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僕等 〜約束〜  作者:
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第4話:ナツと羽稀

「僕も学校に行く!!」

「ナツ!ダメって言ってるでしょ?いくら頭がよくてもナツは中2なんだからね」

「いいじゃんかぁ!!だって家で待ってるのなんてつまんないよっ!」

「あのねぇ…!ナツも遊びに来たわけじゃないんだから…」

「外に丸聞こえなんだけど」

どこから入って来たのか、羽稀は朝っぱらから大声を張り上げている二人に向かって(トーストを食べながら)冷たく言い放った。

「あぁ!おはよう羽稀!ちょっと聞いてヨー!」

茗は羽稀に助けを求めるようにそう言った。

「聞かなくても分かってるってば。ナツが『学校に行きたい』っておこちゃまな発言してんだろ。大学のカリキュラム受けてたってそういうところがまだまだ子供…」

ナツは羽稀の言葉を遮らせるように、茗に分からないように羽稀の足を踏んだ。

「いっ……!」

(ってぇ…!)

「『おこちゃまな発言』で悪かったなっ!人の家に勝手に入るなっ、不法侵入って言うんだぞ、知ってるか?」

「お前が言うな!!チビすけだって茗の家の居候なんだから、少しは迷惑考えろよな。」

「チビすけじゃねー…っ」

ナツは、羽稀が言ってる事が正しいので、言い返すことができず言葉をぐっと飲み込んだ。

「そうよ、ナツ。羽稀の言ってる事は正しいんだからね。昨日は夜も遅かったから泊めてあげたけど、今日はもう帰ってよね」

「そんなっ!!僕に理事長先生の所に一人で帰れっていうの?ひどいよ、あんまりだよ茗!!」

ナツは大声をだして、潤んだ目を上目遣いに茗に向けた。

「うっ…」

茗もそんな目を向けられて少し動揺していたようだったが、さすがに羽稀は騙せなかった。

「茗、早く行かないと遅刻する。ナツ!俺達が学校から帰ってくるまでに最善の方法考えときな」

「僕が茗を連れて皇雅に帰るのが最善だ」

ナツは必死で羽稀にくいさがる。

「茗の意思も考えての事か?」

「それは…。でも、茗は皇雅に帰るのが一番いいんだよっ。今は分からなくても後々気づくさ」

「あっそ。とにかく理事長先生だかに連絡してみろよ。何か変わるかもしれないだろ」

「言われなくてもそうするつもりだ」

二人の間には、いつのまにやら火花が散っていた。

と、それに見かねて茗が二人の間に割ってはいる。

「あ〜もう!とにかく!!学校遅刻しちゃうから、後は学校が終わってから話そ?」

『…了解』

茗は二人に一括いれると、忙しそうにバタバタと仕度を始めた。

そんな茗を見ながら二人は小声で話し始める。

「結局俺達も茗には頭が上がらないって事か」

軽く溜息をつきながら羽稀が言う。

「茗を怒らせると怖い」

羽稀はナツを間近で見て、その時初めて気づいた。

「…昨日は暗くて気づかなかったけど、お前もしかしてハーフ?」

「気づくの遅せーなぁ。もう気づいてるのかと思ってたのに」

「じゃあハーフなんだ」

「残念だけどちょっと違うね」

ナツは、瞳が見えづらくさせていた長い前髪を掻きあげた。

ナツの色白の肌と金色がかった髪にとても似合う薄青い瞳が羽稀を覗いていた。

「僕はハーフじゃなくてクォーターだよ」

ナツはそう言うとその瞳をまた前髪で覆った。

「クォーターって事はお前の祖父か祖母が外国人ってことか」

「うん。僕の母方のおじいちゃんが外国人なんだ。もう死んじゃったけどね」

「そりゃ…お気の毒様で」

羽稀は少し申し訳無さそうに言葉を濁した。

「母さんの名前はシャルル・メルフィーノ」

「シャルル…ってあの大女優の?」

「うん、母さんは大女優だったらしいね。僕はテレビに映ってる母さんを見たことはなかったけど」

「ふーん……」

茗は二人構う事なく、忙しなく動いていた。

「母さんは日本に仕事で来た時に父さんに出会い、二人は恋をした。でも父さんは突然母さんの目の前から消え去った。実はその時母さんは既に妊娠していた。僕だ」

「……」

ナツがただ一点を見つめ淡々と話しているのを、羽稀は時々頷きながら黙って聞いた。

「父さんも結構有名な人だったらしくて、たぶん子供が出来て母さんとスキャンダルになるのが怖かったのさ。今では行方の分からぬ人だ。母さんは女優は引退して、僕を女で一つで育て上げた。でもその時に力になってくれていたのはやっぱりおじいちゃんだった。母さんはおじいちゃんの助けも得て、僕が小学生になるまで育ててくれた。でも、母さんは突然病で倒れた。僕の目の前でいっぱい血を吐いて床に倒れこんだんだ。もともと体が弱かった母さんの体はもう、ボロボロだった。母さんは血の気の引いた顔で僕に一言囁いてから死んじゃった」

羽稀は聞いていいものかと少し戸惑ってから、優しく問い掛けた。

「…何て?」

「I Love You」

羽稀は、一瞬だけナツの瞳からキラリと光るものを見た気がした。

「母さんが死んでからはおじいちゃんが僕を引き取った。そして『小池』の姓をくれた。

でも僕が中学にあがると直前におじいちゃんも死んじゃってね。遺書には僕が皇雅学園の入学が決定した事が書いてあって、あとは今の通りさ」

「…お前苦労人なんだな」

「まぁね」

「あー!もう遅刻しちゃうよ〜!」

茗が仕度を終えて羽稀達の所に落ち着いた時は、もう既に遅刻ギリギリの時間だった。

「茗!走っていくぞっ」

「やだ、ちょっと待ってよ羽稀!!置いてかないでぇ!」

「茗!羽稀!いってらっしゃい」

ナツは羽稀の名前を呼ぶ時に少しだけ口ごもった。

『いってきます』

二人は笑顔で返した。

随分更新が遅くなってしまい、大変申し訳なく思っております。はい。

一ヶ月近くも野放しにしてしまいました(-_-;)

実は期末テストなんてものがありまして、馬鹿な私ですから、

勉強しなきゃなぁ…との事で勉強一本に絞っていましたが!

ついにテストが終わったので、これから今までのブランクを

取り戻すつもりでバンバン書いてきますんで、よろしく!!((笑

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