表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

やまのじじ

文章を書く練習を兼ねて書きました

やまのじじ



僕がまだ小学生の頃、Y県にある小さい島の漁村の田舎の分校に通っていた。


島には観光客もほぼ来ない


何も無い村だった。


島にはあるウワサがあった。


「山のてっぺんの山小屋には近づくな」


これは島に住むものは全員知っていた。


通称「じじのいえ」


だけど俺は、夏休みの今、同じ学校に通ってる「ごん」と、「山田」と俺の3人で探検に行くことにしたのだ。


ジージーと朝からセミが鳴いている。


お母さんには友達と遊んでくると言って、水筒を持たされて待ち合わせ場所へ急いだ。


山田もごんも既に先に来ていた。


「おせーぞ!」


そうからかってきた二人の手には、水筒と、そこら辺で拾った「感じの良い枝」が握られていた。


「あっずりーおーれも!!」


おれはじじのいえに行くまでに

アイツらよりもいい感じの棒を探すことにした。


「じじいなんて、俺がこの伝説の勇者の剣で退治してやる!!」

とかなんとか。


そうこうしているうちに、道という道がなくなってしまった。


そんなに大きな山でもないので

子供でも10分もあれば登れるはずなのだが。


自分の背丈よりも高い草むらを掻き分け上へと目指す。


あんなにいい天気だったのに

霧のようなモヤがかかって1m先も見えなくなった。


さっきまであんなにうるさかった蝉の声ひとつしない。


さっきまではしゃいでいたのに

いつの間にか全員がおしのように黙っていた。


痺れを切らして


もう帰ろうかー


と言おうとした時


「おい!!あったぞ!!小屋!!」


先頭を歩いていた山田が叫んだ。


そこには猫の額ほどの敷地に

ボロボロな小さな平屋の建物があった。


一見、民家のようだがドアがない。窓ガラスはほぼ割れていた。


こわい


来なければよかった。

口には出さなかったがみんなそう思っていたと思う。


なんだか変な匂いがする


おれは怖くなって2人に「おい…もう家には来たからいいよな。帰ろうぜ」

と言いながら2人に振り向くと

2人は真っ青な顔をしたまま目を見開いて固まっている。


「おい、後ろ」


山田が指さす方に恐る恐る首をひねるとそこには


身長2mほどの

真っ白い細い男が全裸で立っていた。


異様なのはその顔


顔が異常に大きかったのだ。


まるででかい顔におまけのヒモが付いている風船のようだった


片目はその顔の半分ほどあり


もう片目は豆粒ほど小さく黒目しかない


まゆも髪も無く

鼻も口も存在感はなかった


「ーーヌーーツーー」


何か言っている。

ききとることができない。

目を離すこともできない。


「ーーーヌーーーー」


こちらをずっと見ている。


パキ


枝が鳴った


その瞬間


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーー!!!!」


じじが飛びかかってきた。


「うわーーーーー!!」


俺たちは一目散で下山する。

霧の中で転んだ。そのままゴロゴロと転がったところまでは覚えている。

気がつくと山の麓に来ていた。


山田とごんとは、はぐれてしまった。



ーー次の日


俺は昨日のことが心配で2人の家に行ってみた。


家から近い山田の家から先に行く。


いつもみたいに玄関前で名前を呼ぼうとして声をかけられた


「あら。佐々木の坊ちゃん。どうしたのですかこんな所で」


「あ、おばちゃん。こんにちは。昨日山田と遊んでたんだけどはぐれちゃって。あの後大丈夫だったかなって」


そういうと山田のおばちゃんは笑って


「嫌だわあ。うちは全員山田ですよう。」


などと冗談を言っている。


「そりゃそうか。山田太郎くんいますか?」


「たろう?うちには女の子二人だけよ?佐々木の坊ちゃんもよくご存知でしょう。うちの子達ともいつもよく遊んでくれてるじゃないの」



どう言うことだ?


山田太郎は昨日まで確かにいた。


水筒と棒を掲げた山田の笑顔を今でも思い出すことができる。


山田のおばちゃんの話が終わるか終わらないかのうちにゴンの家にも駆け出した。


結果は同じだった。


何故か2人とも


「存在ごと消えてる」


やまのじじのせいだ。


怖かったけど俺はその足で山を駆け上った。


昨日と同じ道を歩いたはずなのに


霧も背の高い草もなく、


頂上にはただの山小屋があった。


なにがなんだかわからないまま、その日は家に帰った。


その日から1週間俺は高熱にうなされた。


新学期が始まってからも山田とごんを知るものはいなかった。


たった全校生徒10人しかいない分校なのに。


あれは幻なんかじゃない。


10数年たった今も鮮明にでも出せる。


二の腕にくっきりと出来た白い手形の痣を撫でながら子供の頃の夏の思い出に思いを馳せる。



読んでくれてありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ