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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん


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第35話 パーティーでの発表



次の日、今日も王都の薬屋を臨時休業にして俺は箱庭にある家の中の製薬室にこもっていた。

ここは主にポーションを製作する部屋だ。

日本で売っているポーションから、王都の薬屋で売っているポーションなどを製作している。


そして、この箱庭の家の側には薬草畑が広範囲にわたり存在する。

この畑で栽培している薬草は『蒼薬草』といい、全体的に青いのが特徴の薬草だ。


そして、冒険者ギルドなどで初心者冒険者が納品する薬草と違い、薬草の中の最高品質で主にダンジョンの下層の森の中で生息が分かっているほど、採取が難しい薬草でもある。


そんな薬草を俺はこの箱庭の畑で栽培することに成功し、この薬草を使って様々なポーションを作っているのだ。



朝からつくり始めたポーションはお昼過ぎにようやく2000本を完成させた。

そして、さらに夕方ごろに箱詰めが終わり収納空間に納めると、ドッと一日の疲れが襲ってきた。


「……明日納品なのに、今日中に終わらせてしまうとは思わなかったな」


やっぱり俺はこうしてポーションを作りながらのんびりしている方がいいみたいだ。

何も考えることなくポーションを作れる、そんなときが一番幸せだな。


そして俺はそのまま、箱庭の家の寝室の入りベッドに潜り込むと寝てしまった。

その日は、王都の見せ城で大きなパーティーが開かれていたらしいが……。




▽    ▽    ▽    ▽



ディリタニア王国王都の中心部にそびえる大きなお城で、その日、王国中の貴族やその関係者を集めたパーティーが開かれた。

参加できなかった貴族もいるが、そういう人たちは身内である婦人や次期当主などを参加させていた。


ブリニカ・ディクリア辺境伯は次期当主と決めている長女のアニーをお供に、このパーティーに参加していた。


身内のほとんどが次期当主は嫡男のケリーであると勘違いしたことから、持ち上げすぎてわがままになり大失態をして今謹慎させられていた。


「お父様、このパーティーで何か発表があるみたいですね?」


「おそらくニルベルン王国のことだろう。

俺の所にも、いろいろと情報が入ってきているよ」


「さすがお父様、辺境の龍との異名は伊達ではありませんね?」



『辺境の龍』

かつて、ブリニカはドラゴン討伐を成し遂げていた。

その功績を先代のディリタニア王に買われ、今の辺境伯の地位を手に入れたのだ。

そんな話から、辺境に住む龍殺し、そう呼ばれるようになり今では辺境の龍と言われるようになった。



「そんな異名など何の役にも立たん。

それよりも、このパーティーで第六王子のユリアス様が婚約するそうだぞ?

アニーはこのパーティーの中に気に入ったやつはいないのか?」


「お父様、逆に聞きますが、私が気に入りそうな男がこのパーティーにいますか?」


ブリニカは、周りの参加者たちを見渡して…。

「………いないな、どいつもこいつも気に入らん奴らばかりだ」


ため息を吐きながら、父親を見るアニー。

自分の父親の貴族嫌いにも困ったものだと、呆れるのだった。

そこに、兵士の1人の声が聞こえた。


『ディリタニア陛下、御入場~』


すると、パーティーに参加していた貴族の全員が少し頭を下げて王様に敬意を示す。

その光景を見ながら、王様は上段の王の椅子に着席した。


「皆、楽にしてくれ。

今日、私がこのパーティーを開いたのには訳がある。

まずは、今日この日をもって隣国ニルベルン王国と同盟が締結された」


その王の言葉が聞こえると、会場中から拍手が起こった。

また、会場のあちらこちらで上位貴族によるお祝いの言葉も聞こえていた。


拍手は1分ほど鳴ると、自然に止んでいく。



「次に、その同盟の証として我が子第六王子のユリウスと、ニルベルン王国第三王女のアーネスとの婚約を発表する。

この二人の婚約を祝って、グラスを手にしてくれ」


王様がグラスを手にして立ち上がると、パーティーに参加していた人たちもグラスを手に取り立ち上がる。

中には、慌ててテーブルの上のグラスを手に持ち立ち上がる下級貴族が、周りの貴族たちに呆れられている。

そして…。


「乾杯!」

『『『乾杯!!!』』』


こうしてパーティーは進んでいく……。




パーティーが始まり、楽団がいろいろと音楽を奏でているとダンスをする者たちが出てくるころ、ディリタニア王は自分の席を離れ会場の有力貴族たちに挨拶をしていく中、ブリニカ辺境伯を見つけ声をかける。


「ブリニカ辺境伯、急な呼び出しですまんな」


「これは陛下、私どものような辺境伯に声をかけていただき……」


「クフフ、ブリニカ、お前にそんな言葉使いは似合わんぞ?」


ディリタニア王のその言葉に、ブリニカ辺境伯は口の端を釣り上げて笑うと…。


「フン、お前もリブジーナス学園の時と変わらんではないか。

即断即決で決めやがって、それで失敗するとこっちに尻拭いをさせるんだろうが」


「王は即断即決しなければいけないのだよ」


王と辺境伯は睨みあうと、フッとお互いに力を抜き固い握手とともに笑い合う。


「ワハハハ、変わらんなブリニカは」

「クックッ、それはこちらのセリフだ」


この二人を側で見ていた王の側近たちやアニーは、このやり取りにハラハラしながら見ていて、ようやく2人が地位を超えた親友同士だと分かり安堵する。


人騒がせな二人である……。










第35話を読んでくれてありがとう。


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