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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん


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第45話 戦慄



ハブールの町から500メートルほど離れた街道に、オーベス皇国軍の簡易テントがいくつもつくられていた。

大半の物はケガ人や重症患者を受け入れる、簡易病院のテントだったが、その中でも護衛の兵士が立っているテントでは、キリエ大将が苛立っていた。


「ハブールの外での戦闘は、あらかた片付きました。

しかし、町の中に突入してから何時間経過しましたか?」


キリエ大将が、お淑やかに隣にいるセイジ少将を睨む。

それは悪魔の睨み、キリエ大将は機嫌が悪ければ悪いほどおとなしくなっていくのだ。

その場にいるセイジ少将以外の貴族は、心の底から震え上がっていた……。


「申し訳ございません、イイジマ大将。

町中に、ディリタニア王国軍が待ち構えていたらしく手こずっております」


ドガ―…ン……

キリエ大将が机を思いっきり殴り、叩き割ってしまった。


「……キンジョウ、後のことを頼みます。

これ以上足止めをされれば、明日にはバレスト共和国の部隊が追いついてしまう」


「! 分かりました……。

ニージス、魔導通信兵に伝令! 『ハブールの町に召喚する、退避されたし』繰り返す、『ハブールの町に召喚する、退避されたし』以上だ!」


テントの端に座っていた兵士が立ちあがり、伝令を繰り返す。


「『ハブールの町に召喚する、退避されたし』伝令了解!」


そしてそのまま、テントを走って出て行った。

さらに、震えていた貴族2人もテントを出て行く。

イイジマ大将が召喚魔法を使った後のことを考えて、女性兵士を呼びに出て行ったのだ。


テントの中がセイジ少将だけになったことを確認したキリエ大将は、呪文を詠唱し始める。

先祖代々受け継いできた、勇者のスキルを唱えるために……。


その時、二人の女性兵士がそっと静かにテントの中へ入ってきた。

セイジ少将は、口に人差し指を当てて静かにするように合図する。

2人の女性兵士は、頷いてそれを了承。



【召喚 コカトリス】


召喚魔法を使ったキリエ大将は、全身の力が抜けその場に崩れ落ちる。

そこを女性兵士二人が、何とか両脇から支えることに成功し、地面に体を触れさせることはなかった。


「すぐに、隣の休息テントに運んで休ませるんだ」


「はっ、分かりました!」

「お任せください」


女性兵士に両脇から支えられながら、テントを出て行くキリエ大将。

キリエ大将が出て行ったすぐ後、先ほど出て行った貴族2人が帰ってくる。


「キンジョウ少将、イイジマ大将は何を召喚されたのですか?」


「大将は『コカトリス』を召喚したみたいだな」


貴族の2人は、なんとも言えない顔をする。


「『コカトリス』で大丈夫なのですか?」


「ふっ、君たちの懸念はよくわかる。

だが、大将が召喚したのは『ナブレクトダンジョン』の下層にいるコカトリスだ。

石化光線が得意技で、頭が3つある化け物だぞ?」


「「なっ!」」


貴族たちは戦慄すると同時に、疑問も生まれる。

そんな化け物を召喚して、後始末はどうするのかを……。


耳を澄ませば、ハブールの町からはこの世のものとは思えない雄叫びと、人々の悲鳴が聞こえている。

2人の貴族は、さらに顔が青くなっていくのだった。




▽    ▽    ▽    ▽




土魔法で、穴をあけその中に敵の兵士の亡骸を投げ入れていく。

また、まだ生きている敵の兵士はしっかり拘束してから治療を施していた。


私とキルニーも、この東門前で敵の兵士を拘束したり、土魔法で穴を開けたりと忙しくしていると、突然東門から大量の味方の兵士たちが出てきた。


中には所々ケガをしている兵士もいたが、大半はまだ戦える様子。

私たちの隊長が、訳を聞くために偉そうな騎士に尋ねていた。



「何だろうね、ジェリー。

私たちと同じように、怖くなって帰って来たのかな?」


「さぁ、でも怖くなったというのは違うと思うわよ。

ほら、兵士の中には東門から町中を睨んでいるし……」


「じゃあ、なんだろうね?」


私たちは、いったん町の中へ入っていったが、町の中に漂う緊迫した雰囲気に耐えきれなくなり東門を通って町の外へ出てきてしまった。


外で後始末をしていた隊長に見つかり、すぐに私たちに手伝うように命令。

そのまま、後始末を手伝うことに……。

でも私たちは、これで良かったんだと思う。


残念ながら、オーベス皇国の所属でもあの町中の息が詰まるかのような感じは、二度と感じたくはない。



「何と! では召喚された魔物が町中で暴れているのですか?!」


ふいに聞こえた隊長の声、気になった私たちは自然と隊長の側に近づいていく。

すると、話をしている騎士の声も聞こえるようになった。


「だから、魔導通信で、町中からの退避が命令されたのだろう」


「魔導通信は緊急性がないと使われないものですから、それを使ったということは……」


「うむ、今、町の中で暴れている召喚された魔物は……」


それを聞いていたその場の全員が、東門からハブールの町を一斉に見てしまった。

そして、聞いてしまう。


『ギャアアァァ……』








第45話を読んでくれてありがとう。

戦いをどう書くかで迷い、投稿が遅れてしまいました。


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