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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん


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第21話 盗賊退治



王都への乗合馬車に乗り込み今日で2日目、外はあいにくの雨だが屋根の付いた馬車には関係なかった。

街道はある程度整備されており、乗合馬車はスピードを出して進んでいる。


「乗合馬車でも、結構スピードを出すんですね」


「それはそうだよ、歩いている人より遅かったら意味がないだろ?」

「それに遅いと、盗賊とか魔物とかにも狙われやすくなるからな~」


俺の話し相手になってくれているのは、この二日間で仲良くなった乗客の2人。


まずは、王都近くにある『ヒロール村』まで乗っていくジェニファーさんという40代のおばさんだ。

世話好きで話し好き、典型的なおばさんだな。

今回の旅も、ヒロール村にいる妹が娘の結婚式の準備を手伝ってほしいとヘルプを手紙で出してきたことに始まる。


しょうがない妹だよ~と、嬉しそうに話してくれたので会いに行けるのが楽しみなんだろう。


もう1人は、王都に行って強くなろうと目標を持っている冒険者のグリムさん。

同じ村出身の仲間と辺境のあの町で頑張っていたが、この5年でバラバラに。

中には、結婚を機に転職していった仲間もいてグリムさんも将来を考えたんだそうだ。


そして、出した結論が強くなるために王都へ行くってことだった。

強くなってどうするかは分からないが、王都で過ごしていれば何かが変わるのだろうと少し甘い考えも持っていた。


そんな二人の他には、二人の姉弟を連れた女性や少し前に寄った町からこの馬車に乗り込んだ男性二人。

この二人、どうやら冒険者のようだ。

ただ、見た目は冒険者に見えなくてギルド職員のような格好している。



ずっと馬車に揺られながら本を読んだり、雑談をしたりして時間をつぶしていると急に荷物の向こうに乗っている人の誰かが、大きな音をたてて鐘を鳴らした。


「おおっと!」

「キャッ!」

「わっ!!」


『盗賊だー!! 盗賊が襲ってきたぞー!!』


その声に、冒険者のグリムさんやあと2人の冒険者の人が話し合っている。

「こんな雨の中での襲撃か」

「天候を選ばないのは、よほどの自信があるのだろう?」


「あんたら、行けるかい?」

グリムさんが声をかけると、二人の冒険者は…。


「行けるぞ!」

「しかし、俺たちが戦うかは御者の判断だろう?」

そう確認すると、三人で頷きあっていた。


流石何年も冒険者をしていないな、こういう時どう行動するのかが分かっているようだ。

ほかの乗客は、荷物の側に固まって怯えているようだし……。

でも、それが普通の人の反応なんだろう。



馬車の後ろの階段から、御者さんが上がってきてすぐに叫ぶ。

「馬車の車輪がぬかるみにとられました、冒険者の皆さん、盗賊退治をお願いします!!」


「「「任せろ!」」」

そう言って御者と一緒に馬車を出ていく。

少しして、盗賊と冒険者の戦いの音や罵声、中には悲鳴なんかが聞こえてきた。


俺はその様子が気になり、階段を降りて馬車の外に出ると雨が降っている中、盗賊たちと懸命に戦う冒険者の人たちが確認できた。

その中の一人、グリムさんの姿も確認する。


「……どうやら、こちら側が劣勢のようだな」


泥濘に足をとられる中、懸命に戦う冒険者の人たち。

戦えている冒険者は4人、足を抱えて馬車の側にいたり倒れたまま動けなかったりと傷ついた冒険者もいるようだ。


相手の盗賊も血まみれで動けないものや、怪我でうずくまっているものを除いても6人ほど残っている。


敵の盗賊を確認すると、俺はすぐに水で防壁を造り馬車を囲んだ。


【水壁】


この水壁は、シャボン玉のような膜を水で造り雨を防ぐというものだ。


「こ、これは……」

「雨が、止んだ?」


「おい! そこの魔法使いを先にやれ!」

「まかせろ!」


俺の存在に気づいた盗賊が、俺を襲うように命令するが、襲いかかってきた盗賊はすぐに動かなくなる。


【雷撃】


「ギャピ!!」


襲いかかってきた盗賊に、電撃魔法の威力を倍増した雷撃魔法を撃ちこんでやる。

雷撃を打ち込まれた盗賊は、叫び声と同時に背筋を伸ばしその場にあおむけで倒れる。

そして、盗賊の肌が少し黒くなり湯気をあげていた。


「……肉の焼ける臭い………当分肉は食えないかも……」



「! おい、冒険者は後にして、あの魔法使いを先に始末しろ!!」

「「おお!」」


仲間の最後に衝撃を受けた盗賊は、すぐに冒険者を相手にしていない残りの仲間に俺を始末するよう命じたようだ。

向かってくる盗賊に対して、俺は雷撃をやめて氷の槍で突きさすことにした。


【氷槍】


魔法を唱えると、向かってくる盗賊の足元から氷でできた槍が盗賊たちの胸へめがけて突き刺さった。


「グハッ」

「「ガッ」」


向かってきた三人の盗賊は氷の槍にくし刺しになり絶命した。

その光景に恐ろしくなった盗賊たちは、すぐに逃げようと走り出すが戦っていた冒険者たちに止めを刺され、結果全滅した。


「……終わったか」


ホッとする俺のもとにグリムが駆け寄ってきた。

グリムもまた血だらけで、ほとんどが盗賊の返り血だが所々自分の血も混ざっている。


「レオン、助かった。

それと治癒魔法は使えないか? 深い傷を負っている奴がいるんだよ」


治癒魔法は使えるが、俺は一瞬考えて空間倉庫から上級ポーションを取り出した。

「このポーションを飲ませれば治るはずだ。

それと、グリムさんたちも飲んでおいた方がいいぞ?」


「そういやあ、レオンはポーションが作れるんだったな」

俺から6本のポーションを受け取り、傷ついた冒険者のもとに急いでいく。


俺は、冒険者たちが治療をしている間に、土魔法で穴をあけその中に盗賊の亡骸をまとめて入れて埋めておいた。

そして、アンデッドで蘇ることのないように聖水を埋めた土の上に振りまいておく。


この聖水、教会でもらったものではなく俺が作ったものだ。

『聖魔法』が使える俺にとっては、聖水など朝飯前なのだ。









第21話を読んでくれてありがとう。


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