第1話:クラスメイト
どーも、すももです♪『僕等』の続編ですっ!イエーイ!ちょっと夜遅くまでかかって頑張って書きました!では本編をどうぞ!
俺は
あの日からずっとあいつに会える事を待ち望んでいた。
『…私、絶対に早くに帰ってくるから…っ。浮気とかしないで待っててよね』
もう、俺は何年もあいつを待ちつづけてる。
…何年もっていうのは少し大げさだけど、中学二年に初めて出合った頃からは、すでに三年の月日が流れていて、俺はもう高校二年生になっていた。
― 人はどうして誰かを好きになるんだと思う?
― 人はね、一人じゃ生きられないから、誰かを好きになるんだよ
「俺も茗が居ないと生きるのいっぱいいっぱいなんだから、早く帰って来いよな……」
羽稀は、暖かい日差しをうけながら屋上に居た。
「俺はいつまで待てばいいんだろう?」
ふいに羽稀は、先の見えないような絶望感に襲われる時がある。このまま大人になるまで会えないのかと思うと気分が沈み、勉強なんか頭には入らないし学校に行くのも憂鬱になる。そういう時に羽稀は、ひたすら『早く大人になりたい』と願うのだった。
羽稀はその場に寝転がり、青い空を眺めた。気分が鬱する時は、何も考えずに空を眺める事が一番効果的なんだという事を羽稀はわかっていた。そのままウトウトし始めた時に授業のチャイムが鳴った。
(あ…そっか。五時間目のチャイムじゃん…。…面倒だからいっか…)
そのまま羽稀は眠気に逆らう事なく眠り続けようとした。
「羽稀ー!!」
突然背後から声がして、羽稀の眠気はすっかり覚めてしまった。羽稀はその瞬間にほんの淡い期待を抱いていた。このまま後ろを振り返ったら、茗がいるんじゃないか…と。
しかし、羽稀がゆっくりと振り返ったと同時に、そんな淡い期待はどこかに行ってしまうのだった。
「羽稀!こんなとこで何やってんのさっ。授業始まってるよっ!」
「…なんだ、藤峰か」
「あっ、何だよその言い方!かなり失礼じゃない?」
振り向いたそこに居たのは、クラスメイトの『藤峰 沙織』だった。いつも何かっていうと、俺につっかかってくる女なんだけど、男っぽくて男としては話しやすくて男友達的な存在としては人気者ではあるかも。
「ハイ、ハイ。つーかお前は人の事言えんのかよ」
「…なにが?」
「授業さぼってんじゃん」
「あたしはいーの。羽稀はダメっ」
「…なんじゃそりゃっ。むちゃくちゃだなー…つーかさっきから呼び捨てすんなよ」
「あっ。…ばれた?ごめん、ごめん。ほんの悪戯のつもりだったんだけど」
沙織の髪は風に吹かれて、さらさらと揺れていた。彼女の髪は、動きやすいように短く切ってあるけど、光りを帯びるとキラキラと輝いて、すごく綺麗だった。
(男っぽいとは言っても、こうして見ると藤峰もやっぱ女の子だな…)
「何?あたしの顔じろじろ見て…」
「別にじろじろは見てないけど…」
その場に微妙な雰囲気が流れたような気がしたが、沙織はそんな事はおかまいなしだった。
「俺に惚れんなよっ!」
「惚れねーよっ!!」
「冗談、冗談っ!」
沙織はそう言いながらククッと小鳥がさえずるように笑った。
「あーあ、藤峰も完璧サボリ組じゃん」
「樋口もだろっ」
そう言いながら沙織は羽稀の背中をポンッと叩いた。
「あ〜あ、こんな2ショット藤峰ファンに目撃されたら、俺殺されるな〜…」
「何だよ、それ」
彼女は羽稀の言った事が何故かおかしかったらしく、お腹を抱えて笑いはじめた。
「だって藤峰さー、陸上部の後輩とかいろいろファンいるだろ?藤峰ファンクラブだってあるらしいしさ」
羽稀が手短に理由を述べても彼女はそんなことはおかまいなしにずっと笑っていた。
「アハハハッ!!樋口ってば、おっかしーっ…!!」
(バシッ!)
「笑いすぎだからっ!!」
笑いが止まらなくなった彼女に、羽稀は冷静にツッコミを入れてあげた。
「ごめん、ごめんっ…。ファンクラブねぇ。でもさぁ、どっちかっていうと私の方が死亡率高いと思うんだけど」
「は?なんで?」
「樋口知らないの?!あんたってばあたしなんかよりもよっぽど沢山、ファンが居るんだよ?」
「そんなのありえねーだろっ?!」
「まじで知らないんだぁ…。クールで硬派な所がかっこいい!!…らしいよ?」
「や、『らしいよ』って言われても…。つーか俺ってクールかぁ?!」
「そこは否定すんなって!どっからどう見ても樋口はクールでしょ。あとねぇ、バスケ部のエースで運動神経はいいし、頭もいいし、それでいて気取ったとこがなくて素敵ー!!…だって」
沙織はわざとらしく、芝居がかった口調で言った。
「『だって』って…。一体誰が言ってるんだか…」
(頭がいいっていうのは、茗と図書館で勉強してたからかなぁ…)
羽稀はファンクラブの事を知っても、驚きはしたが、嬉しくはなかった。
「告白だって何回かされてるんだろー?」
「まぁ…、それなりに」
「…しかもみんな振ってるんだって?」
羽稀は少しギクッとした。
(そんな事まで知ってんのかよ…)
「あぁ、全員振ったよ。藤峰には関係ない…―」
沙織は急にスクッと立ち上がり、羽稀を真っ直ぐに見た。
「どうして?」
「……好きな人がいるから」
「…その好きな人ってここの高校?」
「違う…けど…」
「ふぅん…」
沙織は意味在り気にそう相槌を打った。
「な…なんで?」
「べっつにぃー」
すると、丁度いいタイミングで授業終わりのチャイムが鳴った。
「ほら、授業終わったよ。教室戻ろっ」
「あ…、あぁ…」
(……?)
「おい!樋口!」
「あ?何?」
数人の男子が突然羽稀を囲むように現れた。
「お前さっきの授業沙織ちゃんと一緒に居ただろ?!」
「へっ?」
おそらく…確実に藤峰ファンクラブの人達だ。
「『へっ?』じゃねーよ!!二人して仲良くサボりたぁ、いい度胸じゃねーか樋口っ」
「誤解だって…っ!!別に藤峰と何があったわけでもないし、たまたま藤峰が俺のとこに来て…っ」
「問答無用!!」
「藤峰ファンクラブをなめるなよ〜…っ!」
「わー!ちょっ・・・たんま、たんま!」
藤峰ファンクラブ一同は羽稀の言葉は完全に無視して、指の関節をポキポキと鳴らしながら、じりじりと羽稀に迫っていった。
「ホントっ!勘違いだからっ!藤峰とは何でもねーってばっ!おい!シカトか?!」
「観念しろ!樋口っ!!」
ファンクラブ一同が羽稀に殴りかかろうとした時…
『ちょっとまった!!』
女子から「ちょっとまったコール」がかかった。たぶん、おそらく、羽稀のファンクラブ軍団だ。
「あんた達!羽稀様に手出したらただじゃおかないからね!!」
「…羽稀様…っておい、おい…」
「な…なんだよぉ。樋口が沙織ちゃん仲良くするから悪いんだろぉ…!」
「沙織も悪くないし羽稀様も悪くない!!悪いのはあんた達っ!」
さすがに女子の前では、藤峰ファンクラブの男子等もたじたじで逃げ腰だった。
「ちょっと、ちょっと!穏やかじゃないなぁ」
『沙織ちゃんっ♪』
「私が樋口の所に行ったんだから、樋口には関係ないよっ」
ファンクラブの奴等に厳しくそう言ったあとに沙織は、羽稀の方を見てにっこり笑った。
「なっ、樋口っ」
「う、うん…」
『はいっ!解散っ』
(女子のこの貫禄はすげぇ…―)
羽稀はもちろんの事、男子の誰もがそう思ったであろう。
その日の放課後は部活があって、男子バスケ部は、グラウンドを使っての外周だった。
「体育館部活たるもの、体力トレーニングを怠ってはいかーん!」
バスケ部の部長は、いわゆる熱血タイプで、二週間に一回はこんな事をいいだして、みんなで陸上部に混じって外周するのだった。
「樋口っ!」
「よぉ、藤峰」
「バスケ部も大変だなぁ、体育館使えるんだろ?」
「あぁ、でも熱血部長だから仕方ねぇしな。いいよ、体力つくから」
「ふーん。あ、やばっ。集合掛かってる!」
「こっちも掛かってるし…っ。じゃぁな」
「…バスケ部ファイト〜!」
羽稀が走ってみんなのところに行こうとした時に沙織は叫んだ。
それに対して羽稀は、振り返らずに、後ろに分かりやすいようにガッツポーズをした。
「あっちー…」
結局バスケ部は一時間半もの間、走りとおしてから解散になった。
「樋口。はい、タオル」
「藤峰か。サンキュー」
羽稀は沙織から清潔そうなタオルを受け取り零れ落ちる汗をふき取った。
「すごい汗だな〜。まぁ、もうすぐ夏だし、当然か」
「藤峰は部活終わったのか?」
「ううん。まだ終わってないけど。もうすぐ終わると思う」
「んじゃ、こんなとこに居ちゃだめじゃんっ」
「いーよ。今休憩だし」
「あ、そ。何でもいいけど」
羽稀は汗を拭き終わると、タオルを首に掛けなおした。
「…あのさ」
「ん?」
「…樋口の好きな人ってだれ…−」
『羽稀――!!』
沙織の声を遮るように羽稀の名を呼ぶ声が突然聞こえた。羽稀はその声の持ち主を探そうとして、グラウンドに素早く目を走らせたが、それよりも早く、羽稀の背中に誰かが飛びついた。
「わっ!」
そのまま前のめりになって倒れそうになりながらもなんとか支えきり、羽稀は後ろを振り返った。三年前の笑顔が甦る。
「羽稀!!会いたかったっ!!」
「茗っ!!!!」
そこには、三年前よりも少し背と髪が伸びたけれど、笑顔だけは全く変わらない茗の姿があった。
『僕等』の方では登場人物が羽稀と茗の二人だけだったので、今回はもうちょっと出そうかなぁと思い、とりあえずクラスメイトの紗織を出してみましたが、新しいキャラを受け入れてもらえるかが心配ですね(笑)まだまだ、出すつもりなのでお楽しみにっ♪登場人物がひととおりでたらまたプロフ書くつもりでーす☆では次話もよろしくお願いしますっ! ふろむ すもも