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この"戦場"では倒れたら負け

異世界武術は基本的には戦争を含む戦闘を念頭に開発されたものである。


戦争ばかりなのだから、当たり前である。


1対1の格闘など、平和な時代の娯楽に過ぎない。


そして、異世界に限らず戦闘は、基本的には平らな場所で行われない。


しかも転移当時は、随分と文明が遅れていた。


靴のようなものは、当時は希少で傭兵の私達は草履が主体である。


戦場が綺麗に舗装されていることなんてあり得ない。


平坦ではない場所に石や岩がゴロゴロしていた。


さらには、国境近くの峡谷の岩石は、

不思議なことに雨が降るとやたら滑るのだ。


アレは何という種類の岩石なんだろうか。


こちらでも機会があれば探してみたい。


温暖な気候で雪は降らなかったが、雨は多かった。


そして足元には滑る岩石だらけ。


私の師匠は、この滑る岩石で修業することを目的に国境に居を構えていた。


だから、私と皆実は長きに渡って師事できたわけだ。


その不安定な足場でも十全な力を発揮できるように編み出されたものだった。


真に戦闘の為に突き詰められた武術であった。


この師匠をして、史上最高の才能と言わしめたのが皆実である。


皆実は、晩年には王国最高師範と崇められ多くの門徒を指導していた。


「ありゃ?」


皆実がすっとんきょうな声を上げる。


そりゃそうだ。


向こうの慣れた体ではない。


まだ自分の体に慣れていないのだろう。


バランスを崩して無防備な体勢になる。



そこに男たちが殺到する。

仕方ない。

愛する妻のピンチくらいは駆けつけねば。



手近な酒瓶を左手で掴み、皆実に一番近い男に投げつける。


鼻っ柱に命中。


うずくまる。


空いている右手でグラスを、背後を見せている男に投げる。


グラスとは言え、底が分厚い重いヤツ。


鈍い音で後頭部に命中。


後頭部の激痛に驚いた男がバランスを崩して吹っ飛んでいく。


その先に皆実に殴りかかろうとした男がいて、激突。


二人とももんどり打って倒れこむ。


グエーだかギエーだか悲鳴が響く。


この"戦場"では倒れたら負け。


なぜなら、私がさっきバラまいた酒瓶やグラスの破片が散らばっている。


異世界では若い頃はまだ強くなくて、戦闘では石投げが主体だった。


傭兵団は高い位置に屯所を構えていた。


敵が侵攻してきた時、強いものは戦っていたが、

私達下っ端は集めた石を次々と投げていた。


当時、投石は十分に有効な攻撃だった。


致命傷にはならないが、当たればかなりのダメージである。


それも顔に当たれば相当なものだ。


ただ、コントロールが悪く味方に当たったりすると後でメチャメチャ殴られた。


なので、私達下っ端は日ごろから、如何に早く的確に石を投げられるかを訓練させられたものである。


まあ、それが役に立ったのかな。


私は手あたり次第、落ちているものを投げ続ける。


こちらは攻撃される危険がないし当たった方は、

ダメージは大したことなくても、うっとおしいことこの上ないだろう。


こういうのがいいね。

楽だし。


荒事が嫌いな私にはぴったりのお仕事。


皆実は、なんであんなに前に出て戦うのが好きなんかねえ。


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