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続、小説・吸血鬼の村  作者: iris Gabe
第二部
9/20

9.闇夜を徘徊せし魔物たち(初日、夜)

   敬愛すべき吸血鬼Kさま――

 頼りない部下で本当に申し訳ございません。Kさまをお慕い申し上げつつ、精いっぱい努力いたします。

 賢明なるKさまのことですから、お気づきになってみえるとは思いますが、わたくしが出した目配せの意図は、『想われ先』の失血死狙いです。わたくしたちを除いた女性は、女将と子守りの二人ですから、順番に襲っていけば二日間のうちに、想われ先と将校の両名を確実に抹殺することができます。

 ただ、Kさまから目配せのご返事がいただけなかったことで、わたくしは、Kさまが想われ先の失血死よりも優先される目的がおありなのだろうと推測いたしました。おそらく、Kさまの狙いは猟師の感染だと思います。今晩、猟師は、わたくしか書生のどちらかを間違いなく護衛するはずですから、書生の感染狙いだけは、Kさまにとって危険な行動となってしまいます故、どうかお控えいただきたく思っております。

 一方、猟師の感染狙いで女性を襲撃するのも、やりにくかろうと思います。将校の想われ先を感染させてしまえば、その事実は即座に将校に気づかれてしまうことでしょう。その後で、想われ先を失血死させても、結局は将校と想われ先の二人を殺すために二日を要したことになり、最初から将校を失血死させた方がましであった、ということになってしまいます。

 だから、Kさまの今晩の狙いは、猟師の感染であり、ターゲットは将校と書生を除いた男性の中の誰かということなのでございましょう。ならば、わたくしはKさまのお邪魔をいたさぬよう、女性を襲撃することにいたします。

 いつでも、Kさまのご指示をお待ちしております。

   あなたの忠実なるしもべより


 夜が明けようとする頃、ようやく琴音からの返事がやってきた。


   親愛なる小間使いちゃんへ――

 うちがKになってしもて、いろいろ迷惑かけると思うけんど、仲ようして、村を皆殺しにしちゃいましょう。

 目配せの合図、送らんとごめんね。小間使いちゃんの気持ちはわかるんやけど、うちの計算では、想われ先を失血死させただけでは、うちらの勝利にはまだ届かんのよね。だから、初日の襲撃は、うちの直感やけど、猟師感染を狙ってみるわ。うちから見て一番猟師っぽかったんが、望月なんよ。なぜって? うーん、理由を説明するんは難しいんやけど……。というわけで、今晩だけは、うちのわがまま許してね。

 天文家を騙ってくれたんは、超ナイスプレーやわ。明日は、気取り屋の和弥をこってんぱんにとっちめてやりんよ。

   あなたを応援するものより


 さらにGMゲーム・マスターから、オリジナル吸血鬼の私たちだけに向けた夜間の結果報告のメッセージが送られてくる。


 小間使い葵子は、子守り千恵子に目をつけました。

 令嬢琴音は、小説家望月を襲いました。

 小間使い葵子は、子守り千恵子を襲いました。

 吸血鬼は小説家望月を感染させました。

 子守り千恵子は健全です。

 生き残ったオリジナル吸血鬼の数は二人です。


 今回は、KとQが別々の人物を襲撃したため、Kに襲われた望月が感染吸血鬼となり、Qである私に襲われた千恵子は無傷のままで、翌日を迎えることになる。私たちは二人とも襲撃を妨害されてはいないので、猟師が護衛していた人物は、望月と千恵子以外の人物であった、ということになる。

 望月の正体は私たちにはわからないが、はっきりしていることは、現在生き残っている九名(高椿子爵はすでに亡くなっている)の中で、オリジナル吸血鬼は二人、感染吸血鬼が望月の一人、残りの六人は村人または使徒、ということになる。(これらは、私たちが吸血鬼であるが故に知ることができる情報であり、村人たちには知る由もないものである)


 翌朝になると、GMから全員のプレーヤーたちに昨晩に生じた出来事が報告された。それは、以下のような簡単なメッセージであった。


 生存者は、小説家望月、小間使い葵子、書生和弥、女将志乃、子守り千恵子、蝋燭職人菊川、土方中尉、令嬢琴音、行商人猫谷、以上の九名である。

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