ギア
☆
ギア・・・・それはR×Fをプレイするためのものである。
某マンガや小説で出てくるようなヘルメット型の機械ではなく、一見するとビー玉のような小さな水晶、それがギア。
それを手にするものがプレイヤーとなり、本人自身がこことは別の世界にダイブする。
携帯小説とかで馴染みの転移者のようなもの。
ギアの色は赤と青の二種類あってその色によって飛ばされる場所が違う。
R×Fの世界はゲームみたいにゲームオーバーや死というものがないが空想世界をリアルで体験することができる。
食べ物にも味があるし、風を感じることもできる。
そして眠ることもできる。
だがプレイする時間は限られていた。
現実世界で1日以上プレイすることをR×Fの運営社が禁じていた。
1日以上のプレイは何らかのペナルティーをかせられるらしい。
現実世界での1日がR×F世界での7日。
小さなギアには莫大な技術の結晶が詰まっていてR×Fのプレイヤーになるためには厳しい審査があってなかなかそれを手にするのは難しい。
そしてギアはアクセサリーや身につける飾りとして持つのが常。
場所を選ばずどこでもプレイヤー可能。
プレイヤーはR×Fを自由に好きな場所を行動できる。
クエストをするのもよし、のんびり過ごすのもよし。
すべてプレイヤー次第。
☆
「慧君。こういうの嫌いじゃないよね?前よく言ってたよね?『僕は英雄になる』、って」
「結愛。それは子供の時の話だし」
慧は困ったように結愛に答えた。
いつの話をしているんだか。
「あちらの世界ではこちらの世界で体験できないことができるよ?たとえば魔法」
「それは魅力的だけど」
誰だって1度は魔法を使いたいと思うものである。
その夢が叶うのがR×F世界。
「二人ともプレイヤーだよね?」
「うん。はじめてまだ3ヶ月だけど」
「私は1ヶ月と少し」
結愛はにっこり笑い、心愛は頷いた。
「ファンタジー世界をリアルで体感できるの。慧君もゲーム好きだよね?一緒にやらない?」
「よくギアを手に入れたね?」
R×Fのプレイヤーになるためには何年も待つこともあるらしい。
「お父様にお願いしたらすぐにくれたよ」
━━おじさんは娘たちに甘すぎる。
「お父様はひどいの。あちらの世界には2日しかいたらダメだって。だからなかなかレベルもあがらないし」
「ちなみに二人のレベルは?」
「私は10で心愛は6。7日あちらの世界にいていい条件が」
「俺?」
「そう。慧君もR×Fをプレイしてくれるなら滞在日数を増やしてもいいって」
「どうして俺?」
「分からないけど、多分お父様は慧君を愛しているから」
━━ぞわっ。
「結愛、恐ろしいことを。想像しただけでブルブルものだ」
慧は二の腕をさすった。
「お兄ちゃん、お願い。R×Fを一緒にしよ?」
しがみついてきた心愛にうる目で見上げられ、断ることもできなくなった慧は頷くのだった。