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僕等 〜約束〜  作者:
16/28

第16話:恋愛テクニック

「だから…吊橋効果よ…」

「…吊橋効果ってなんですか?」

体育館の外も中も暑いというのに、まなみは汗一つかかず涼やかな表情でそう言った。


今から10分程前…


茗は放課後の部活を控えていつになくソワソワしていた。

それというのもお昼休みにバスケ部長と゛まなみの行きたいところを聞く゛と約束したからだ。

茗はまなみがどこに行きたがるのか実際興味があったので、放課後までの授業中、自分なりにあれこれ予想して楽しんでいた。

今のところ映画館が茗の中では有力候補だった。

理由は「座ってられるから楽でしょう…?」って言いそうだから。

それに、彼女は明るい光よりも暗闇が好きなのではないかという気がしていたからだ。

ようやく放課後になって、茗がいつもより早足で行くと、まなみはもうそこにいた。

椅子に座って窓からもれる光を浴びている様子はまるで光合成でもしているかのようだ。

「…珍しいわね」

茗の気配に気づくと、まなみはスッと目を開けた。

「寝てたんですか?」

「…瞑想よ」

「瞑想ですか」

まなみは茗にとってに限らず、つかみどころのない人だった。

「つかぬことをお伺いしますが」

「…なぜ粗品を渡す時ってつまらないものですがって言うのかしらね…」

「へ?」思わぬ返しをされて茗はすっとんきょうな声をあげたが、まなみはそんな茗を特に気にする様子もなく、独り言のように言葉を落とす。

「本当はつまらない物じゃないのならそれでいいかもしれないけれど…、本当につまらない物だったらきっとがっかりしてしまうのでしょうね…。で、水無月さん…つかぬことって何かしら?」

茗はまなみの眼差しに妙な圧力を感じたが(具体的に言うと、「あなたの話が本当につかぬことだったらどうしましょうね?」って言われている気がしたが)思い切って口を開いてみた。

「帷原部長って付き合ってる人いるんですか?」

「それって人間で?」

「も、もちろんです」

人間以外で他に何が可能性を秘めているのだろう?

「じゃあ、居ないわ…」

゛じゃあ゛ってなんだ

って思ったけど茗は特にそこは掘り下げなかった。

「どんなデートが理想ですか?」

「水無月さん…吊橋効果よ…」

「吊橋効果…レインボーブリッジってことですか?」「ふふ…あなた、天然ね?」

「…人工ではないと思います」

天然だと言われたのでそう答えたのに、まなみはなんだかうっすら笑っている(ような気がする)

「だから…吊橋効果よ…」「吊橋効果ってなんですか?

「水無月さん…私を口説きたいなら吊橋効果でもつかってみなさい…」

茗は何を言われてるのか全くわからなかったがとりあえず頷いた。

そしてちょっとしてから気づいた。

「私が帷原部長を口説くんですか?」

「あら…違ったの?」

吊橋効果と妙な誤解で茗は思わず「私が好きなのは羽稀です!」と言いそうになって口をつぐんだ。

前に沙織に「あんたさ、あんまり羽稀の彼女面すんじゃないわよ」と言われたことがあったからだ。

その時はまた意地悪でも言っているのかと思ったが、すぐにそれは沙織なりの優しさだということがわかった。

羽稀は学校では王子様とかアイドルみたいな立場だから、恋人とわかればイジメにあってしまうので、忠告をしてくれたのだ。

沙織は口も態度も悪いが、なんだかんだ優しかった。茗はクラスメイトの美沙里よりも沙織との方が仲良くなれると思っていたし、実際仲良くなりたかった。

そんなことをもやもやと考えていたら、座っていたはずのまなみはいつの間にか立ち上がって、茗のすぐ目の前にいた。

「あなたでないのなら…静くん…?」

「静くん??」

聞き慣れない名前を言われて茗はおうむ返しした。

「ほら…さっきからあそこにいるじゃない…。河合(かわい)(しずか)くん」

まなみの指さす先には、隠れるはずもないのにコソコソとこちらを伺うバスケ部長の姿。

すぐうしろには羽稀と沙織が隠れようともせずこちらを見ている。

「部長…そんな名前だったんですね。」

「私はてっきり合田武(ごうだたけし)だと思ってたけどな」

ニアピン。

茗は心の中でそう呟いた。

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