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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん


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第20話 乗合馬車で



「王都へ行くの?」


次の日の夕方、日本から帰って来た早苗ちゃんたちに王都へ行くことになった経緯を話したら驚かれた。

早苗ちゃんたちは、冒険者登録したこの町である程度戦えるようになってから他の町へ行ってみたかったようだ。


「私たちは強くないですからね、響ちゃんもほのちゃんもレベル10代ですし」

「ギルドランクも低いしね~」

「そう考えて、いろいろ用意もしたのに……」


早苗ちゃんたちも、異世界生活を考えていたのか。それは悪いことをしたな……。

でも、王都に行けば店を用意してもらえるからな。

そうなれば、早苗ちゃんたちの宿代を払わなくていいし空間魔法のドアをいつでも使えて便利だって説明したら、あっさり王都行きを了承してくれた。


「それで王都までの道中なんだが……」


「なになに店長さん」

「私たちも同行していいんですよね?」

「店長?」


王都までの同行か……。

薬師ギルドの受付嬢の話だと王都まで馬車で6日かかる距離にあるそうだ。

その間、夜は野営だったりどこかの町か村の宿だったりするが、早苗ちゃんたちにそれは無理だろうと思う。


それに食事とかの問題もそうだが、一番の問題は風呂だろう。

俺も日本にこの世界から飛ばされて30年になるが、風呂の魅力にとりつかれた一人だ。

1日1回は風呂に入って体を癒したい。


「ダメですか? 店長……」


いつの間にか、黙ってしまった俺に不安を抱いたのだろう。

まるで小動物のような瞳で、俺を見ている。

しかし、彼女たちを同行させるわけにはいかないんだよね。


「残念だけど、同行させるわけにはいかないよ」


「どうしてですか?」

「学校があるでしょ、君たち」

「え?」


「こっちの世界と日本とはあの空間魔法のドアに施した『時空魔法』のおかげで、だいぶ時差が無くなっているけどそれでも1日から2日程度の時差が存在する。

こっちで6日過ごすと、日本では少なくとも2・3日はいなくなることになる。


連休や夏休みなどの大型連休ならまだしも、平日を休むわけにはいかないでしょ?

だから、ダメです」


早苗ちゃんたちは、何も言えずに黙ってしまった。

それに、あの空間魔法のドアを少しいじってこっちの世界で6日過ごしても、日本は数分しかたっていないなんて設定はできないぞ?


今の設定が俺の限界なんだから……。

いろいろいじって時差がさらに広がったり、縮んだりしても劣化が激しくなりあのドアが爆発なんてシャレにならないよ。


だから、王都までは俺一人で行動する。

そして、王都に店を構えてから早苗ちゃんたちを呼び寄せた方が後々いい気がするんだよ。


そんな風に怖い話も混ぜながら説得してようやく納得してくれた。

その代わり、王都でのレベル上げとかギルドの依頼とか手伝うと約束させられたがな。



それからの行動は早かった。

まず、宿を出ると誰もいないであろう路地裏に入り早苗ちゃんたちを日本へ帰す。

それから俺は、1人で宿に泊まり次の日、王都へ旅立った。


王都行きの乗合馬車があったのでそれに乗り込むことに。

出発時間まで時間があったので、薬師ギルドで出立のあいさつをするとギルドマスターの紹介状を渡され…。


「これを王都の薬師ギルドにいるギルドマスターに渡してください。店を出す話の手続きとかをやってくれるはずです。

レオンさん、王都で頑張ってください!」


そう言われて送り出されてしまった。

どうやら、本当に薬師ギルドは困窮しているようだ。

だが、そうなると俺に弟子入りの話とか想像できて怖いんだよな……。



ともあれ、乗合馬車の待合場所に行くと何人かお客が集まっていた。

そこに俺も混ざり、それから1時間ほどで、乗客も集まり王都へ出発するのだろう。


『終点王都行き、出発いたします!

終点王都行き、出発いたします!』


その大声に合わせて、集まっていた乗客たちが大型馬車に乗り込んでいく。

馬4頭が引く車輪が8つもついた大型の馬車だ。

馬車の中央に荷物置き場が配置され、前方と後方に乗客が乗り込む。


乗客は前後ろ好きな方に乗り込むことが出て、後方の乗り込む階段近くには紐を引くと鳴る鐘がついていた。

何のためについているのか不思議に思っていると、御者のおじさんがきて乗り込んだ人数確認と前金を徴収し、トイレに行きたいときはこの鐘を鳴らしてくださいと言って前方に歩いて行った。


「これ、トイレを知らせる鐘なのか……」


「あらお兄さん、乗合馬車は初めてかい?」

「ええ、そうなんです」


俺の呟きに、向かい側に座った30代ぐらいの女性が話しかけてくれる。

女性は一般の町のお姉さんという格好で、肩の後ろまであるだろう髪を後ろでまとめ大きめの白いバレッタで留めていた。


「私はニーナっていうんだ。この先の『アスリ村』ってところまで乗るんだよ」

「俺はレオンといいます。今度王都で薬を売ろうと思いまして向かっているんですよ」


「ほう、あんた薬師なのか? 俺はグリムという冒険者だ」

「本職は魔法使いですが、ポーションなどを作るのが得意なものでしてね」


馬車の中で、乗客と話していると馬車が大きく揺れて王都へ向けて動き出した。

中央寄りに座っていた親子連れの男の子が、揺れに耐えきれず床にお尻を打ってしまう。

すぐに男の子のお姉さんが助け起こして、介抱していた。


「馬車が大きいと、出発の揺れも大きいね~」


冒険者のグリムの感想に、何人かが笑うと男の子もつられて笑っていた。

これから6日間、この馬車で王都までの旅になる。








第20話を読んでくれてありがとうございます。


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