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全てを失った私が、黒竜王の最愛になるまで  作者: 湊一桜
第三章

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戦争開始

よろしくお願いします!


「国王陛下。とうとう白竜国が宣戦布告をしてきました。

 白竜国だけでなく、奴らと手を組んでいるシャーマニアも共に、です」


「シャーマニアのユウキ司祭は我らを酷く憎み、エマ様を手に入れると言っております」


「……すぐに戦闘準備に入れ」







 朝、いつものように部屋を出ると、城内はただならぬ雰囲気だった。

 人々はいつも以上にせわしなく往来し、どこからともなく号令みたいなものが聞こえてくる。


 すれ違うメイドに声をかけ、何が起こっているのかを聞くと、彼女は複雑な顔をした。


「私には分かりかねますが……

 どうやら、戦が始まるという噂です」


「戦……!? 」


 その言葉に驚きつつも、ふと考えを巡らせた。

 黒竜様は度々、国境で白竜国と戦っていた。今回も、白竜国が国境を脅かしたのだろう。


 (クリフさんも最近は一人で行かないし、大丈夫だよね)



 そんなことを考えていると、少し焦った様子のクリフさんがやってきた。いつもの黒い騎士服姿だが、どことなく雰囲気がピリピリしている。


「エマ。少しの間、ここを離れないといけない用が出来た。

 エマはいつも通り生活していて欲しい」


 その様子を見て、咄嗟に頭に浮かんだのは『戦』という言葉だ。


「大丈夫だ。……必ず帰ってくる」


 クリフさんは、自分に言い聞かせるように言う。その様子を見ると、二度と会えないかもしれないという恐怖に苛まれた。


「クリフさん……戦なんでしょう? 」


 私の言葉に、彼は一瞬泣きそうな顔をした。それで分かってしまった。彼は、いつもとは違う戦いに行くのだということを。

 それでも必死に平静を装い、クリフさんは私の頭を撫でる。


「大丈夫だ」


 その言葉さえ、自分に言い聞かせるように思える。


「エマを残して死ねない」


 (死ぬなんて、言わないでよ……)



 私は、クリフさんがどれだけ勇敢でどれだけ仲間思いかを知っている。仲間を守るため、一人で敵に立ち向かう人だ。だから、仲間を守るため、命すら惜しまないだろう。


 (死ぬなんて、嫌だよ……)


 だが、ここで泣いてクリフさんを引き止めることは良くないことを知っている。クリフさんは私を大切にしてくれるが、その私情を仕事に持ち込んではいけない。……一国の王であるから。



 ここで、ふと思った。白ローブの男たちは、白竜王は戦に聖女を同行させるようだ。傷ついた味方を癒すために。

 私の知る限り、黒竜国に聖女はいない。


「クリフさん……私を行かせてください!」


 そう言った瞬間、


「駄目だ!! 」


珍しく、クリフさんが声を荒げた。そしてそのまま、ぎゅっと抱きしめられる。こんな時なのに、クリフさんに抱きしめられると幸せを感じてしまう。


 (クリフさんがいなくなったら、この幸せすら感じられないんだ……)


 溢れる涙を必死に我慢した。



「エマ、分かれよ。俺はエマが大切なんだ。

 エマを危険な場所なんかに、連れて行きたくないんだ」


 必死に振り絞られる、その切ない声。私はこうもクリフさんに愛されて、とても幸せだ。


「それに万が一、エマがユウキに攫われでもしたら……」


 クリフさんは私を抱きしめたまま、震えていた。普段は飄々としているクリフさんが、こんなにも焦って怯えている。

 私は、そっとクリフさんの体に手を回す。すると、さらに温かい気持ちが込み上げ、心が満たされていく。


「クリフさんが私を心配するのと同じく、私もクリフさんが心配なんです」


 その温かい胸に身を寄せ、目を閉じて告げた。


「私の世界では、女性は一方的に守られているだけじゃありません。

 女性も愛する人のために働き、愛する人を守りたいと思うんです」


 私を大学に行かせるために、お母さんは必死で働いていた。お父さんが交通事故で意識を失った時、お母さんはお父さんの代わりとなって、お父さんを撥ねた人と戦ってくれた。

 私はそんなお母さんを見ていたから、お母さんみたいな人になりたいと思っていた。




 しばらく、クリフさんは何も言わなかった。ただ私を抱きしめ、必死に考えていたのだろう。

 

 やがて、ぽつりと告げた。

 

「分かった。確かに戦には、聖女が必要だ。

 でも……無理をして欲しくない」


 その声は、微かに震えている。そして、私を抱きしめる手にも力が入る。


「俺が渡したブレスレット。その竜の棘は、棘笛にもなっている。

 万が一エマの身に危険が迫った時、その棘笛を吹いてほしい。

 その棘笛の音は、どんなに離れていても俺には届くから」


「はい……」


 私は、ぎゅっとクリフさんを抱き寄せた。そして、その大切な体に顔を埋める。


「ありがとうございます……」


 


 こうして、私はクリフさんとともに戦地へ赴くこととなった。

 クリフさんを守りたい、その一心が、こうも私の心を強くしているのだ。


 

いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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