第29話 店の看板
次の日、ディリタニア王国の王都にある店に戻ると、さっそく薬師ギルドへポーションを納品しに出向く。
それにしても、王都で2日過ごすと日本では1日時間が過ぎている。
今の俺の魔法陣スキルでは、これが精一杯だった。
そのために、昨日は早苗ちゃんに怒られたんだけど何か考えた方がいいかな。
腕時計に、王都の時間と日本の時間を表示させることができないか考えてみよう。
薬師ギルドに到着し、中に入るとフィルが1人でいた。
「やっと見つけた、遅いぞレオン」
どうやら俺を探して薬師ギルドにいたようだ。
俺を見つけるなり、声をかけて近づいてくる。
「フィル? どうしてここにいるんだ?」
「どうしてって、レオンにお礼が言いたくてな。
店に行ったんだけどまだ開店してないようだし、ギルドを訪ねても教えてくれないからな。
だから、毎日来て待っていたんだよ」
俺にお礼を言うだけで、ギルドで待っているとは……。
「いつから、ギルドに来ていたんだ?」
「昨日からだ」
「そ、そうか、待たせて悪かったな……」
「改めて、ありがとう、レオン。
お前のおかげで、俺の仲間の石化が治って、今はもう一緒に冒険者してるよ。
あの時怒鳴ったりしたけど、お前に任せて正解だった!
これからも、レオンの店を贔屓にするからよろしくな!」
そういうと、フィルは俺の手を取り両手で握ってきた。
……いい笑顔だ。
「それじゃな!」
言うこと言って、嬉しそうにギルドを出て行った。
ある意味、自分勝手な奴だけど、仲間思いでもあるのかな?
フィルを見送り、そもそも何のためにギルドに来たのかを思い出した俺は、すぐに納品窓口で受付嬢に声をかけた。
「すいません、レオンですがポーションの納品に来ました」
受付嬢は、俺の顔を見るなり少し不機嫌そうに答える。
「レオンさん、先週分の納品がなされていませんが?」
「申し訳ありません、技術向上のための努力に夢中になり忘れていました」
俺が謝罪と言い訳をして頭を下げると、受付嬢はため息の後…。
「……今後は、遅れることないように毎週の納品をお願いしますよ?」
「はい、それはもう!」
どうやら、お咎めなしのようだ。
いろいろと薬師ギルドには便宜を図ってもらっているから、約束だけは守らないとな。
「では、今週分の納品するポーションとギルドカードを提示してください」
俺はギルドカードと、ポーションを2ダース、トレイに載せ受付嬢に出した。
「このポーションは?」
「先週分と合わせた『回復ポーション』です」
受付嬢は淡々とポーションの数を数えて、ギルドカードに定期依頼完了の作業をしていく。
冷蔵後くらいの箱に、ギルドカードを入れてカード口側にあるいくつかのボタンを押すと機械音のような音が数回聞こえてカードが再び出てくる。
それを俺に返してくれると…。
「では、来週からは納品日を守ってくださいね?」
と、少し温厚な感じで注意してきた。
「はい、分かりました」
俺はそう返事をすると、薬師ギルドを後にした。
薬師ギルドから自分の店に帰ってくると、すぐに内装を始める。
家具などの注文していたものは、すでに店や家の中に入れてはあるが配置はバラバラで適当に入れてあるだけだ。
この家具類をいったん空間収納で取り込み、配置しなおすのだ。
「さて、始めますか!」
まずは店の内装からだが、これは比較的簡単に終わる。
カウンターを設置すると、ポーションなどを並べる棚はお客様側ではなく店員側に置く。
こうすることで、盗まれることが無くなる。
また、見本やポーションの種類を書いたメニューをカウンターの上に置き、それを見て注文してもらう。
ファーストフード方式だな。
症状に合わせてポーションを薦められるから、間違いがない。
後は家に置く家具だが、一階に置くものは、テーブルと椅子が4脚。
ソファに……それぐらいか。
二階の部屋には、ベッドと服を仕舞えるタンスぐらいだ。
あと必要なものは、日本に行って購入すればとりあえず人が生活できる環境になる。
……だけど、俺は箱庭の家を使うしポーションの作成も同じ箱庭の家を使う。
となると、早苗ちゃんたちが長期休暇などで遊びに来る時しかこの家を使う人がいないってことになるな。
……これは少し考えておくかな。
もしかしたら、弟子をとるかもしれないが、今は必要ないだろう。
ギルド登録をしてから何年もたってないし……。
二時間ほどで家具などの配置を終えて、店に看板を出す。
『ポーション屋 レオン』
これが、今日からこの店の看板だ。
第29話を読んでくれてありがとう。




