表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポーション屋の日常  作者: 光晴さん
5/47

第5話 飛ばされた先は



目を開けていられないほどの眩しさから解放され、恐る恐る目を開けると俺の目にまず飛び込んできたのが青空だった。


「……何時の間に外にっ?!」


ゆっくり上を向いていた視線を下へ向ければ、そこは石の廃墟。

しかも、周りを見渡せば崩れた壁や風化した石の柱などどこかの遺跡かと思えるような場所だった。

そして、俺の足元には先ほどまで光っていた魔法陣が、徐々に光を失い最後には光が消えた途端、魔法陣の書かれた床に亀裂が入る。


俺はその亀裂が入った魔法陣をもっとよく見ようと跪き、顔を近づける途中で俺の前で倒れている早苗ちゃんを発見する。


「! 早苗ちゃん?!」


すぐに近づき、早苗ちゃんの肩を軽く揺すると気が付いたのか反応があった。

焦点の合わない少しボーっとした感じで目を開けて、辺りを見渡しだんだんと今の状況が分かってくると震え出した。


「………て、店長?

…ここ、ここどこですか? 私たち事務所にいたはずですよね? いったい何が起きたんですか?!」


少しパニックになりながら俺にしがみ付き、俺の服を握りしめる。

俺は何とか落ち着かせようと声をかけ続けているが、早苗ちゃんは興奮が収まらないようだ。


「……こうなったら」


俺は意を決して早苗ちゃんが俺の服を握りしめている手に、そっと右手を置き精神を落ちつかせる魔法をかける。


【鎮静】


闇魔法の精神を操る魔法の1つである『鎮静』は、少しパニックになっていた早苗ちゃんを落ちつかせることに成功した。

握りしめていた早苗ちゃんの手が緩み外れる。

焦った表情は無くなり少しボーっと俺の顔を見ている。


「……パニックは、収まったようだな」


「……あれ、店長? ここはいったいどこなんですか?」

再び周りを、今度は落ち着いた様子で見渡し俺に質問してくる。


俺は再び地面にうっすらと描かれている魔法陣に、屈んでさらに顔を近づけながら早苗ちゃんの質問に答えた。


「わからない」


「店長でもわからないんですか?」


「……俺は何でも知っているわけじゃないんだよ?

分からないことだってあるよ……」



「………ところで、地面なんか見てどうしたんです?」


俺は魔法陣全体を見ながら、

「うん、それが、この地面に書かれていたものは、

魔法陣みたいなんだよ……それも召喚魔法陣」


「召喚魔法陣って、店長が追放になった時に使われたっていう?」


俺は立ち上がり、手や服に着いた砂埃を叩いて落としながら答えた。

「それもあるけど、本来は勇者を呼ぶときに使われるものだよ。

…でも、何故召喚魔法陣がこんな廃墟に?」


俺はいろんな可能性を考えていくが、今一つ纏まらない。

そこで、何故この場に召喚されたのか、そのきっかけを考えてみる。

だがきっかけはわかりきっていた。


俺は呪いの腕輪が外れた左腕を見ると、腕輪などはなくただずっと嵌っていた証としてそこだけ日に焼けてない白い肌が、まるで白い腕輪のように残っていた。


「やっぱり、召喚のきっかけは腕輪が壊れたことかな……」


「……そういえば、あの腕輪が取れて床が光ったんですよね。

…って、店長、私たち靴はいてませんよ?!」


早苗ちゃんの指摘に、俺も自分の足を見ると赤い靴下をはいた自分の足が見えるだけで靴を履いていなかった。

……どうりで、歩くとチクチク痛いわけだ。


どうやら俺も、かなり動揺していたようだ。




俺の収納空間をもしかしたらと探してみると、3足の靴が出てきたが全部俺の靴のため早苗ちゃんにはサイズが合わなかった。

そのため俺は靴の1つに『サイズ自動調整』をエンチャントすると、早苗ちゃんの足のサイズにぴったりとなった。


「すごいです店長、私の足にぴったり……」


「このエンチャント魔法は、一時しのぎだから。

日本に帰ることが出来なかったら、どこかの町で作ってもらうか」


その時早苗ちゃんは、驚きの表情とともに俺に詰め寄った。

「そうです! 私たち日本に帰れるんですか?!

このまま異世界って嫌ですよー!」


「さ、早苗ちゃん、落ち着いて。

多分、帰れるから、帰れるからね?」


俺の帰れるという発言で、少し安心したのか声のトーンが下がり確認するように俺にもう一度聞いてくる。


「……本当に、日本に帰れるんですか?」


「直接は無理だよ? この地面の魔法陣はもう使えないみたいだし。

でも、ある裏技を使えば戻れると思うんだ……」


俺は早苗ちゃんにそう言うと、さっき収納空間の中で見つけたドアを取り出す。

このドアは、俺の空間魔法で作った箱庭への入り口として用意していたもの。

事務所に置かれているドアと同じものだ。


「店長、そのドアって……」

早苗ちゃんは、俺の収納空間から出てきたドアを見て驚いている。


「そうだよ、これは早苗ちゃんも行ったことのある箱庭へ通じているドアだ。

そして、事務所に置いてあるあのドアのスペアなんだよ。

……もうわかるよね、このドアがスペアということは…」


「……箱庭には、もう一つのドアが置かれていて……そのドアの先が日本の事務所……」

早苗ちゃんは、自分の答えを確かめるように言葉にする。

そして、その表情はだんだんと笑顔になっていっている。


「帰れる……日本に、帰れるんだ……」








第5話を読んでくれてありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ