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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん
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第2話 人気の理由




俺がこの仕事場に来てまずやることは、

前日に箱詰めした注文の品を、契約している宅配業者に取りに来てもらうため連絡するのだ。


ポーション屋『レオン』はネット販売専門の店で、取り扱っている商人は少ないがリピーターが多く商品のポーションが売り出されるたびに完売している。

ポーションは量産ができず、価格も通常の回復ポーションが、1本2万円するにもかかわらず売れるのだ。


なぜ量産ができないというと、材料の入手が困難な所と作れるのが俺だけだからだが、これから人を育てていこうとは考えていない。


なぜなら、ポーション作成には魔法が必須だからだ。


俺がもともといた世界に召喚された異世界人が、魔法の無い世界だったと言っていたように、この『日本』に魔法が使える人はいないようだ。

他の国に行けばいるかもしれないが、今のところ出世や名声に興味はない。


……日本に追放されてから何故か年を取らなくなっている俺は、表に出ること避けている。



「……毎度お世話になります、レオンです。

……はい、……はい、……今日は10箱です。

……届け先も間違いなく、……では、よろしくお願いします」


いつもの宅配業者の人が来るまで1時間ほど。

おっと、ワレモノ注意のシールを張っておかないと……




いつものように注文メールをチェックしていると、玄関のチャイムが鳴る。

時計を見ると、宅配業者に連絡を入れて1時間が経過していた。


「いつも思うが、この契約している宅配業者は時間をきちんと守るんだな……」


宅配業者に感心しながら玄関を開けると、

見慣れたユニホームを着た宅配業者の女性が立っていた。

確かツナギという服を着て、

腰のところには何やらごてごてと装備している。


俺から荷物を受け取ると、持ってきたバッグに1つ1つバーコードチェックをしながら収納していく。



「では、10箱お預かりします。 また、よろしくお願いしますー!」


10分ほどで手続きを済ませると、

帽子をとって挨拶をして、宅配荷物の入ったバッグを持って階段を降りて行く。

俺はその人を見送った後、

玄関を閉めようとすると見知った人が、宅配業者の女性が降りて行った階段から上がってきた。



その人は、俺が玄関から見ていることに気づき声をかけてくる。


「…どうしたんです店長、

廊下に出て迎えてくれるなんて、珍しいですね」


雑居ビルの3階、階段からまっすぐに伸びた廊下を

5メートルほど進むと俺の仕事場『レオン』が入っている事務所になる。

他にも、この階には3軒の店や事務所があるが今は関係ないだろう。


仕事場は店でありながらネット専門のため事務所みたいになっている。


「さっき、宅配業者の人が荷物を取りに来てくれていてね」


「じゃあ、下の階ですれ違った宅配業者の女性は……

あ、それで私に挨拶してくれたんだ。

……携帯見てて、声かけてくれたと気づいた時には後ろ姿しか分からなかった~」


「早苗ちゃん、歩きスマフォは危ないよ?」


「は~い」


早苗ちゃんは、少し落ち込んだ顔のまま開け放しの玄関から中へ入っていく。

この女の子の名前は、飯島早苗ちゃん。

ポーション屋『レオン』でいろいろ雑用をしてくれているバイトの女子高生だ。確か、今年で2年目になるかな。


土日祝日と夏休みなどの長期休みなどに来て、働いてくれている。

休むときは連絡だけで、理由を詮索しないからこの辺りの学生たちからうちのバイトが大人気だとか。

早苗ちゃんもめちゃくちゃな求人倍率を乗り越えて、今うちで働いてもらっている。


うちが人気なのは、まず時給が1000円。

さらに、勤務時間は午前10時から午後3時までで残業なし。

休みなどの融通が利き、理由を聞かれない。


そして早苗ちゃん曰く、俺の作る昼食が食べれることが募集人気に拍車をかけているとか……。

確かに、料理スキルのレベルをカンストしている俺が作るのだからうまいだろうけど、そんなに必死になるほどではないような気がするが、早苗ちゃんからすれば最高級の三ツ星の料理屋にもひけをとらないらしい。


……俺は、料理屋をするつもりはないけどね。



それはともかく、早苗ちゃんは玄関を通り中へ入っていくと早速自分の荷物を置き、俺が注文メールのチェックをしていたパソコンの前に座ると、続きをしていく。


「店長、いつも通り、注文品とその数をまとめて印刷しますね~」


「ああ、よろしく頼むよ」


俺は玄関を閉めると、パソコンの置いてある部屋を通り過ぎて奥へ入っていく。

実はこのポーション屋『レオン』は、2部屋しかない。

注文を受けるパソコンが置いてあり、箱詰めもする事務部屋。


もう一部屋には、枠付きのドアが一つ置かれているだけだ。



そのドアを開けると、そこは空間魔法で造られた箱庭の世界が広がっていて大きさは北海道ぐらい、全体の9割が大自然で残りの1割に人の手が入っている。

この箱庭、実は日本に来る前に造ったものでポーション屋を始めるときも、そして今も重宝している。


何せ、ポーションの材料となる薬草が、この箱庭でしか取れないためだ。

地球にも無いか一応探したのだが、見つからなかった。

図書館や本屋、大学などにも通い調べたが駄目だった。


それなら初めから箱庭を使えよと言われそうだが、そういうわけにはいかなかったのだ。何せ、今、俺の魔法は制限されているからだ。

この左手首に嵌められた、銀色の腕輪によってね………




「……店長、ドアの前で自分の左腕なんか見て、何か気持ち悪いですよ?」


パソコンの前で操作していた早苗ちゃんが、こっちを見て顔を顰めている。

どうやら、長い時間左腕を見て考え込んでいたようだ。


「いや、この左腕の腕輪を見て思い出していたんだよ……」


「ああ、その銀の腕輪ですか。確か、こっちの世界に追放になるとき店長の魔法力に制限をかけるために嵌められたとか。

……呪いの腕輪でしたっけ?」


「……そうなんだけど、早苗ちゃんはよく俺の話を信じてくれるね?」


俺の質問がおかしかったのか、早苗ちゃんは椅子に座ったまま俺の方を向くと笑顔で理由を答えてくれた。


「そりゃあ、そのドアの向こうの『箱庭』を見たら信じますよ。

ていうか、信じるしかないっしょ?!」


ですよね………









第2話を読んでくれてありがとうございます。



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