あのね、本気にしないでね?
「ねえねえ。わたし、17歳くらいで子供産みたいな」
「早いな」
「だってえ……」
少し唇を尖らせて上目遣いで私をみる。
「わたし、17歳くらいの時が一番キレイだったんだよー? ミーニャなんて女神様みたいだねって、おっぱい超触ってくるんだよ?」
それは要らない情報である。
尚、ミーニャとは傭兵団長の奥さん兼参謀をやっていた女性のことだ。
頭の回転がめっさ速く、肝っ玉母さんみたいな感じで、私達の親代わりをしてくれていたものだ。
「なのにさー、全然一馬来てくれなんだもん」
「お前が私を遠ざけていたんだろうが」
「だってー」
皆実はしゅんとする。
あの頃、皆実は私から離れようとしていた。
私の親友のジョナに近づいたりしていたな。
まあ、ジョナは私に相談してきたから知っているのだが。
「なんなのあのミナミの態度。超怖いんだけど」
ジョナがビビっていたことは、秘密にしておいた方がよかろう。
何かの拍子で皆実が異世界に戻ったら、ジョナの命が危うい。
あと、やたらリーシャとくっつけようとしていたなあ。
まあ、リーシャも胸が大きくて私の好みだったのは確かだけど、こちらもこっそり言われたよ。
「あのね、本気にしないでね? 私、ミナミに脅されて仕方なくてね?」
何やってんだか、あの女は……。
私は付き合うつもりもないリーシャにフラれるという、尊い犠牲を払うことになってしまった。
なんで皆実は、男のガラスのハートを粉々にするようなことをするんだろうと悲しく思ったものである。
余談だが、ジョナとリーシャは皆実の被害者の会みたいな感じで、相談し合っているうちに、くっついてしまったで、私の犠牲も無駄にならずに済んだ。
当時は、傭兵団全体が私と皆実はくっつくもんだと思って遠巻きにみているのに、なんだか皆実は一人で空回りしていたな。
その後、見かねたミーニャに説得され、全てを明かしてくれた。
当時の皆実は、自分が汚れていることを恥じていたのだという。
私にはふさわしくないと、あえて離れようとしていたのだ。
私からすれば、皆実の母親とロリペドどもに対する怒りは大きかったが、
皆実に対して思うところは何もなかった。
それよりも、嫌われていなかったことに心底ほっとしたものである。
そうして皆実と結ばれたのが、こちらの年齢で言うところの20歳くらいで、初出産が21歳くらいかな。
こちらの世界では早いと言われそうだが、異世界では超晩婚である。
異世界では成長が遅いから、向こうの年齢では30歳を超えていたからな。
「わたし、あの17歳のわたしのおっぱいをね、一馬にいいいっぱい味わって欲しいの!」
私は皆実の頭をはたく。
「何言ってんだ、お前は」
「んもう。ノリが悪いなあ」
私は皆実の頭をワシャワシャする。
「なに? なに?」
「心配するな。私は今のお前には一ミリも発情していないから。匂いでも分かるだろう?」
「……なんで……」
「お前なあ。私が声のトーンで嘘を見抜けることを忘れているな?」
皆実は俯く。
膝にぽたぽたと涙が落ちる。
17歳うんぬんは、その頃までは身体を求めないで欲しいという気持ちから出た話題なのだろう。
それほどに、今の幼い自分に発情する人間を恐れている。
皆実は少女に発情する人間を激しく憎悪している。
それが愛すべき旦那なら最悪である。
もし私がそんな男なら、皆実は精神を崩壊させてしまうだろう。
それを恐れている。
傷は癒せても、それは完全になくなったことにはならない。
傷跡は残り続ける。
深い傷跡はちょっとしたことで疼き、痛みがフラッシュバックする。
「皆実。その傷の痛みはお前だけのものじゃないんだよ。私もちゃんとわかっている。大丈夫。安心して私と一緒にいような」
私は、皆実の頭を愛おしく撫でる。
「ふえええええん」
今度は子供のように皆実は泣いた。




