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二度目のVRMMO生活は植物使いから  作者: たまねこ
プロローグ
1/17

ギルド解散【1】

 ━━星の落日。



 世界の崩壊現象。


 それを食い止め、数々のクエストを突破し、難易度Sランクのクエスト【魔王討伐】を単独でなしとげたギルドの名前は【黄昏の彼方】。


 そのメンバーの何人かは限界だと思われていたレベル99の壁を超え、そしてそれぞれ英雄とさえ言われて冒険者から憧れの存在へとなったわけだが……。








「みんな悪いんだけどさ、ギルド【黄昏の彼方】は本日を持って解散するから」



【復活の塔】と呼ばれる建物の前で。


 夕日をバックに腕を組んで不敵な笑みを浮かべて言ったのはギルド【黄昏の彼方】のギルドマスターである女性である。


 □名前:アルシア。


 ■レベル:100

 ■種族:堕天使

 ■職業:太陽の爆拳姫【上級職】

 ■ギルド:【黄昏の彼方】

 称号:ギルド【黄昏の彼方】のギルドマスター、レアキャラ、破天荒娘、魔王殺し(デーモン・キラー)、神を裏切りし者の末裔


 まさにチートに近い能力を持った実力者。


 噂だと世界で最も栄えているラグナ皇国の女王と懇意の仲らしいがギルドのメンバーはそれは事実だということを知っていた。


 長い紅髪とアイスグリーン色の目。

 額に閉じられた【第3の目】があり、その笑顔は人を惹き付けるものがあった。


 背中の漆黒の羽根は堕ちた天使の証であるが、アルシアの功績を知っている者は神に反逆した種族の末裔だからといって彼女を悪く言うことはなかった。


 たとえ困らされた、としても。




『…………』




 突然、「解散」宣言をしてきた彼女に、ギルドのメンバーはすぐに言葉を出せなかった。


 しばらく思考し、メンバー同士で話し合う。


 ギルドのメンバーが戸惑っていることを知っているにもかかわらずアルシアは笑顔のまま。



 ━━言ってやった!



 といった感じの彼女に、



「おい、アルシア」



 目付きの悪い男が言葉を投げた。


 □名前:キリー


 ■レベル:99

 ■種族:虎人

 ■職業:狂戦士【中級職】

 ■ギルド:【黄昏の彼方】

 ■称号:戦闘狂、豪酒


 無造作に伸ばした金髪に金目。

 顔やむき出しの腕には縞模様が走り、険悪な雰囲気をまとっていた。


 彼は誰に対しても威圧的な態度。


 しかしそれはアルシアにはまったく効果なく、



「なぁに、キー君」


「キー君て呼ぶんじゃねぇ!」



 叫んだキリーは得物である大斧を振り下ろした。


 大斧の刃に触れれば柔い女性の体はあっさり切り裂かれるものだがアルシアは笑顔を絶やすこともなく腕を伸ばした。


 無造作に━━本当に軽々と。


 アルシアは自分の命を苅る凶器の刃を受け止めた。



「キー君。駄目よ。おいたしたら」


「相変わらずのバカちか━━」



 キリーの言葉は最後まで続かなかった。


 アルシアの拳が地竜の甲羅でできた鎧を砕き、キリーを吹き飛ばしたからだ。


【復活の塔】は崖のすぐ近くにあるわけで。


 キリーは星になることはなかったが、奈落へとまっ逆さまに……

 。

 あまりにヒドイ仲間の扱いだが、それを気にするメンバーはいなかった。


 いつもの見慣れた光景。


 それに復活の塔が近くにあるから一時間あとくらいには復活してくるはずだ。


 この世界では【死】という概念はない。


 たとえクエストだったり何らかの事故で命を落とすようなことがあっても、一時間から一週間のうちに復活する。


 それは現実ではありえないことだが、現実ではない場所━━ゲームの中では【それ】が当たり前なのだ。



 これがロスト・オブ・フロンティア。


 通称R×F━━今話題のリアルRPG。


【アルシア】は現実世界の人間がの仮初めの姿━━キャラクターだが、ギルド【黄昏の彼方】の中にはAI━━つまり仮想人物も何人かいた。


 プレイヤーが操るキャラクターは希だが限界突破をすればレベル100に到達できるが、AIの最高レベルは80。


 頑張ればレベル81くらいにはなれるだろうがギルド【黄昏の彼方】のAIメンバーは限界ギリギリのレベルだった。


 R×Fは仮想世界をモチーフにし、AIキャラも独自の考えで行動し、日常を過ごしている。


 ため息をついたのは猫耳の青年だ。


 □名前:リュート


 ■レベル:81

 ■種族:魔猫

 ■職業:錬成魔導師【中級職】

 ■ギルド:【黄昏の彼方】

 ■称号:ギルド【黄昏の彼方】のお兄さん、諌め役


 金髪優男然とした彼はレベル81のAIキャラ。

 だがギルド【黄昏の彼方】のナンバー2であった。


 ちなみにキリーはナンバー8だったりするがこの際どうでもいいことだが。



「キリーが怒るのも当たり前だよ。アルシア様」



 穏やかな声には困った響き。



「何が?」



 アルシアは本当に分からない、という顔だ。

 リュートは困った顔で、



「誰だってギルド解散宣言されたら戸惑うよ」



 リュートの言葉にギルドメンバーの大半は頷いた。



「いつものキミの気まぐれなら誰も納得はしない」

「気まぐれなんかじゃないわ。よく考えて決めたことなの」

「何を決めたんだ?」

「ギルド【黄昏の彼方】は大きくなりすぎた。それこそ四大ギルドの一つと呼ばれるほどに」

「確かに。俺たちギルドの下には小中規模のギルドや【ファミリア】もいくつかいる。もしも上のギルドである【黄昏の彼方】が解散でもしたら、組織そのものが崩壊する」

「そう!それよ!私はギルド【黄昏の彼方】に頼りっぱなしになりそうで不安なのよ。彼らもまたギルドを設立した強者の集まりよ。自立して私たちがいなくてもクエストをこなしてもらわないと」

「そうは言ってもいきなり放り出したりしたら彼らは混乱して闇ギルドになるかもしれない。もしそうなったら」

「そうならないためのリュー君よ」



 ぽんと肩を叩かれたリュートは嫌な予感を覚えた。



「もしかして俺に彼らを導けと?」

「うん!それが出来るのはアナタだけよ。リュート」



 リュートは目眩を覚えた。

 相変わらずたちの悪いことを考える、とリュートは思った。

 それなら、


「キミはどうするつもりだ?アルシア様。まさかリタイア、なんてことは?」

「まさか。私はこの世界が好き。リタイアするなんてもったいない。だからこの世界を旅する。まだ知らない場所に行く」

「だからギルドマスターの肩書きが邪魔だというわけ?ギルドマスターだと好きに世界を見ることもできないから」

「まーね。リュー君がギルドマスターになるなら解散はなしでもいいけど?」

「お断りします」



 リュートはきっぱりと答えた。

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