スタートダッシュ
推理とか脱出ゲームとか言ってるけど、そんなに凝った謎解きはなく短編で終わらせます。
機会があれば再構築するかも。
「それでは、脱出ゲームを始めます。」
それは、あまりに唐突な出来事だった。
目をさましたら、知らない場所に俺はいた。
知らない場所に閉じ込められていた。
そこには俺の他にも人がいた。
外にも出られないし、とりあず自己紹介をすることになって俺達は気がついた。
全員、目覚める前の記憶がないことに。
「皆さん、おはようございます。」
上部に取り付けられたスピーカーから声が聞こえた。
おそらくここに俺たちを閉じ込めた当人と判断して、それぞれが声をあらげる。
「お前は誰だ!」
「ここはどこ!」
「まぁまぁ落ち着いて。」
「じゃないと、命はありませんよ。」
少し上がった音量でそう告げられた俺達は黙り混む。
どうやら盗聴と盗撮をされているようだが、そんなことを悠長に考えている暇は与えられなかった。
「よろしい。では時間もないので簡潔に説明していきます。まずはみなさん、胸ポケットに入っている名刺を見てください。それが皆さんのハンドルネームとなります。」
「ハンドルネーム?」
「これから皆さんには、脱出ゲームをしていただきます。」
俺はすぐに言われた通り胸ポケットを探って名刺らしきものを取り出していた。
かかれていた名前があまりに単純すぎてあっけに取られる。
どうやら、本当に本名ではないらしい。
「・・・ダッシュ?」
「なんだそれ、脱出とかけてんのか?」
緊張した空気に軽い笑いが響く。
こんな状況だ。笑っている場合ではないだろうというツッコミと、だからこそちょっとしたユーモアでさえ欲している認識が頭にめぐった。
「ボクはデータ。」
「あたしはメイカー。」
「私は、ケイ。」
「一人だけ普通の名前っぽいわね。」
「はいはいそれではいきますよ。最初はいたって簡単です。鍵を開けるので1分以内にそこから出て奥のドアまでたどり着いてください。」
「え、それだけ?」
「ではどうぞ。」
ガッコン、と。たしかに鍵の開いた音がする。
おそるおそる出た俺たちは、あまりに短い制限時間に焦らされて、本当に従って大丈夫なのかと顔を見合せる。
ただでさえ俺は、まだあの部屋を調べきれていない。
しかし、時間制限の意味はすぐに見つかるようになっていた。
部屋を出てから見える位置にあったもの。そこから聞こえる時計の音。そして表示された時間制限。
「爆弾!?」
もう考えている余裕はない。ドアのところまで全員で走ると、勢いよくその頑丈そうなドアは閉まった。
瞬間、聞こえた爆音。
時を見計らって開いたドアの向こうには、部屋においてあった小物が炭となっているのが見えたのだった。
「おいおいまじかよ。」
「脱出ゲームって、もっと考える時間があるもんじゃないの!?」
「これでルールはわかりましたね。」
「それでは、脱出ゲームを始めます。」




