第24話:事件
番外編『演劇部の日常』
まなみ(以下:ま)「ご機嫌よう…、水無月さん…」
茗「あ、部長!こんにちは!」
ま「先ほどから一体何を思案しているの…?」
茗「うーん、それが今日藤峰さんに『お前はホントに天然だな』って言われたんですけどどういう意味ですか?」
ま「あら…そうなの。それは天然ボケの略で…、言動が常識から少しずれていれていて、しかもずれていることを自覚していないという意味よ…」
茗「なるほど!部長は物知りですね!」
ま「うふふ…、ありがとう…」
楓「いやいやいやいや…!そうですけどそうじゃなくて!」
演劇部の日常(完)
気が付けば、文化祭までの期間はあと3日間というところまで迫っていた。演劇部は連日練習を重ね、茗はもう完璧にセリフを覚えていて、与えられた衣装を見て嬉しそうにしていた。
クラスの出し物はカフェに決まったのでその準備もしたし、何より藤峰のメイド服姿は想像しただけでかなり笑えた。男子はウェイター、女子はメイド服。3回目のホームルームで早々と決まったことだ。裁縫は女子の担当で、それ以外の大工仕事やなんかは男子の担当。藤峰は「こんなヒラヒラしたもん着れるか!」と息巻いていたが、みんな(主に藤峰ファンと女子)の説得に負けてとうとう着ることを受諾してしまったのだ。藤峰はもともと美人だから似合うとは思うが、普段のキャラと似合わな過ぎてそれが俺の爆笑を誘うだろう。当日は殴られてでも笑い倒してやろうと、俺は密かに決め込んでいた。
しかし、そんな最中に事件は起きた。
「水無月さん!大変です!」
俺と茗が揃って登校して、教室に入ろうとしていた時だ。楓が廊下を走ってはいけないという校則(?)を無視してまでやってきて、扉を開けるなりそう言い放った。
「何これ!」
楓の只ならぬ剣幕になんとなく俺もついて行ったが、演劇部の部室は見るも無残な姿になっていた。ハンガーにかかっていたはずの衣装はズタズタに切り裂かれていて、小道具も散らかり放題だった。
「ひどい……」
「これは」
俺たちが茫然としていると、帷原まなみが音もなく背後に近寄っていた。
「あら……」
俺たちがビクッとして振り向くと、こんな異常事態でも変わらず無表情の帷原部長がそこに立っていた。帷原まなみはもう衣装とも呼べなくなってしまったような布切れを優しく拾った。
「とりあえず片付けが必要なようね…。放課後やりましょう…」
「部長!落ち着いている場合じゃありませんよ!もう3日間しかないのに…、劇はどうするんですか!」
暫く沈黙が続いて、帷原部長はその重い口を静かに開いた。
「衣装が必要ない新しい台本を書くか、最悪の場合、中止にせざるを得ないわね……」
いつもと同じ口調、いつもと同じ表情だが悲壮感がひしひしと伝わってきていた。それは茗も楓もそうだった。まなみは「最悪の場合」とは言ったが、元々ほとんど素人のような集団で作っていた衣装だ。総出で作り直しても3日間で元通りにするのがほぼ不可能であることは誰が見ても一目瞭然だ。新しい台本を作るとしても、そのセリフをまた覚え直すのも一筋縄ではいかないだろう。
文化祭での劇は中止。そういうことだ。しかし、問題はそれだけではない。
「一体誰がこんなことを…!」
いつもは大人しい楓も、怒りを露わにしている。
「確かに問題はそれだな。誰か演劇部に、もしくは演劇部の奴に恨みがあるやつが犯人であることは間違いないだろう。犯人の目的はなんだ?今回は良くてもまた同じことを繰り返すかもしれない」
「エスカレートしていく可能性もありますからね…。確かに犯人を突き止める必要があります!」
そうして俺達の犯人捜しは始まった。
今回は前書きでプチ小説を書いてみました。
これからも余裕があれば書いていきたいと思いまつ。




