エンドロール
スピーカーからの声の主に従って、俺達はいくつもの謎を解いていった。
さまざまな種類の問題には頭を悩ませられたが、星座や英語の知識のあるデータのおかげで解けた。
どうしても取ることのできないアイテムの入手や取扱いなどは、メイカーの活躍であらゆる道具を使って利用することができた。
対して俺は、情報の入手やらで部屋をあっちこっちをと走りまわされるはめになった。
まさにそれぞれが名前どおりの活躍をしてきた訳だが・・・。
「ここに電気のスイッチがありましたよ!消してみましょう。」
ケイ。彼女はどうなのかというと。
とりあえず目が良い。いや、どちらかというと目のつけどころが良い。
遠くにあるものを見つけたり、小さなヒントを見逃さなかった。
どこか手慣れているので、もしかしたら脱出ゲームの経験者なのかもしれない。
だが、それが本当に彼女の役割なんだろうか?
「この部屋が最期のはずなんだがなぁ。」
データがうなっている。
なんどか休憩させられはしたが、全員がほとんど考えたり走ったりしたのもあって、そろそろ疲れてきた。
何度か時間制限の謎をさせられたからわかる。ほぼ丸一日やらされていた。
だがこれで最期。ところが、ここで俺たちはつまづいていた。
最後のキーワードを音声入力せよ。とのこと。
そのキーワードが何なのかはわかったのだが、何度言っても反応がない。
「壊れてるんじゃないだろうな?」
「壊れていません。まだ謎を解いていないだけですよ。」
スピーカーからの声が返答をする。
謎が解けていないだけ。では、少なくとも不正解ではないようだ。
「音声入力・・・これがヒントになるんでしょうか。」
「ねぇ、これってスイッチか何か必要なんじゃないの?」
メイカーに言われてドアの鍵にあたるところを再度見てみる。
そこには声を聞き取るマイクと、文字か何かを表示させるであろう画面があるだけ。
たしかに、スイッチでもなければ偶然言葉にしてしまったパスワードで鍵が開いてしまう可能性もある。
でも、それっぽいのはないんだけれども。
「そうだ。カードキーじゃないか?この線って!」
「あ、たしかに。」
マイクの横に線の溝がある。
これまでにも似たようなデザインのものがあったから、それと同じと思っていたが。
脱出ゲームにはつきものだと、最初の頃にメイカーがトランプなどで試していたのを思い出す。
でも、この部屋でそれらしきものは見つかっていない。もう時間がない。確証もない。
もう一回部屋を調べなおすか、手持ちのアイテムを手当たり次第で試して間に合うか・・・・?
と、手持ちのものを探ろうとした時に気が付いた。
「ネームカード!」
「え?」
「名刺だよ!これ、カードになるんじゃないか?」
「最初に渡された私たちの名刺を使うのね!なるほど。ありえるわね。」
「だが、そうなると誰のカードが・・・・ああ!!彼女のか!」
全員の目線が彼女へと向けられた。
そう。ケイだ。
俺の名刺にはカタカナで名前が書かれていたが、裏側には英語で名前が書かれていた。
自分の以外は読んでいなかったが、おそらく。
ダッシュはDash、メイカーはMaker、データはData。
そしてケイは、思った通り。Key。鍵という意味。
そう。彼女こそが今回の鍵だったんだ!
「単純だけどせこい罠ね!」
「文句を言ってる時間はないぞ。名刺を溝に差し込んでみよう。」
「キーワードを音声入力。ってことは、カードキーを入れたらケイの言葉でキーワードを言えばいいはずだ。」
「わ、わかった。」
ケイが急いでカードキーを差し込むと、ピコンと音が鳴った。どうやら正解らしい。
俺達は彼女の邪魔にならないように黙った。
「エスケープ!」
声に反応して、ドアが開く。
「よし!」
「これで最期だ!」
皆で走ってドアの向こうへと進み、閉める。
間に合ったと、喜んだのもつかの間。新しい時間制限を告げる音声がした。
「おいおいまたかよ!」
「時間制限までに、施設の外へと脱出してください。時間はギリギリですのでお急ぎを。」
言われなくとも、もう走ってる。
とはいえ制限時間はわりとあるのにギリギリと言われて気持ちが焦る。
どこまで走らせる気だ!と叫びたかったが、体力の無駄遣いなのでやめておく。
時間があるせいで走っているうちに嫌でもわかった。この時間が終わる直前まで走らなければならないことを。
全く。犯人はなんのつもりでやらせてるんだ!?娯楽か!?
「ここが出口か!?」
ドアを開けると光が視界を覆った。
そこで、俺達の意識は再び途切れる。
「ミッションクリアおめでとうございます。記憶は思い出せましたか?」
「全部思い出しましたよ。まったく、大掛かりなことをしてくれましたね。」
俺は目の前にいる人物を睨む付ける。
脱出ゲームをけしかけた犯人であり、俺達の記憶を消して楽しんでいたこの男。
実は陰で動いている秘密組織の親分だ。
そして俺達が思い出したこと。
それは、この組織に実力を買われて選ばれた新入りメンバーだったということだった。
命がけの仕事を覚悟してはいたが、研修をかねたテストでここまでのことをされるとは思わなかった。
「あの程度のことをクリアしてくれないと、やってけないからねぇ。」
「だからって、やりすぎですよ!」
「でもおかげでチームワークもしっかりできわ訳だし結果オーライってことで。」
「…給料ぐらいは出してくれますよね?」
「合格祝いにちゃんと振り込んでおくから。」
やれやれと、頭を抱えて倒れこむ。
「でも、楽しかったです。」
そう言いながら笑うKEYに全員が目を丸くした。
「お前、大物だわ。」
「あ、明日にはすぐにそれぞれ最初の仕事を始めてもらう予定だから。」
「「えー!?」」
「ダッシュで頼むね?期待してるよ、ダッシュくん。」
コードネームで呼ばれ、苦笑いしながら答える。
「りょーかい。」




