小さいのもお好きということで?
ひっひっふー
背中を強打して、呼吸がもどらん。
もう一度、
ひっひっふー
なんか違う。
皆実は私にまたがったまま、ゆすり続ける。
「分かる? わたしのこと分かる?」
ひっひっふー
「一馬!? 返事して!」
息が出来たらな。
ふーーーーー。
何とか呼吸を取り戻した私は皆実の問いに答える。
「当たり前だ。妻の顔を忘れるか」
「うわあ! うれしい! わたしだけじゃないんだね! 一馬! 一馬! 会えるとは思わなかったよ!」
そう言うと皆実は私に覆いかぶさる。
「うれしい! 一馬がいる! 嬉しい! 一馬がいるならもうちょっと自重すればよかった! でも嬉しい! 嬉しいよー!」
と叫ぶと、皆実は大泣きし始めてしまった。
お尻を突き出した変な体勢で転がっている男。
鼻血を吹き出しながら倒れている男。
両耳の耳たぶが裂け、血を流しながら「耳がー! 耳がー!」と半狂乱な男。
そして関節を外されうずくまっている男。
その真ん中で美少女中学生に馬乗りされ、大泣きで抱きつかれている男。
どういう光景なんだ、いったい。
泣き止んだ皆実に話しかける。
「向こうの記憶はあるのか?」
「あるよー。超あるよー」
「いつ戻った?」
「今日!」
「私と同じか」
「一馬、中学生なの?」
私の腕やら肩をべたべた触る。
「おっきいねえ! 高校生だとおもってたよ!」
「お前はちっこいな」
「そうなのー。おっぱい小さくてビックリしちゃった!私はこれから成長期なんだよね!」
当時の皆実はつい二週間前までは小学生だったんだよね。
「てか、おっぱいとか大声で言うな」
「えー!だって一馬わたしのおっぱい超好きじゃん!」
校門の前なので通学する生徒達が、みんなしてこちらを見る。
おっぱいは好きだが、世間様におっぱい好きと認定されるのは、なんか納得いかない。
「まずおっぱいの連呼止めてくれ」
「小さいのはお好きでない?」
「そうではない」
「小さいのもお好きということで?」
「そういうことでもないぞ」
遠くの方から騒動を聞きつけた先生方の走る足音が聞こえてくる。




