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ポーション屋の日常  作者: 光晴さん


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第18話 今後の予定



次の日の朝、今日の予定を話し合うために朝食後に俺の部屋に集まった早苗ちゃんたち三人。

わいわいと話がはずんでいるのは、昨日覚えることに成功した魔法のことだろう。


早苗ちゃんたち三人ともに、空間魔法を覚え収納空間を発動できたのだ。

これで、いつでもどこへ行くにも荷物がかさばる心配がなくなり、自分の部屋に入りきらないものも外出するときに必要なものも収納空間にしまっている。


また響子ちゃんは、日本というより地球で何かあった場合のために箱庭もほしいなと怖い考えを披露して、早苗ちゃんとほのかちゃんをドン引きさせていた。


……分からないでもないけどね、響子ちゃん。



「そうだ、一階の食堂で朝食を食べている時、他のお客さんが話していたんだけど、今朝早く、宿の横の路地裏で兵士の一団が騒いでいたんだって」


「路地裏って、昨日のあれ?」


「そうそう、多分あの連中を回収に来たんだと思う」


「あんな連中でも、貴族は貴族ですものね……」


「ねえ店長、私たち捕まったりしないかな?」


早苗ちゃんが心配そうに俺を見ると、響子ちゃんもほのかちゃんも続けて俺を心配そうに見てくる。


「心配なら、この町を出ていくって手もあるけど?」


早苗ちゃんたちが考え込んだ。

でも本当は、あのケリー少年たちには何の力もないんだよね。

貴族っていってもその家の当主でもないものに権力なんて存在してないし、ケリー少年がいくら騒ごうが当主の父親がしっかりしていれば、問題ないんだけどね。


ある程度この町を見たけど、人々が重税で苦しめられているとか、兵士たちが横暴だとか聞かないし。

それにケリー少年たちを見るまでは、この町を治めている人はちゃんとしている印象だったからな。


「私はこの町を出るよりも、いったん日本に帰りたいかな~」


「あ、それ私も思った」

「私もです」


どうやら、貴族うんぬんよりも日本の自分の部屋の荷物整理をしたいらしい。

そんなに収納空間を使ってみたいのか……。


「わかった、それじゃあ俺のこの部屋から箱庭へ、箱庭から日本の事務所へ出てくれ。

ただし、事務所のドアは動かさないこと。

こちらに来るときは事務所のドアから入ってくること、いいね?」


「わかりました」

「はい、わかりました」

「了解です~」


早苗ちゃんたちの返事を聞いて、俺は空間収納から箱庭へのドアを取り出し、早苗ちゃんたちを送り出す。

三人とも嬉しそうにドアを潜っていったけど、少し心配だ……。


その後、ドアを空間収納にしまい一人になった俺は宿の外へ出ることにした。




▽    ▽    ▽    ▽




早苗ちゃんたちが泊まっている宿のある町から、少し北に行ったところにある砦。

その砦にある執務室で書類仕事に追われているのが、この辺り一帯を治めるブリニカ・ディクリア辺境伯だ。


辺境伯の嫡子であるケリー少年が町でうろついていた理由が、父親である辺境伯がこの砦に来ている証拠なのだ。


そのため、あの町のお偉い人たちはケリー少年を見かけると同時にそれぞれの書類を辺境伯のいる砦に持っていくことになっていた。



「ブリニカ様、御子息のケリー様の件でご報告がきております」


漸く机に置かれた書類を片付けたブリニカ辺境伯に、側にいた執事の男は、懐から一枚の紙を取り出し辺境伯へ渡した。

ブリニカ辺境伯は、その紙を受け取ると素早く中身を読み理解した。


「どのようにいたしましょうか?」


辺境伯がすべて読んだところへ、執事が質問してくる。


「くだらん、今回もケリーたちが悪かっただけだろう。

いい加減に気づいてもよさそうなんだがな、ディクリア家の次期当主はケリーではないということに……」


「と申されますと?」


「何だリブリー、お前も気づいてなかったのか?

我がディクリア家の次期当主は、アニー・ディクリアとなっている。

俺の三番目の子供で長女だが、頭の出来は俺より上だ。


それに、アニーが辺境伯となれば王族から婿を取ることができるからな!」


そう言って笑いだすブリニカ辺境伯。

だが、この執事をはじめ辺境伯の側にいる者たちや一部の辺境伯の部下たちは、ケリーを次期当主に押していた。

なぜなら、ケリーが当主になれば自分たちがつけ入ることができるためだ。


だが、辺境伯は次期当主をはっきりと決めていた。

これは、今からでは遅いかもしれないが軌道修正が必要だと頭の中で素早く考えた執事であった。


「では、今回の事でケリー様は……」


「別に咎めることはないが、復讐をするなら自らの力でおこなうように言っておけ。

もし誰かの手を借りて復讐するなら、家を出ていってもらうとな」


「畏まりました、ケリー様にはそのようにお伝えしておきます」


そう頭を下げて挨拶をすると、執務室を出ていく。

ブリニカ辺境伯は、深いため息を吐くと椅子にもたれかけた。

正妻の間に生まれたケリーは、幼い時から次期当主として育てられてきた。


だが、俺は一度でもケリーを次期当主だと言った覚えはない。

周りの者たちが勝手にケリーを次期当主に祭り上げていたのだ。

そのため、ケリーは貴族の子息特有の態度が出てしまっていた。


人を見下していては、他人の気持ちなどわかるはずもない。

今のケリーに当主としての資格は微塵もないのだ。

そんなケリーを次期当主に選ぶわけなどないだろうに……。



ブリニカ辺境伯は、報告書をもう一度読み返し、ある部分で目を止める。


「使われた魔法は、雷系統の魔法か……。

今や使い手はほとんどなく、魔道具の類でも出回っているものは破格の値段が付くといわれている。

………会ってみたいものだな」








第18話を読んでくれてありがとうございます。


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