第15話:夏バテバテ
「いやー終わった終わった」
「終わったね」
「終わったな」
「終わりましたね」
「いや!始まりだ!」
おばさんのバーゲンセールかってくらいぐいぐい割りこみ、テスト終わりのみんなの穏やかな空気に熱風をねじ込んだのは、誰が言ったか人よんでリアルジャイアンことバスケ部長。
「テストも終わったしたまにはみんなでご飯食べよーよ」という茗の提案に藤峰が珍しく異論を唱えなかったのには理由があった。
茗はさほど気にしていない様子だったが楓でさえも顔をひきつらせて、わざとらしいくらい「いいですね!日陰なら風もあって涼しいですし行きましょう!」なんて頷いていた。
そうして昼休みにわざわざ屋上で弁当を広げた理由はただ一つ
リアルジャイアン、だ。
しかしながらそんな浅はかな逃亡はあっさりと失敗してしまったようだ。
こうして回想してみているがぼんやりとした視界の中ではリアルジャイアンが汗びっしょりで息を切らせてこちらをみている。
観念するしかないらしい。
「そうですね…部長。まだまだ始まったばかりでした…」
「な、なんだ樋口!わかってたのか!」
「もちろんです部長!まだ夏は始まったばかりです!」
「恋だ!!」
大袈裟にボケてみたのにこの始末。
とりあえず汗を拭くかノリツッコミをするかどちらかにして欲しいと心の中で呟く。「部長…面白くないです」
「何の話だ!」
部長の顔をみていると食欲が失せるのは何故だろう?なんて、そんなことを考える間もなく部長に肩を掴まれる
「樋口!デートだ!」
「すみません…部長。俺そういう趣味はないんで…」
「だから何の話だ!」
藤峰と楓は部長と目を合わせないようにしながらもくもくと弁当を食べている。
茗はと言うとお弁当を広げもせず部長をじっと見つめている。
「部長さん…愛に性別の壁はありません!」
「ボケ殺しか!」
いえ、部長。
茗は天然です。
「冗談ですよ。で、リアル鬼ごっこをいつやるかって話でしたっけ?」
「そんな話をいつした!だからまなみさんとのデートの件だ!」
俺はお弁当を頬張りつつ、部長の眉毛をみてカリントウを思い出しながら「そーいえばそんな話もしましたね」と惚けてみせた。
「部長さんはどんなデートしたいんですかぁ?」
ようやく弁当をあけ、卵焼きをついばみながら言った。
恐らく部長の恋の悩みに対して一番真剣なのは茗だろう。
どんなにくだらないことでも真剣に向き合う茗は純粋で無垢だ。
そんな茗の卵焼きを一つ横からとって食べると茗は小さくあっ、と言った。
茗の卵焼きは甘くてちょっと焦げてた。
これは最近になって知ったことだが茗はあまり料理が得意ではないらしい。
でも俺は茗の料理が嫌いではない。なんでだろうねって話を茗としたけど、愛がこもってるからだよってはぐらかされた。
そしてこれも最近知ったこつだが実は俺の母親が開いている料理教室に茗はたまに行ってるらしかった。
それを聞いた時バカだなぁと思いっきり笑ってやった。
ところでなんでこんな回想をまたお披露目しているかというと理由は一つしかない。
先程から繰り広げられている部長の理想のデート論を聞くのに飽きたからだ。
(正しくは、最初から聞いてなかったんだけど)
「…というわけでまなみさんとデート、デートっていうかまさしくデートなんだけど…っていうかデートって照れるな…で、デートなんだがな!」
何回デートっていうんだ。「わかりました、部長。帷原先輩に聞いてみましょう」
「あ、じゃあ私今日の部活の時に聞いてみるよ」
「そ、そうか?じゃあそうしてくれ!」
面倒だったからそういったのになんだかまとまったようだ。
部長は上機嫌で昼休みの終わりの予鈴とともに走り去っていった。
「あ、話まとまったの?」お腹がいっぱいになった藤峰は眠そうに目を擦っている。
「…お前なー」
次こそは貴重な休み時間を部長に潰されないようにしようと心に決めながら食べかけの弁当をカバンにしまい、部活以外で部長に会うのは思っているよりも体力を使うなーと思ってる途中でもしかしたら俺は部活の時余計な体力を使っていたのかなーなんて漠然と思い、一人静かにテンションをさげながら、部長がジャイアンならさしずめ楓はデキスギくんだなーなんてほんとにどーでもいいことを考えていた。
最近になって思うことは部長の名前がまだ登場してないけどはたして出した方がいいのかってことと、部長のセリフには゛!゛が多いってことです
そしてキャラクターが勝手に動いてボケるんだけどイマイチツッコミが安定してないってことです
まー名前は次回くらいにだすかなーなんてぼんやり思ってます