第19話 薬師ギルド
俺は今、この町の中にある薬師ギルドを探している。
ポーションの販売をおこなっていた魔術師ギルドの売店で、町にポーションを扱っている薬屋は何軒かあるということを聞いていたので、探してみたのだ。
確かに、町の中に何軒かあってそこの店主に、俺の作ったポーションの鑑定と買取をお願いしたら鑑定はすぐにしてくれたが、買取などの売買は薬師ギルドで登録をしていないと出来ないといわれたので、登録するため薬師ギルドを探していたのだ。
しかし、朝から探しているが全く見つからない。
昼食を屋台で済まし、屋台の人に場所を尋ねると冒険者ギルドの向かいにあるそうだ。
冒険者ギルドへ行き、向かい側を見ると確かに薬師ギルドはあった。
しかし、今までのギルドより小さかった。
建物もそうだが、ギルドの中も小さい。
受付嬢が2人しかいなくて、掲示板も受付の横の壁に存在する程度。
ギルド内に売店は無く、買取カウンターではなく納品カウンターが存在していた。
「薬師ギルドへようこそ、登録ですか?」
受付カウンターへ行くと、受付嬢が声をかけてくれる。
どこのギルドでも同じだな。
「登録をお願いします」
「では、他のギルドのカードをお願いします」
俺が別のギルドで登録済みな対応だ。
もし別ギルドで登録をしていなかったらどうするのかな?
俺はギルドカードを提出して、その辺りを聞いてみる。
「ああ、その時は近くの冒険者ギルドでの登録を薦めます。
この町の薬師ギルドは、他のギルドに比べ規模が縮小されています。
それは、ギルドとしてするべきことが少ないからなんですよ。
それと、薬師ギルド特有の理由も影響していますね」
ふむ、薬師ギルド特有か……。
他のギルドと根本的に違うのは、依頼をこなすということか。
この薬師ギルドに登録する人の大半はポーションなどが作れる薬師か錬金術師。
素材をとってきたとしても、それはポーションなどの材料として使われる。
そして、完成したポーションを納品。
常にポーションなどの薬の納品は受け付けていて、しかも、この町以外でも薬は必要とされているから輸送されいろんな町などへ。
「……確かに、納品と輸送を主にするならこの規模で大丈夫なわけだ」
「正解です。ポーションなどの薬はすべての町や村で必要とされていますし、それに薬師や錬金術師の方の中には、研究のために孤独になりたがるんですよね。
そのため、規模を大きくしてもやることないからギルドのお金が無駄になってしまうんですよ」
やっぱり、どこかの魔女みたいなイメージがあるな……。
火にかけた大釜を、変な笑い声を出しながらかき回すといった……。
「では、こちらのカードはお返ししますね。
それと、提出されたポーションですが『最高品質』であることが分かりました。
これはもしかして、あなたが作成したものですか?」
ギルド登録とともに、
俺の作ったポーションを鑑定してもらったが、品質が良かったか……。
「はい、俺が作ったものですが……何か?」
「レオンさん、不躾で申し訳ないんですが、王都へ行ってみる気はありませんか?」
「王都、ですか?」
「そうです。
王都は王族や貴族が大勢いますから、ポーションなども最高品質のものが求められるんです。
ところが、最近の薬師や錬金術師、他にも魔術師の中でもポーションが作られるんですがその品質が落ちてきているんです。
現在、最高品質のものが作れる薬師や錬金術師は2人しかいません。
その方たちの弟子たちも、最高品質のものとなると完成させたことがないんです。
何が原因かは分かりませんが、このままでは最高品質を作れる人がいなくなってしまう。
そのうえ、王族や貴族へ品質の落ちたものを提供せざるを得なくなるんです。
ですからあなたには、レオン様には王都で薬やポーションを作ってもらえないかと……」
……受付譲さん、真剣な表情で俺に訴えかけてくる。
でも、一つ聞いておかないといけないことがある……。
「それなら、この町で作って納品……は無理か」
「そうです、薬は使用期限があるんですよ。
確かに時間停止の付与されたマジックバックはありますが、ほとんどを王家が所有しています。
それに数も少なく収納量も少ない……。
空間魔法の収納でも、時間停止があるのは奇跡のようなものです。
召喚された勇者様たちが持つアイテムボックスでも、時間停止が付いている方はごく稀ですから薬をもたせることは、事実上不可能……」
「だから、王都での作成ですか……」
「どうですか? お願いできませんか?
引き受けてくれるなら、薬師ギルドは全面的にご協力いたしますよ」
本当に真剣に受付譲さんがお願いしてきている。
考えてもみれば、確かに好条件だ。
薬師ギルドが協力してくれるなら材料に困ることはないと思うし……。
それなら、あの条件を付けてみるか。
「それなら、1つだけ条件を付けていいですか?」
受付譲さんが、少し身構えたな。
「わ、分かりました。
最高品質のポーションが作れる、レオン様の条件とは何でしょうか?」
「そんなに難しい条件じゃないんです。
王都で、俺の薬を売る店を出したいんですが、どうですか?」
「………店、ですか?」
「そうです、ポーションなどを販売する薬屋を開きたいんですけど」
受付嬢が安堵した表情になり、すぐに笑顔を作った。
どんな無理難題を言われるのか気にしていたようだな……。
俺はそんな鬼畜ではないのだがな?
「王都に店を出すということならば可能です。
ただ、商売としてうまくいくかは本人次第ということになりますが……」
「そこはわかっていますから、気にしないでください」
……というわけで、俺は王都へ行くことになった。
王都に店を出し、日本のポーション屋同様のんびりじっくりやっていけばいいか。
こっちでの仕事もできたし、どちらかの世界に何かあってもうまく生きていけそうだな!
第19話を読んでくれてありがとうございます。




