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【幕間 走馬灯の夢①】転移二年後の心象

「お兄、おなか空いた」


皆実が手を繋ぎながら私を仰ぎ見る。


その皆実を見ながら何となく、これは夢なんだなと自覚があった。


まだ皆実が13、4歳の頃だな。


私と皆実が異世界に転移して二年後くらいである。


この頃の皆実は、血縁のない私を何故かお兄と呼んでいた。


後にその呼び名の裏に隠された真実を知り、私が愕然とするのはもっと先の話だ。


「もう少しでみんなのところに戻れるからな。そしたら夕ご飯だ」


私は岩石が散らばる足元を見ながら皆実を励ます。


私と皆実は運良く、異世界で飢え死にする前に傭兵団に拾われた。


傭兵団の一員として雑務や見張りなどをしていた頃である。


この時も見張りを交代して、傭兵団の屯所に戻る時だったと思う。


「あーん。ハンバーグ食べたーい」


皆実は甘えるように言う。


この頃の皆実は年齢よりも幼い言動が多かった。


なぜかこの世界ではヒト種の成長は遅くなり、寿命は倍以上になる。


それもあり、私は皆実と出会った頃と変わりがない少女のままだと思い込んでいた。

庇護欲にかられて、本当の妹のようにかわいがっていた。


皆実の心の闇に気づいていなかった。


皆実は自分を守る為に”守られる存在”を演じていた。


それを見抜けなかった。


自分の耳に対する過信もあったと思う。


私の耳は常人を超える能力がある。


一度聴いた音は忘れない。


そして常人が聞き取れない音の差異を拾えてしまう。


その能力のおかげで異世界の言葉もすぐ覚えてしまったという利点はある


反面、相手の感情を音で見分けることが出来てしまう。


当然、自分に対しての悪い感情も把握できてまう。


それで随分と人と接するのを怖がっていたものだ。


その能力は人のウソも見抜けてしまう。


だから皆実の言葉にウソがあれば、分かると思い込んでいた。


皆実は前の世界では天才子役として有名だった。


後に本人曰く

人格を切り替える

ということをしていたらしい。


つまり、その人格になりきっているから、私には判別できなかったのだ。


それに私はまったく気づかず、必死に守ろうとしていた。




「日本だったら、安くて旨いハンバーグがいくらでも食べられたのにな」


少し高くなっている場所に私は先に登り、皆実を引き上げる。


「ひゃっ!」

と言いながら私に抱き着く。


私は皆実を抱きしめながら

「はい。後はもう平坦だからね。頑張ろう」

と声をかける。


「えへへ」


皆実は甘えて私の首に巻き付いたままだ。


「重いぞ。歩けん」


「軽いもん」


皆実はふくれっつらをしながら、私から離れる。


突然の異世界への転移。


チートどころか魔法も何もない、単に圧倒的に遅れた文明に放り出された。


命がとても軽い世界だった。


なぜ私と皆実だったのだろう?


前の世界ではなんの接点もなかった二人である。


後に皆実は

「救われるためだったのかもしれないわね」

と言った。


だが、この時期は生き残るのに必死であった。


「お兄は日本に戻れたら何を食べたい?」


「そりゃ、カレーだよ」


「カレー! 皆実も食べたい!」


跳ねるよう私に寄りかかる皆実を可愛く思い、頭を撫でる。


皆実は嬉しそうに腕を組んできた。


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