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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん


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第33話 時間軸の同調



「隊長、今日は申し訳ありませんでした」


ディタニア王国側が用意してくれた高級宿で、ニルベルン王国の王女たちが休んでいる時、その高級宿の部屋の一室で旅の護衛として同行していた兵士の1人が、隊長の部屋に謝りに来ていた。


この兵士は、王女たちが乗る馬車の周りを護衛する兵士の1人で、馬に乗り馬車と並走して走っている。

だが、この王都に入ってから見せ城までの道で野次馬の人々の中から急に飛び出して来た子供をよけるため馬を急に止めたため落馬してケガを負ってしまったのだ。


そして、馬車はいったん止まり、この兵士のケガを治すため近くにあった薬屋のレオンの店に来たのが、兵士が謝っている警護担当の隊長の男であった。


「気にするなグリット、急に子供が出てくれば俺でもああなっていただろう。

だから、責任を感じる必要はないぞ?」


「しかし、町中で馬車を止めてしまったのは……」


「子供も無事だったし、姫様たちも無事だった。

お后様からも子供にも、お前にも罪はないと仰られていただろう?」


「ですが……」


「……もしどうしても気にしてしまうなら、本国に帰ってからのことを考えろ。

同盟が締結されたとしても、すぐのすぐオーベス皇国が引くとは限らない、ディリタニアの国軍が派遣されるまでの時間稼ぎは必要だ。


その時、失敗を挽回しようとすればいいだろう」


「……」


兵士は黙ったまま頭を下げて部屋を出て行った。

隊長は思う、今回同行した兵士たち全員が今のような張り詰めた兵士ばかりだ。

国を思ってくれるのはいいが、自分を大事にしなければ戦場では生きていけない。


『魔導銃』の出現から戦場の形も変わったし、民間人が巻き込まれるようになったからな……。


「……考えても始まらないか。

それにしても、あのポーションはよく効いたな。

グリットは落馬で、腰から下が動かなくなっていたのに、あのポーションを飲ませたら1時間ほどで良くなった。


今では落馬する前の状態に戻っている……。

本国に帰るとき、まとめ買いとかできないかな?」




▽    ▽    ▽    ▽




次の日の王都、ポーション屋レオンの店のドアにはお知らせ板が出ていた。


『本日、材料収集のためお休みです』


そこへいつものフィルが訪ねてきて、お知らせ版を見て困った顔をしていた。


「休みか~、材料収集ってどこに行ったんだろうな……。

隣の商会で薬の材料とか売っているのに……」


そうブツブツと呟くと、そのまま帰っていった。

実際は、レオンは日本へ買い物と早苗ちゃんの友達の紹介などで行っていたのだ。

そして、もう一つ重要なことをするためでもある。




今、日本にある事務所で早苗ちゃんたち三人に、初めてこの事務所に来た二人の女子高生を紹介されていた。


「店長、こっちが響子ちゃんの妹で高1の菜々美ちゃん。

それと、こっちが菜々美ちゃんの友達の同じく高1の大隅 桜ちゃんです。

異世界のことは私たちが説明したから、覚悟は大丈夫だよ」


……たぶんこれは、響子ちゃんが菜々美ちゃんに異世界のことがばれたってとこかな?

何とかごまかそうとして余計に関心をひいちゃって、もう仲間に引き込むしかないって仲間にしちゃったってところだろう。


菜々美ちゃんと桜ちゃんの表情を見ればその辺はよくわかる。

2人ともワクワクしている顔だもの……。



「えっと、異世界へ行けるという話は早苗ちゃんたちから聞いたと思うけど、誰にも話さないようにお願いします。

それと、向こうでレベル上げとか行うわけですが今の自分の力とか瞬発力とか運とが上がるわけではありません」


「え、そうなんですか?」


何故、響子ちゃんたちも驚いているのか分からないが……。

それに、レベルが上がっても力とか握力とか変わらなかったでしょ?


異世界のレベル上げで変動するのは、生命力と魔力だけだ。

実は防御力や魔法防御、魔法耐性などは装備やアクセサリーでどこまでも対応できるし、素早さや運の良さなども同じで、特に素早さは装備だけではなく魔法でも上げることができる。


だからかもしれないが、ステータスにも生命力と魔力しか表示されない。


「生命力と魔力がレベル上げで上がりますが、その分スキルになれてきて強くなったように思えるんですよ。

スキルは魔力が上がると使いやすくなりますからね」


「「「へぇ~」」」


みんな感心しているようだ。

まあ、難しいことはその都度説明するとして今日は重要なことを知らせておかないとな。


「まあその辺はレベルを上げて体験してください。

後、重要なお知らせをしておきます。

このたび、箱庭から異世界へのドアの時間同調が成功しました。


これにより、日本や箱庭での一日が異世界でも一日となります。

時間配分に気を付けて、異世界へ行くように!」


……あれ? みんなぽか~んとしているけど、大切なことなんだよ?


「……店長、それって向こうでの一日過ごすとこっちでも一日過ごしたことになるってことなの?」


「その通りです、早苗ちゃん」


「……なんて言うか、微妙?」

「重要なことなのかな?」

「響姉、今まではどうだったの?」


「今までは、こっちでの一日が向こうでの二日になってましたわ」

「とりあえず、行ってみようよ」


みんな好き勝手感想を言ってくれるけど、これってすごく重要なことなんだからね?

日本で一年過ごすと、異世界では二年経過している。

季節とか時間とか、ずれて計算が大変だったんだから。


それをこっちの時間と同調させることが、どんなに難しかったか……。

一応でも労ってほしいよ……。








第33話を読んでくれてありがとう。


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