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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん


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第38話 開戦から



ニルベルン王国とオーベス皇国の国境で、戦争は始まった。


ディリタニア王国の王都で薬屋をしていた俺のもとにその情報がもたらされたのは、あの軍人さんがポーションを買いに来てから10日後の薬師ギルドの掲示板でだ。


その日、週に一度の契約でポーションを1ダース、薬師ギルドへ納品に訪れるといつもはない人だかりが掲示板の前にできていた。

俺も興味を湧き、掲示板に目をやると一枚の紙が張り出されている。


それが戦争のお知らせだった。


10日前に同盟を結んだばかりの王国に攻め込んだオーベス皇国。

だが、そこは薬師ギルド、張り紙の最後には『ポーションの需要が伸びる恐れあり。

至急ポーションの追加を!』と、注意書きがあった。



その後、ギルドにポーションを納品して店に帰る。

帰り道、王都はまだいつもの賑わいを感じたが、とこどころでいつもと違う賑わいが見られた。


例えば、冒険者ギルド。

ここは後方支援のための物資の輸送の護衛や、人々を安全に非難させるために街道沿いの安全確保の討伐依頼などが、高額依頼として参加者を募集していた。


例えば、魔術師ギルド。

ここは直接の魔法による後方支援や、魔石への魔力充填依頼など、ほとんどが支援依頼で緊急募集がされていた。


そして、どこのギルドでも見られたのが高額依頼の前で思いっきり悩んでいる人々だ。


戦争に参加はしたくはないが、お金はほしい。

お金をとるか命をとるか……。




「で、フィルはお金をとったのか?」


「人聞きの悪い言い方するなよ。

第一、依頼で行くのはニルベルン王国の王都だ。

戦争に参加するわけでも、巻き込まれるわけでもないって!」


俺が店に帰ってくれば、入り口でフィルが俺の帰りを待っていた。

ほぼ毎日、店に来ているがそんなに暇なのか冒険者よ。


「フィルのパーティーで護衛をするんだろ?

このディリタニアの王都から、ニルベルンの王都まで素材や支援物資を運ぶ商隊の」


「護衛は7つのパーティーでするんだよ、荷馬車が20台もあるんだ。

俺たちだけで護衛なんてできねぇよ」


「7つのパーティーとは、大所帯だな……」


「どうやら、いくつかの商人が合同で出した依頼らしくてな。

目的地が同じなら、いっぺんに運んでしまおうとかでこんな大所帯になったんだと」



荷馬車20台に、7つのパーティーの冒険者。

……これは盗賊も襲いにくいだろうな。

だが、そうなると問題なのは…。


「問題は、魔物か……」


「そ、だから魔物対策として支援パーティーが専属で就いてくるんだよ」


「そうなると、ますます大所帯になるんだな……」


「でもまあ、他のパーティーには女性だけのパーティーも参加しているから美味しい依頼なのは確かだな………ムフッ」


「……まあ、頑張れ」


フィルの奴、命やお金よりも女をとりやがった……。


そして、フィルたちが護衛依頼で王都を旅立って5日後。

ニルベルン王国国境が、オーベス皇国の軍隊によって突破されたことを知らせる張り紙が、各ギルドの掲示板に張り出された。




▽    ▽    ▽    ▽




元ニルベルン王国の国境砦に中にある一室に、セイジ少将と2人の指揮官をしている貴族二名が集まっていた。

無論、悪だくみをしているわけではなく書類整理に追われていたのだ。


戦争は金がかかる、それはこの世界でも同じで先の国境での戦いでだいぶ物資が不足していた。

そのため、本国に物資の輸送をお願いするための書類や現場の兵士たちからの陳情書などを整理していたのだ。



「キンジョウ少将、イイジマ大将はまだ眠っておられるのですか?」


「残念だが、あのスキルを使われたのだ。

あと2日は眠ることになる。

その間は進軍はないが、今のうちに後方支援を充実させておく必要がある」


先の国境戦で、粘るニルベルン王国軍を撤退させるためイイジマ大将はスキルを使用した。

『魔物召喚術』

祖先の勇者から受け継ぎ続けたスキルだ。


その効力は、自分が見たことある魔物を召喚することができるというものだが、弱点もある。

それは呼び出した魔物を使役することができないこと。

そして、イイジマ大将の魔力のほとんどを使ってしまい2、3日眠ってしまうこと。


今回は、敵軍の後方に炎の赤き龍『レッドドラゴン』を一体召喚して、大混乱を起こした。


敵軍の後方で暴れ続けるレッドドラゴンに、ニルベルン軍は徐々に後退していき、最後にはレッドドラゴンを倒すことに成功したものの、犠牲が出過ぎたため国境から1日離れたところにある『バージの町』へ後退した。



ニルベルン軍の後退で、さらに進軍をと貴族の隊長たちは進言してきたが、こちらの兵の消耗も激しくこの国境の砦で休息、部隊の再編成などをおこないつつ本国の支援を待っている状態だ。


「しかし、思った以上に我が軍の消耗が激しいですな……」


「本国には援軍を要請してあるから、明後日には到着するはずだ」


「さすがキンジョウ少将、先読みが鋭いですな」


「ただの年寄りの経験だよ。

それより、バレスト共和国の援軍は遅れているようだな……」


「一緒に来ているバレスト共和国の方の話では、明日合流するようです。

お待たせして申し訳ありませんと、謝られていました」


合流は明日か。

どんな者たちを連れてきたのか気になるが、今は大将が目覚めるときまでに支援を充実させておく必要がある……。


ニルベルン王国とディリタニア王国の同盟は、我らにとってどうなるか……。








第38話を読んでくれてありがとう。


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