表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポーション屋の日常  作者: 光晴さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/47

第27話 ポーションの材料



冒険者のフィルたちと一緒に俺の店に帰ってくると、俺は鍵を開けて店の中へ招き入れた。


「……何もないな」


フィルたち三人は、店の中を見渡し怪訝な表情をしている。

「まだ、開店準備中ですからね。

中の家具とかも一週間後に届きますから。

それよりも、石化治療用ポーションは薬師ギルドでも用意できなくて当たり前ですよ」


「そうなのか?!

何とかならないか? 仲間を一刻も早く治してやりたいんだ……」


フィルさんは、拳を握りしめて悔しがっている。

また、後ろの2人も同じ表情だ。

何とかして助けてあげたいんだけど、石化治療用ポーションは材料が問題なんだよな……。


「フィルさん、この石化治療用ポーションの問題点は材料なんです」


「材料? 作るのに必要な材料なら、俺たちが何とか集めてくるぞ?!」


「……それが、エキドナの血液がポーション瓶一本分必要なんです」


俺の言葉を聞いて、フィルさんたち三人は声を出すこともできずに驚いている。


エキドナ。

半人半蛇の魔物、ラミアの上位種でありダンジョンの下層にしか出現しないといわれている。

また、地上での目撃例がない事もこのことを裏付けていた。


さらにエキドナは石化の効果のある爪を持っており、その爪で攻撃されると石化してしまうそうだ。


「……無理だ、今の俺たちではダンジョンの下層に行くことも、エキドナを倒すことも、まして血を採ってくることもできない……」


フィルは頭を抱えてしまった。

それを支えるコニーさん、でも彼女もどうしていいか分からないようだ。

そこに、ジニアが俺に訴えてくる。


「あの、エキドナの血以外の者はすぐにそろうの?」


「ああ、それは薬師ギルドでそろうと思うけど」


ジニアは一度頷くと、今度はフィルとコニーに訴える。


「フィル、コニー、諦めちゃダメ!

これから冒険者ギルドへ行って、上位クラスの冒険者にお願いしに行こう!」


「……ジニア…」

「ジニーちゃん……」


「上位クラスの冒険者がダメでも、ここは王都。

ギルドマスターに訴え出れば、何とかなるかもしれない!」


ジニアの絶対に諦めない、諦めたくない思いは伝わってくるな。

石化治療が必要な人は、よほど大事な人なんだろうな。



「……わかったよジニア、上位冒険者にかたっぱしからあたってみよう。

もしかしたら、持っている人がいるかもしれない」


「私は、商会をあたってみるわ。

もしかしたら、取り扱っているかもしれないし!」


「わたしは、資金を用意する……」


ジニアが資金を用意するといって、フィルさんとコニーさんが困惑している……。

まあ、十歳ぐらいの女の子が用意できるお金じゃないと思うけど……。


「ジニア、もしかして……」


「うん、とうさまに会いに行ってくる!」


ジニアのお父さんってどんな人なのかな?

そんなことを俺がのんきに考えている時、コニーさんがジニアを抱きしめていた。


「ジニーちゃん……」

「コニー………」

「ゴメンねジニーちゃん。 ……でも、必ず帰ってきて」


ジニアは無言で頷くだけだった。

……なんだろう、この超訳ありな雰囲気は。


コニーさんが、ジニアを放すとそのまま店を出ていった。

コニーさんは、ジニアが出ていったドアをずっと見ている。


「……コニー、俺たちも行こう」

「ええ……」


フィルさんとコニーさんも、二人そろって店を後にした。

あとに残された俺は、何が何だか分からなかったがあの三人にしか分からない理由があるのだろうと無理やり自分を納得させる。


「……でも、石化治療用ポーションは俺が作らないといけないのかな?」




あれからお昼が過ぎ、周りの色が変わりだす夕方になってもフィルさんたちは来なかった。

辺りが暗くなり、俺が魔法で明かりを灯すと一階だけが明るくなった。


フィルさんたち、今日は来ないかもしれないなと、そう思い俺は店を閉めに行くと、そこに扉を開けてフィルさんたちが入ってきた。


ただ、フィルさんたちの表情は暗い。

上位冒険者は持っていなかったのか?

それとも、商会は取り扱っていなかったのか?

それとも、資金繰りがうまくいかなかったのか?


「……えっと、どうしたんですか?」


すると、フィルさんたち三人は俺にかみついてきた。


「ふざけんなレオン! 上位の冒険者の人たちに思いっきり笑われたぞ!!」

「私も、商会の人たちに笑われたわよ!」

「わたしも、とうさまに笑われた……」


ど、どういうことだ? 話が見えないんだが……。

俺がそう困惑していると、フィルとコニーが訳を話し始める。


「エキドナの血が必要って、嘘じゃないか!

大昔なら必要かもしれないが、今はラミアの血でできるって言われたぞ?!」


「商会の人もそう言って笑ってたわ、からかわれたんじゃないかって。

石化治療用ポーションの難しい所は、材料を集めることじゃなくて材料を混ぜ合わせてポーションにすることが難しいって教えてくれたわよ!」


「それじゃあ、レオンが作れなくて材料の所為にしたってことなのか?!」


まずい、フィルが襲い掛かってきそうだ。


「わたしも、とうさまに『お前は儂を笑わせるために尋ねてきたのか?』って言われた……」


そういうとジニアは、さっきまでの悲しい顔から笑顔になり…。

「……でも、このことでとうさまと和解できた」



俺を殴ろうとしていたフィルも、俺を睨んでいたコニーもジニアのセリフに力が抜けたみたいにその場に座り込んでしまった。








第27話を読んでくれてありがとう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ