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【幕間 走馬灯の夢②】成長した皆実と私の仕事

「一馬! 行くよ!」


え?

と思って皆実を見る。


夢は次の場面へと移っていた。


幼かったはずの皆実が錆の浮いた防具に身を包み、ギラギラした目で前方をみつめている。


成長した皆実は美しく、そして強くなった。


私と皆実を拾った傭兵団は、主にカーナ王国に雇われ、国境を警備していた。


ガルナダ峡谷という岩山に囲まれた地域だった。


皆実の見つめる先には、難攻不落と言われたジャグラル帝国の砦が立ちはだかる。


周りを見回すと、マルコ団長や親友のジョナなど、仲間たちが唖然とした表情で皆実を見ている。


「いやまてまてまてまて! 何訳わからんこと言ってる! 全然戦力足りてないから!」


私は夢だという自覚があるが、必死に皆実を押しとどめる。


「一馬の言うとおりだ。あの砦は200年以上も落とせなかったのに、この戦力で落とせるはずがない。援軍を待った方がいい」


いつも冷静な参謀のミーニャですら、珍しく焦ったように早口で言う。


「だからなんなの!? あそこに! 腐ったチン〇野郎が! のうのうと息してんだよ! 酸素がもったいないだろうが!」


皆実は髪を振り乱し、絶叫する。


狂っているとしか思えない。


私達は顔を見合わせる。


こいつに死の恐怖はないのだろうか。


「わたしはね! ロリペドが一回でも息しているのが許せないの!」


そうだった。


皆実はロリコン、いやロリペドをみたら理性も何もかも捨て去って、ただひたすら殺戮することしか考えないのだった。


事の発端は、帝国軍が王国のかく乱を狙って侵入したことである。


いくつかある帝国との国境線の中でも、最もトラブルが多いのがここガルナダ峡谷だった。


その理由の一つが峡谷にある帝国の砦だった。


峡谷の地形を利用した堅牢な砦は難攻不落として有名だった。


この砦があるため、帝国軍は一方的に攻撃し王国の反撃があれば、砦に引き返すという戦法を繰り返していた。


砦に逃げ込まれてしまえば、こちら側は近づけば嵐のような矢と投石を受けるだけである。


忌々しいにもほどがある。


今回は大規模な侵攻が別の方向からあり、私達はそちらの支援に向かっていた。


その隙をみて帝国兵が王国に侵入した。


そして、王国の村々を襲い、食糧を奪い、少女を含む女性達を蹂躙した。


その報を聞いた皆実は、あっという間に馬を返して被害のあった村に向かった。


私達は王国の傭兵という立場上、許可なく兵を動かせない。


その許可を得る為、王国の騎士団と会談したが、最初は難色を示された。


「皆実が単騎で向かった」


というと、騎士団長は真っ青な顔になって

「早く行きたまえ!」

と許可をくれた。


ああ。皆実が怖いんだろうなあと思ったものだ。


皆実を追って村に辿り着いたとき、そこには帝国兵の死屍累々たる有様が広がっていた。


殺し損ねた兵もいるらしく、私達は皆実と合流して帝国兵を追いかけていったが、砦に逃げ込まれてしまった。


皆実にしてみれば、少女に欲情する連中は一人残らず殺しつくさなければ気が済まないのだろう。


とはいえ今、あの砦に突撃すれば全滅は間違いない。


皆実が行けば、みんなも行かざるを得なくなる。


みんなを死地に送り込むわけにはいかない。


「一馬! 行くよ!」


私は必死に留める。


気分は暴れる馬を宥める競馬のジョッキーだ。


あのテックトックで見た馬はなんと言ったか。


ゴールドシップだったけかな。


あんな馬みたいな感じ。



皆実がこのような性格だと分かったのはいつごろからだろう。


皆実は戦闘センスが抜群だった。


こちらの世界の平均身長は大体男性が150cm、女性が130cmである。


栄養状態も悪いし、幼いころから重労働させられていたせいもある。


だが、成長した私は180cmを超え190cmに近く、皆実も170cm以上あった。


この体格と、この当時世界最強といわれた師匠の元、

厳しい修業の末に会得した武術のおかげで、

私と皆実は他を圧倒する強さを身に付けた。


前の世界で男達に尊厳を踏みにじられ、男を激しく憎悪していた皆実。


それは自分の弱さのせいだと思い込んでいた。


強くなれば、男に負けなければ二度と踏みにじられない、と信じていた。


そして男に力でも負けない、と分かった頃から皆実は演技を止めたと思う。


この頃の皆実は強さに酔っていたようにも思える。


皆実は私を振り切ろうとするが、こっちも必死である。


「わかった! わかったからちょっと待て! 私が何とか考えるから!」


その言葉に皆実の表情はクルリと変わる。


急にニコッと微笑み、

「よろぴく?」

と可愛く小首をかしげた。


またヤラれた、と思ったな。


天才子役に騙された。


多分、私を動かす為に狂気を”憑依”させていたのだろう。


この頃、私はただひたすら、突進する皆実をサポートし続けていた記憶しかない。


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