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【幕間 走馬灯の夢④】娘とおさんぽ

「パパはさ、ママが言うカレーって食べたことあるの?」


皆実だと思っていたら、いつの間にか娘のミリネに代わっていた。


風景は当時領主をしていた地方領の城下町。


他国との戦争は続いていたが、国内情勢は安定していた頃である。


王国が領土を広げるとともに国内景気は良くなっていた。


元々辺鄙な場所の領地であったが、近代的な領地経営手法を取り入れることで、少しずつ街も発展していった頃だ。


隣国との戦争も勝利し、物流の発展を促すために織田信長に習って関所を排したら効果はてきめんだった。


そして、皆実の存在が恐ろしいのか、この城下町は王国一の治安の良さと言われていた。


治安がよければ、商人も安心して来るし、和睦を結んだ隣国からも、文化が違う我が領地に観光で訪れることも増えた。


経済発展は治安とセットなんだと学んだ頃だった。


一応領主ではあるが、元々小市民だし偉そうにするのは好きではないので、視察という名目で頻繁に街を歩いていた。


最初は遠巻きにされていたが、あまりにも頻繁なので今となっては景色の一つくらいの扱いである。


ミリネは私と皆実の三番目の子供で初めての女の子だった。


正直、娘というのを舐めていたな。


こんなに可愛いとは思わなかったよ。


皆実よりも私に似ているというのが周囲の評価である。


私自身も、母親がダメ母ではあったが、顔の良さはお墨付きなので、そうそう悲観的になることでもなかった。


上の二人の兄が皆実に似ているので、それはそれで可愛いが、自分に似ている娘というのは、これまた格別なものである。


ただ、あんまり可愛がると皆実が妬くので、こうして皆実のいないところで甘やかしている。


「もちろん。大好物だったなあ」


「あたしも食べたーい」


「そうだな。作り方はなんとなく知っているから、あとは材料だな」


カレーは日本でも良く食べたが、せいぜいルーを溶かすくらいだった。


だが、もしこちらにもインドのような土地があれば、香辛料を活かした料理が発達しているだろうから、それを参考にすれば良いかもしれない。


「王都にいけば売ってる?」


この頃、私達がいた領地は王都とは馬でも一週間、馬車では半月はかかる。


日本の距離にすれば、東京~青森くらいはあるだろう。


もちろん、街道は整備されているが、それでも毎日長時間馬車に揺られる旅路はきつい。


特にお尻が痛くなる。


これはマジで痔になるくらいだ。


この頃、旅をする人達の多くが痔に悩まされていたものである。


一応、現代知識を使ってサスペンションみたいなものを提供していたが、日本のように舗装されているわけではなく、きついにはきつい。


ちなみに、サスペンションを採用した馬車は飛ぶように売れ、そのパテント契約料で我が領地は豊かにはなっていた。


ただ、幼いミリネがその旅路に耐えられるかというと無理だろうな。


私は数回しか行ったことがない王都の街を思い浮かべる。


だが、あの独特な香りの香辛料を嗅いだことはなかった。


「どうかなあ?」


私は曖昧に首をかしげる。


「王都に行ってみたいな。オシャレな服もいっぱいあるんでしょう?」


ミリネは楽しそうに、ぶんぶんと繋いだ手を振る。



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