表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポーション屋の日常  作者: 光晴さん
1/47

第1話 プロローグ




『レオン、お前を異世界追放処分とする!』


王との謁見の間で、俺に対する処分が言い渡される。

腕に付けられた魔法封じの手枷がガチャリと音を立てる。

俺は少なからずショックを受けているのだろう。


下を向いていた顔を上げると、怒りの表情を浮かべて俺を睨んでいる王の顔があった。王だけじゃない、周りを見れば宰相やこの謁見の間にいる者たち全員の視線が俺に注がれている。


中には、俺を嘲笑う貴族さえいる。


俺は世界最高の魔法使い、だが力が強いわけじゃあない。

だから今、この両手に嵌められている魔法封じの手枷がある限り、

俺は町に住む一般人と変わらない。


俺の両側に二人の騎士が近づき、それぞれが俺の腕をつかみ無理やり立たせた。


『その男を召喚の間に連れていけ!そしてすぐに追放しろ!』


王の怒鳴り散らす声が謁見の間に響くと、俺の両側の騎士が無理やり連れていく。

痛みに耐えながら謁見の間を後にすると、俺の後ろで謁見の間と廊下を分ける大きな扉が、音を立てて閉まった。




ベッドの上で勢いよく起き上がると、周りを確認する。

「……またあの夢か。

この世界に来た時はよく見ていたが、あれから30年。

また見ることになるとはな………」


俺はベッドから起き上がると、ベランダに出て自分の住んでいる街並みを見渡す。

ここは異世界『日本』。

俺はこの異世界に30年前、追放になった……。



「…相変わらず、すごい光景だよ。召喚勇者たちの世界は……」

そう、ここは召喚されてくる勇者たちの元の世界。

俺はこの世界に追放された。


追放されてすぐのころは厳しかったな…

なにせ、この世界には魔物など存在しない。

それだけでも驚きなのに、さらに驚くことに魔法が存在しない。


いや、存在しないわけではないが一般化していないというべきか。

空想のものとしか認識されていないというべきか。

そうなれば、元の世界で最強の魔法使いだった俺は普通の人と変わらないのだ。


この世界に来た頃が俺にとって、一番厳しかったときだろう。

だが、この世界に来て数時間で俺は魔法が使えた。

この世界に来た直後は魔法が使えずに、魔法を使うことをあきらめていたが、

突然魔法が使えたんだよな。


「あの時は嬉しかったな……初めて魔法が使えた頃のように……」

おそらく俺の体がこの世界の空気に馴染んだから、魔法が使えるようになったんだろうと予測したが。


それからは、魔法を使って透明になり町を探索。

見るもの聞くものすべてがめずらしく、追放されたことなどすぐに忘れてこの世界に夢中になった。異世界の言葉が分かったのは不思議だったが、ステータスを確認して納得した。


どうやら勇者召喚に使ったあの召喚陣には、異世界言語習得のスキルが自動的に付与されるようになっているらしい。そのため、俺はこの異世界『日本』に来て言葉の壁はなかった。それから、俺が持っていた宝石や金などをお金に換えて生活していたな。


だが、いずれそのお金も物資も底をつきてしまう。

そこで、この世界で俺にできることを探し始めたのが、この世界来て20年目だったな。

まあ、ちょっと遊び過ぎたか……な?



ただ、この世界で仕事や住居を探すとなると戸籍が必要だ。

そこで、この20年で知り合ったいろいろな人脈を使い、戸籍を手に入れ、

この中古マンションの一室を手に入れることに成功。

家賃が安かったし、仕事も見つかったし大丈夫だろう。


それからいくつかのアルバイトを経験し、自身の特技を生かした職を見つけた。

で、俺が選んだ仕事が『ポーション屋』というわけだ。


まず、インターネットを使い俺の作ったポーションを宣伝する。

すると、値段の高さから全く売れなかった。

だが、それは予測済みだ。


このポーションの販売は時間がかかると、始める前から分かっていたこと。

だから、とにかく粘り強く注文するお客を待った。

そのかいあってか、販売から3年目にして初めての注文が入る。


「この初めてのお客様は、今でも注文してくれるお客様になったよな……」

それからは一人、また一人と客が増えていき、今ではリピーターと新規のお客を合わせて年間4000万円を売り上げている。

ネット販売しかしていないにもかかわらずにだ。


それに、あまり世間に知られていないのも原因だろう。

何年か前に雑誌の取材のオファが来たことがあったが、丁重にお断りさせてもらった。

取材をきっかけに注文数が増えても対応しきれないからな。


このポーションは手作りだし、作れる量は限られているしな……。



俺はベランダから部屋の中に入ると、壁の時計を確認して苦笑いを浮かべる。

「……今日も、安定の昼起きか」

いつもの起床時間に安堵し、朝食ならぬ昼食を用意するためキッチンに向かう。


テーブルの上に置いてあるスマフォを確認すると、着信が3件ほどあった。

「……アルバルの店長か、今日の集まりの確認かな?」

スマフォを寝間着にしているジャージのポケットに入れると、昼食を作り始めた。


昼食を作るといっても、レンジでチンで終わりだ。

男の1人暮らしなんてこんなものでしょうと、言い訳をしながら昼食を手早く終わらせ、再びテーブルにスマフォを置き寝室で着替える。


着替え終わると、スマフォをポケットに入れて忘れ物がないかチェックをし

自宅を出ていく。

いつもと変わらない、この生活を続けてずっとこんな感じだ。


玄関のドアを施錠すると、仕事場へと向かう。

中古マンションの廊下などですれ違うご近所さんに挨拶をかわしながら、徒歩10分ほどで駅近くにある雑居ビルへ向かう。そのビルの3階が俺の仕事場だ。


ポーション屋『レオン』、これが俺の店。

まあ、ネット販売専門の店になっているがな。








読んでくれてありがとうございます。

2話目以降は、書け次第投稿させていただきますが、不定期になると思います。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ