ギルド解散【2】
自分が何を言っても聞かない。
それをリュートは痛感している。
それなら彼女と対等の立場の彼ならどうか。
そう思ってリュートは視線を走らせ、少し離れた場所でおはぎを食べている青年を見た。
━━自分には関係ない。
そんな感じでメンバーから離れている。
いつも温厚なリュートだが青年の態度に怒りそうになった。
それでもグッと感情を押し殺すのは青年がアルシアよりも高レベルだから、というよりリュートは若干苦手意識があった。
□名前:ゼロ。
■レベル:101
■種族:魔人
■職業:エラー【???職】
■ギルド:ギルド【黄昏の彼方】
■称号:極めし者、隠匿者。
青年━━ゼロのステータスを見、リュートは息を吐き出す。
でたらめだ、と思った。
職業がエラーなどと前代未聞としか考えられない。
このR×Fをはじめる時、まずやるのは種族選び、次に職業を決めるからだ。
その時にナビゲーターがいて、色々聞いてくるのだが。
ゼロは得物を使った戦いも魔法を扱うことも得意で苦手なものはなかった。
本当にオールマイティー━━チートと呼ぶに相応しい力。
それにレベル101は前代未聞だ。
そんなに高レベルなのだが彼には2つ名というものがなかった。
アルシアがギルドマスターの権限で2つ名を授与しようとしたことがあったが彼は断った。
一言、
『いらん』
と言って。
だから彼を知る者たちは勝手に様々な呼び名をしていた。
2本の角に不機嫌に見えるつり上がった紅い目。
顔の右半分に複雑に絡みあった2頭の蛇の紋章。
長い黒髪と人目で悪魔と分かる尻尾。
こんななりをしているが彼は甘党だった。
「ゼロ様。聞いている?聞こえてますよね?」
最高レベルであるゼロだがギルドの中でナンバー7。
ギルド内で誰もが実力を認めているのは12人、他のギルドなら間違いなくマスタークラス。
アルシアをふくむ12人をみな【ナンバーズ】と呼んでいる。
ゼロは軽く目線をあげた。
「アルシアが解散と言うんだからそれでいいんじゃないか?」
やっぱりだ、とリュートは思った。
ゼロはアルシアから事前に聞いていたのかもしれない。
「ギルドを発足したのはアルシア。やる気がないなら仕方ないだろう」
「流石ゼロ君。私のダーリン♪」
「誰がダーリンだ。俺は男には興味ない」
「いやいやゼロ君。私は現実でもここでもバージンばりばりの女の子よ?」
「そんなの聞いてない。それに前現実では男と言ってたじゃないか?」
「あれ嘘」
「まあ、そうだと思ったがな」
ゼロは口のまわりについたあんこを舌でなめとった。
「リュートよ。アルシアが言い出したら聞かないのは分かっているだろう?」
「まあ、それは・・・・でも寂しいですし」
「いつまでもアルシアに頼りっぱなしでは成長しない。そろそろ別の道にすすむのはどうだ?そのほうが面白い。リュートも言っていただろう?育てたい者がいると」
「こちらとしてはまだ学びたいことがあったんですが」
リュートはため息をしたあと困ったように笑った。
「お二人が言うなら仕方ありませんね」
「そういうわけで!」
アルシアはギルドメンバーを指差して、
「本日を持ってギルド解散!今日はとことん騒いで食べて楽しもう!そして笑顔でお別れ!」
にこっと笑うアルシアに盛大な拍手がおこった。
そして伝説のギルド【黄昏の彼方】は解散となった━━。