ナビ(3)
☆
「新たなるプレイヤー様。はじめる前に簡単な説明を」
「いいよ。簡単な説明はユウアにしてもらったから」
「やっぱりイヴはいらない子なんですね」
イヴは拗ねたように言ってからユウアとココアを見た。
「ユウア様とココア様。ギルド【獣耳の乙女団】に所属している方たちですね?」
「こんにちは、イヴイヴ。今日は慧君━━アナタのマスターの初体験なので見学をしにきたの」
「ユウア。言い方がやらしい」
「どういうふうに?」
「いや、何でもない」
説明するのは何だか恥ずかしいので慧は口にしなかった。
「はい。今日は特別に許可をします。でも今後はダメですよ?もししたら強制排除しますから」
「了解」
「それでは改めて」
イヴは慧を向き直った。
「マスターのことをどう呼べばよろしいですか?」
「好きなのでいいよ」
「じゃあダーリン♪」
「却下」
「好きなのでいいと言ったのに。じゃあマスターのままで」
イヴは不満そうに口を尖らせて、
「マスター。名前の登録をお願いします」
イヴが空中に何かを描くように指を動かすと何もない空間にステータスが出現した。
名前欄が空欄になっている。
「慧君はケイ君?」
「名前をただカタカナにするのはマズイんじゃない?」
「マスター。それなら大丈夫です。セキュリティは万全ですから身元が分かるようなことはありません」
「でもせっかく別の世界に来たんだから別の自分になりたいと思うものじゃない?」
「私は私。私であること、恥ずかしくない。私の友達もR×Fをしているから、名前はそのままの方が呼びやすい」
「俺はせっかくだし名前を変えようかな。慧からゼ━━」
「ゼ?」
「いや、それは何だか安易なような気がするから【イオ】で」
「何でイオ?」
「何となく?」
「マスターはイオ様。了解です。あとで名前は変更可ですから、もし変えたくなったら言ってください」
「分かった」
慧が頷くとステータスの名前欄に「イオ」の文字が。
「イオ様で登録完了です。これから慧ではなく━━R×Fに干渉し話をすすめるときはイオで物語はすすみます」
「?それ、どういうこと?」
「それは大人の事情というやつです。気にしたら負けです」
「訳が分からない」
「じゃあ慧君━━じゃなくて、私もイオ君て呼ぶね?」
「ユウアは今までのように慧でもいいけど?」
「ダメ。雰囲気の問題ですから」
「まあ、ユウアがそれでいいなら」
答えた慧━━いや、イオの手をココアが握った。
「私はイオ・・・・兄ぃで」
「R×F世界のココアちゃん、は大人しめキャラ?」
「ううん。私も私。慧お兄ちゃんが大好きな癒されキャラ」
「うん。ココアちゃんは癒される」
頭を撫でられたココアに本当に癒され効果があるのかもしれない。
「次は種族と職業選びです、マスター」
なぜかイオの手に頭を差し出すようにしながらイヴは言った。