黒竜王と白竜王
よろしくお願いします!
ライアンさんはもちろん止めた。だが、私は止まろうとしなかった。クリフさんを、黒竜国の皆を助けたいと一心に思う。
『エマ、乗って!』
黄色の竜に変化したニコラが、私に背中を差し出す。
「いいの!? 竜人族は、最愛の人しか背中に乗せないっていうけど……」
『それ、クリフォード様が言うんでしょ!? 』
頭の中に響くニコラの声は、思いっきり笑っている。
『いいじゃん。私たち、友達なんだし!! 』
「ありがとう、ニコラ!」
私は大切な竜人族の友達の背中に腕を回す。すると、黒竜よりもずっと小柄な黄竜はふわっと宙に舞い上がる。
『いくよ、エマ!! みんなの腕輪を取っちゃおう!! 』
私たちが隠れていた場所から少し離れた場所で、竜たちが激闘を繰り広げていた。体からは衝撃波が放たれ、口からは炎を吐き、その巨体で体当たりをし合っている。
その竜の中央に、彼はいた。彼は身を挺して仲間を守り、操られている竜を遠くに突き飛ばしている。だが、その体は傷つき、赤い血が流れていた。
その竜の大群の中を、私たちは飛び抜けた。
「ニコラ、左の竜!! 」
『了解!! 』
竜に変化しても、腕輪は腕に残っているようだ。その金色の煌めきめがけ、私たちは突き進む。そして素早くそれに触れ、呪いを無効化していく。
腕輪が抜け落ちた竜は決まってはっと我に返り、辺りを見回すのだ。そして、味方同士が戦っているこの状況を、信じられないといった目で見つめている。
『エマ、あの茶色、いくよ!! 』
「お願い!!」
小さくてすばしっこいニコラは、まるで鳥のように竜の間を飛び回る。そして狙いを定め、次々と私の前に腕輪を差し出す。ニコラに乗っている私は、ただ差し出された腕輪に触れるだけだ。
(ありがとう、ニコラ)
何度も何度も心の中で礼を言った。
こうやってぶんぶん飛び回る私たちに、クリフさんが気付かないはずがない。おまけに、戦場に出てきてしまった私を見て、彼は怒り心頭だ。
『おい、何してる!! 』
いつの間にか隣に付けられ、思いっきり睨まれた。だから私は、この喧騒の中クリフさんにまで届くよう、ありったけの声で叫ぶ。
「腕輪を無効化してるんです!
私が触ったら、呪いが解除されるんです!! 」
その瞬間、すさまじい白い光が放たれた。あまりの眩しさに目を閉じる私。乗っているニコラの体も大きくよろめいた。
『うぅ……大丈夫、エマ? 』
ニコラの声が聞こえ、
「大丈夫だよ」
目を開く。そして、黒竜を確認しようと隣を見た。だが、そこに黒竜の姿はなかった。
「クリフさん!? 」
慌てて彼を呼ぶが、返事はない。そして、背後からけたたましい竜の叫び声が響いてきた。
咄嗟に振り向くと、背後に黒竜の姿があった。だが、その首元に白竜が噛みつき、まるで狼のように首を振っている。首元から血飛沫が舞い散った。
「ニコラ、クリフさんが死んじゃう!! 」
私は、私を支えてくれているこの小さな黄竜に向かって叫んでいた。そして、勇敢な小さな黄竜は、もがき苦しんでいる黒竜へと向き直った。
『腕輪!』
「えっ!? 」
『白竜王、腕輪してるわ!! 』
その言葉に耳を疑った。
まさか……まさか、白竜王までもが、呪われた腕輪をしていただなんて!!
白竜王の左腕を見ると、確かにそこにきらりと光る金色のものが見える。
「ニコラ、お願い!! 」
『もちろん!』
黄竜は、自分の何倍もある白竜と黒竜へ向かって突進を始めた。その間にも白竜は黒竜の急所へ噛みつき、黒竜の動きは次第に鈍くなってくる。
(クリフさん、死なないで!
絶対に助けるから!! )
突進する黄竜に気付いた白竜は、その大きな腕で黄竜を振り払った。小さな黄竜は白竜の攻撃に耐えきれず、ふっ飛ばされる。
だが、私はその一瞬の隙を見逃さなかった。
再び近付いた白竜の腕に飛び移り、その金色の腕輪に触れた。すると、金色の腕輪から嫌な煙が立ちのぼり、白竜の腕からするっと抜け落ちた。
「やった!! 」
そう思うと同時に、全然「やった」ではないことに気付く。
黄竜から白竜に飛び移った私は、空を舞う白竜の左腕に掴まっているのだ。そして、遥か下に、地面が見える。
その地面には、血を流している黒竜と黄竜が横たわっている。
「クリフさん!ニコラ!」
二人の名を呼びながらも思った。
(でも私だって、ここから落ちたら……死ぬ……)
そう思うと、ゾゾーッと体を震えが走った。
私は愚かだ。白竜を止めることばかり考えて、自分の身の安全確保を忘れていた。
だが……
『乗っていいよ』
どこかで聞いたことのあるような、男性の声が頭の中に響く。
『君が僕を助けてくれたんだろう。地上に送り届けよう』
私は白竜に捉まったまま、彼の顔を見上げる。すると彼は、その金色の瞳で私を見下ろしているのだ。
「ご……ごめんなさい。
私、あなたに乗ることは出来ないんです」
おずおずと告げると、白竜王は鼻で笑った。
『そうか。君はクリフォード王の最愛だったな』
そして彼は私を腕につけたまま、横たわる黒竜の横へと舞い降りる。私は慌てて白竜から飛び降り、大好きな彼の元へと急いだ。
いつも読んでくださって、ありがとうございます!




