自己紹介と書類
「君名前は?」
優しそうに微笑み続ける方が結奈の顔を覗くように訊いた。
「流結奈。壁などに溶け込む能力を持っています。」
この学園で自己紹介をする時、名前と能力を答えるのが通常である。
「僕は碓氷陸翔。能力は透明になる事。五分だけだけどね。」
カラカラと笑うとずっと不機嫌そうにしていた彼を肘でつついた。
「・・・・石渡愁平。能力は雨・・・雨を降らせることが出来る・・・・」
「陸翔さん。愁平さん。よろしくお願いします。」
「ああ結奈ちゃん。この学校はね、皆呼び捨てでいいんだ。僕らの事呼び捨てで呼んでもらっていい?」
「あ!はい。分かりました。」
そういえば、と言った感じで頷くと逆に結奈から質問した。
「ところでこの書類、何ですか?」
「ああ実は僕らサッカー部なんだけどね、マネージャー希望者が多すぎて部長がテストするって言いだして・・・・」
陸翔が言葉を切ると、後を引き継ぐように愁平が話し始めた。
「今まではマネージャーになりたい奴なんていなかったんだがな・・・・しかもそのテスト用紙までコピーさせるなんて・・・・・人使いが荒すぎんだろ・・」
どうやらこの書類はその『テスト用紙』とやららしい。
「・・・そのぉ・・・・何人くらいいるんですか?」
やや遠慮気味に聞いた。
—この書類の量・・・・絶対ヤバい人数に違いない。
そう思ったからである。
陸翔は苦笑いを浮かべて肩をすくめた。
そのしぐさを見て愁平が口を開く。
「・・・・100・・くらい・・・・・」
「あ!そうだ君も受けてみる?テスト。」
先程、苦笑いを浮かべた人物とは思えない笑顔で訊く陸翔に結奈は、
「へぇぇ!?」
と、叫んだ。