第一章 コンビニの夜
はじめましてこんにちは、おいなりです。
生まれて初めて小説を書きました。
願わくば、誰かの心に届きますように。
俺の名前は桐島 蓮。
天才だったとは思わない。
ただ、人並み以上に負けず嫌いだった。
小学三年の頃、父に連れられて入った空手道場。
最初の一年は同学年の子に勝てなかった。
悔しかった。
練習した。
勝てるようになった。
高校二年の全国大会で優勝した時の高揚感は、今でも覚えている。
気づけば空手三段、柔術二段。
ただ、積み上げ続けてるうちに、一つの疑問が頭をもたげてきた。
俺はこの上なぜ強くなりたいのだろう。
更なる名誉が欲しいのか。
より強い相手を倒す快感のためか。
多分、それは違う気がした。では何なのか。
大会で優勝した翌日。
社会人の黒帯相手にボロボロになるまで組み手を繰り返しながら考えたが、答えは出なかった。
そんな答えの出ない問いを抱えたままでも、道場の匂い…汗と木の床板と畳の匂いが入り混じった中にいる時間は、純粋に好きだった。
その日々の意味が、こんな形で試されるとは思いもしなかったが。
第一章 コンビニの夜
七月の夜は、じっとりと熱を帯びていた。
アルバイトを終えた帰り道、俺の足は自然と幹線道路沿いのコンビニへ向かっていた。
理由は自分でも分かっていた。
自動ドアが開いた瞬間、店内に差し込む蛍光灯の白い光の中に、彼女がいた。
日向 さくら(ひなた さくら)。
幼稚園からずっと隣にいた幼馴染。
笑うと少し前歯が見える癖。
雨の日だけ気分が上がるという変わった性質。
俺の道着姿を見て「なんか強そうだね」と言って、無邪気に微笑んだ。
その頃から、彼女は俺にとって特別な存在だった。
「あ、蓮くん。いらっしゃいませ」
彼女は少し照れたように言って、また伝票の整理に戻った。
俺はコンビニの奥で飲み物を一本取って、彼女の横顔をちらりと見た。
そしてレジ向かいのスナック菓子の陳列棚の間を歩き、さくらの元に向かおうとしたその時、自動ドアが再び開いた。
入ってきた男は、最初から空気が違った。
フードを目深に被り、右手をジャケットの内側に差し込んだまま、視線だけが爛々と店内を舐め回している。
「動くな」
男の声は震えていた。
恐怖か、興奮か、あるいはその両方か。
右手が翻ると、刃渡り二十センチほどのサバイバルナイフが蛍光灯の光を反射した。
「レジ、全部出せ。袋に入れろ。さっさとしろ」
さくらは声も出なかった。
カウンターの向こう側で、ただ立ち尽くしていた。
白い指先が、かすかに震えている。
さくらを守らなければいけない。
緊張で冷たい汗が吹き出たが、道場で何千回と繰り返した鍛錬が、俺の鼓動と呼吸を自然に整える。
敵の体重、重心、利き手、次の動作。
身体が情報を処理していく。
男はカウンターに乗り出し、次の瞬間、ナイフがさくらの腕を薙いだ。
「っ……!」
さくらの白い腕に、赤い線が走った。
致命傷じゃない。
それでも、赤いものが滲んで、カウンターに激しく滴り落ちた。
俺の中で、何かが弾け、思考が一瞬で燃え上がった。
心より体が先に動いていた。
距離にして約3メートル。
だが俺にとってはたった二歩。
一瞬で間合いを詰めた俺は、暴漢の手首を取り、肘と肩の関節を極め、体重を乗せて——そのまま頭部を床に叩きつけた。
大きな鈍い音がした。
男は動かなくなった。
俺は肩で息をしながら、さくらを見た。
さくらも俺を見ていた。
守られた安堵の顔ではなかった。
そこにあったのは、殺人者となった俺に対する怯えの顔だった。
読んでいただきありがとうございました。
果たして桐島蓮くんはどうなってしまうのでしょう。
少し暗い導入になってしまいましたが、それだけの物語にはなりませんのでご安心ください。
ご意見ご感想ご要望、お待ちしています。
全てを取り入れることは出来ないかも知れませんが、真摯に受け止めさせていただきます。




