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戦争っていうのは国と国の紛争です

私は皆実を信じる。


私が動き出す。


花咲がカウンターを狙う。


その瞬間、バンッと船の全ての電源が落ちる。


LEDのライトが消え、真っ暗闇になる。


推進力を失った船は慣性の法則が適用され大きく揺れる。


花咲の身体が大きく揺れるのが見えた。


私の目は暗闇にある程度順応していた。


だから見える。


そして異世界武術の真骨頂である体軸バランス。


私の身体は微動だにしない。


船に据え付けられている手すりや柱と同じように床に張り付いている。


暗闇で見えない花咲は、闇雲にパンチとキックを放つ。


だが、それが私に当たることはない。


狙いすまして、花咲の顎を掌底で打ちぬく。


暗闇の中、花咲が倒れる音がする。


私はその花咲の身体を飛び越え、締め技に入る。


数秒後、花咲は意識を失った。




「お前は真っ当に戦えないのかよ」


並木は心底軽蔑した表情で私をみる。


「私、弱いんですよ。今度から皆実に喧嘩売ってください。私の数倍強いですから」


「ふふ。参りましたね。あんな決着になるとは」


花咲はまだ顎が痛むのか、さする仕草をしながら笑う。


決着の後、皆実が操舵室から

「あれえー、電気の付け方わかんなーい」

と、困り果てた声が聞こえたので、慌てて花咲に活を入れて意識を取り戻させた。


花咲は大してダメージはないようで、すぐに操舵室に戻り、電源を回復させた。


私達は、再びキャビンの中のソファーに座っている。


私は皆実に事情を説明し、花咲が仲間になったことを伝えた。


「なーんか一馬ってそうやって、どんどん仲間増やすんだよねー」


なぜか皆実は不満そうだ。


「お前が騒動を大きくするから、味方が必要なんだよ」


「ま、まあ、わたしの為なら仕方ないわね」


ツンデレみたい台詞を言う。



私は並木と花咲を交互にみる。


「私達が何者か、ですよね。荒唐無稽だけどあり得なくもない嘘と、荒唐無稽で到底信じられない本当の話とどっちが聞きたいですか?」


「本当の話だ。お前らが到底信じられない存在なのはもうわかっている」


並木が顔をしかめながら言う。


私は異世界の出来事を包み隠さず語る。


並木も花咲も意外にも聴き入っている。


「と、まあ私は165歳で死んだんです。皆実は200歳まで生きたらしいんだけど」


その言葉を聞いた皆実は私の手を握る。


「あなたが死んだときは、本当に悲しかったのよ」


中学生の皆実がなぜか年老いた皆実にみえる。


私もその頃の気持ちに戻る。


「すまんな。どうも心臓がダメだったみたいだ。当時は、麻酔は開発されていたが、人工心肺もカテーテルもないから、どうしようもなかったんだな」


当時、私達の曖昧な知識を元に、市民たちが様々な技術を開発していた。


銃などの兵器もそうだが、医療技術なども大きく進んでいった。


だが、私が死ぬ頃はこちらでいうところの、20世紀初頭程度の文明だった。


こちらの文明は電気が重要な役割を果たしている。


だが、私も皆実も電気関係の話は、多少は知っていたが、それがどのような原理でこちらのような文明に繋がったのか、いまいち分かっていなかった。


あれ?

そういや、麻酔……。


「皆実、私って最後どうなったんだっけ? 私が苦しんでいるから麻酔で眠らせようみたいな話が耳に残っているだが?」


「そうよ。胸をかきむしるくらい苦しそうだから、麻酔で楽にしてあげようって話になったの。麻酔が入った直後にみんなに看取られながら亡くなったわ。お医者様も脈を採って亡くなったことを確認した。でも、私はどうしても信じられなくて二人きりにしてもらったの。そしたら、あなたは意識を取り戻したのよ。驚いたわ。でも心臓も動いていないし、脈もない。ああ、これは最後のお別れなんだなって分かっていたの。わたしとあなただけの最後の時間がもらえたのだ、と思ったわ」


皆実はその時を思い出したのか、美しい瞳から涙がとめどもなく流れ出る。


あの最後の記憶は、そんな状況だったのかと驚く。


「また会えてうれしい」


皆実は私の胸で泣く。


「信じられんが、信じるしかないな」


並木は唸るように呟く。


「あの作戦実行能力、武術、拳銃捌きと知識、そして老獪さ。とても中学生のものではありません。確かに荒唐無稽ですが、理解できる話です」

と花咲もうなずく。


「というわけで、皆実が動いたので戦争になります」


「戦争ってのは、茂木の組織とのことか?」


並木の疑問に、

「違います。戦争っていうのは国と国の紛争です」

と私はきっぱりと答える。


「国と国……。まさか。いや……」


並木は、先ほど出てきた中国共産党の話が頭に浮かんだのだろう。


戸惑いの表情を浮かべる。


「ははは。これは愉快だ。自衛隊で日本の為に死のうと覚悟していたのに、中国の走狗とならざるを得なかった私には非常に痛快です。ぜひ、勝ちましょう」


花咲は膝を叩いて笑う。


出会った頃の笑みとは全く違う豪快なものだった。


船は港を出て、3時間になる。


あと2時間で敵地に到着する見込みだ。


私達は決戦に向けて戦略を立てる話し合いを始めた。



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