示されませんでした……」


もしかして、ここでバイトを始めたばかりの頃かな?

確か、あの頃に俺の秘密というか箱庭や魔法のことを教えたんだっけ。

そしてすぐに誰にも言わないように契約魔法で縛ったんだっけ。


あの頃は、何かのおまじないぐらいにしか考えてない様だったのを覚えているな。

あとでバイト全体のことがしゃべれないって限定に変えたんだよな。

『ステータスオープン』を使ったのは、その頃みたいだな。



「早苗ちゃん、やったことがあるのはいつ頃の話なの?」


「えっと、バイトを始めた頃だったと……」


やっぱり……。

「なるほど、でも、今ならちゃんと発動すると思うよ。

向こうの世界に召喚されたんだし……」


「そ、そうですね!」


まあ、箱庭に何度か入っていて魔力に触れているんだからできないはずはないんだよね。

地球にも魔力はあるようだし……。


「で、では……【ステータスオープン】」








第6話を読んでくれてありがとうございます。


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