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こんなにショボいヤツだったっけか

皆実は私と同じ中学に入学したばかりのはずだ。


皆実とは、こちらの世界の話はほとんどしなかった。


私もそうだが、こちらの世界は彼女にとって辛いものだった。


ではなぜ皆実を知っていたかと言うと、この界隈では超有名人だからだ。


同じ地域に住んでおり、時折地蔵商店街などで買い物をしている姿が目撃され、

クラスの女子が盛り上がったりしていた。


皆実の母親は元モデルで、そこそこ名の知られた芸能人だった。

その芸能人の娘として子役デビューし、誰もが知っているドラマなどで活躍していたのが皆実だった。


小学校までは芸能人御用達の私立に通っていたはずである。


ところが去年くらいから、何度か体調不良などの理由でドラマを降板するなどした後に、

芸能活動を休止すると発表されていた。


皆実は私立から、私の通う公立中学に進路を変更したようで、

一昨日の入学式ではみんなの注目を集めていたらしいと、

入学式に参加した吹奏楽部員が話していた記憶もある。


当時は、近所に住んでいたが、皆実とは直接の面識はない。


私も遠くから何度かみかけたことがある程度だ。


だが、なんとも不思議な存在であった。


世の中にはこんなに整った顔があるのか、と驚いたものだ。


しかもやたら顔が小さい。


あれだけキレイな小顔の小学生がいたら、それは吸い寄せられるように見てしまう。


芸能人、半端ないな

という感想しか出ない。


一生縁なんかないだろうな、と思っていたら異世界で傍にいたので驚いたものだ。


だが私は驚きを隠して、あたかも知らないふりをした。


なぜって?


それが思春期だからだな。


ミーハーだと思われるのが嫌だったんだよ。


ただ幸いにも、それが彼女の警戒心を解いたのか、すぐに頼ってくれるようになった。


私にとっては150年の記憶があるが、こちらの人にしてみれば昨日と同じ今日である。


友達とどんな会話していただろう?

あれ?

友達いたっけか?

うーん。


小学校からの持ち上がりだから、なんとなく覚えているヤツはいるにはいる。


でも自分の席の位置どころかクラスも覚えちゃいない。


異世界に転移したのは中学三年になったばかりの始業式の翌日だった。


まあ別に通うつもりもないからどうでもいいか。


皆実に会えれば、もう用はない。


だが、この頃の皆実は相当に病んでいた。


学校に来ているかは分からない。


それに、よくよく考えれば客観的かつ科学的には、単なる私の一夜の夢に過ぎない。


皆実が異世界の記憶があるとは限らない。

顔を合わせてみて、どういう反応なのか見てみたいと思う。



無視されたら?


まあ、それはそれで、もう違う皆実だと思うしかないだろう。


しつこく聞いたらアタオカなストーカー事案になるからな。



学校に近づくにつれ、生徒の数が増えていく。


校門を通ると、なんか見覚えがある連中を見つけた。


制服を着崩し、茶髪だったりピアスだらけだったりと、如何にも不良的ないでたちである。


スキンヘッドの男はウンコ座りしながら、竹刀を担いでいる。


私を見つけると、茶髪が近づいてくる。


「おい」

と声を掛けられる。


その声で思い出した。


いや、忘れたことはないのだが、異世界が忙しすぎてすっかり思い出すのを忘れていた。


忘れたままで良かったのに、どうにも私の耳は困りものだ。


音に付随して色々な記憶が蘇る。


声の主は、小学校の頃から私をしつこくイジメていた松田だ。


ただ、違和感がある。


あれ?

こんなにショボいヤツだったっけか……。

異世界じゃ、そこらの破落戸と変わらないなあ。


あ。


こっちでもそこらの破落戸かあ。


当時は憎くて憎くて、殺したくて仕方ないヤツだった。


だが、喧嘩が強く、気弱な私は虐められても反抗できなかった。


どうやって殺すかと考えた挙句、やたらガンマニアになってしまったりした。


高校生になったらアルバイトで稼いで3Dプリンターを買って、銃を密造し、いつか撃ち殺してやろうと考えていた。


我ながら短絡的だな。


でも、それほどに苦しめられた存在ではある。


それが、こんな小者だったとはねえ。


松田はニヤニヤしながら、私の肩をドンと突く。


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