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全てを失った私が、黒竜王の最愛になるまで  作者: 湊一桜
第二章

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裏切られた元恋人に仕返し

よろしくお願いします!


 振り返ると、そこには久しぶりに会う勇輝が立っていた。茶色に染めていた髪はプリン状態になり、伸びて逆立っている。そして、シャーマニアの市民と同じような破れたローブを着ているのだ。


「あれ? 里果と一緒じゃないんだ」


 そう言いながらも、勇輝に対してもはや好意のかけらもないことに気付く。むしろ、勇輝が嫌で関わりたくない。


 勇輝は悲痛な顔で私に告げる。


「一緒のはずねぇよ!

 里果はあの白竜王とやらが現れたら、俺を捨てて奴についていった」


 (あー……その行動、すごく納得出来る)


 私はため息をついていた。

 だが、勇輝に同情するつもりもない。勇輝だって、私を裏切って助けてくれなかったのだから。


 私と同じ世界から来た勇輝は、やはりクリフさんが怖くないのだろう。私の隣にクリフさんが立っているというのに……しかも私の手を握っているというのに、ずかずかと私に歩み寄る。


「絵麻、マジでごめん。

 里果の件は、出来心だったんだ。

 俺にはやっぱり絵麻しかいないんだよ。俺のところに戻ってこいよ!! 」


 (ちょっと待って。今さら何よ)


 その無神経さに、怒りを通り越して呆れるばかりだ。そして、私の心が勇輝に靡くはずもない。


「よく言えるね」


 私は顔を歪めて勇輝に吐き捨てていた。


「私は勇輝にボロクソに言われて、裏切られて、おまけに助けてもくれなくて、人間不信になるところだった。

 今さらそんなことを言われても、もう何も思わないよ」


 勇輝は悲痛な泣きそうな顔をする。だが、これに惑わされてはいけない。里果や勇輝の自己中な振る舞いにより、私は涙すら出ないほど打ちのめされたのだ。


「二度と私に関わらないで!」



 真っ赤な顔で勇輝を睨む私を、よく出来ましたとでも言うように、クリフさんが優しく撫でる。クリフさんに撫でられると、怒りすら忘れてしまいそうだ。

 見上げると、甘く優しいクリフさんの瞳と視線が絡まる。思わず頬を緩ませると、クリフさんも優しく微笑んだ。


 こんな私たちを見て、


「くそッ……俺の前でいちゃつきやがって!」


勇輝は悪態を吐く。


「絵麻!お前も結局、顔がいい男が好きなのか!! 」


 確かに、クリフさんの美貌に勇輝が勝てるはずもない。だが、私がクリフさんに心を許しているのは、ただ単に彼が美しいからではない。波長が合うと言われれば、そうかもしれないが。


「クリフさんは、勇輝よりも全てがいい男だよ」


 クリフさんの前だと言うのに、私は恥ずかしいことを堂々と言う。だが、止められないのだ。いかに勇輝が酷い男かということを、彼自身に分からせたかったのだ。


「私はクリフさんと一緒にいて、勇輝といた時よりも千倍幸せだよ!! 」


 そんなの、ただの誇張に決まっている。いや、誇張でも何でもない。クリフさんには妻がたくさんいるかもしれない。私に甘い言葉を吐いて楽しんでいるだけかもしれない。クリフさんなんて信じられない……はずなのに。

 だが、こうして私の隣にいて、私の味方をして、私を大切にしてくれて……不覚にも、少しずつクリフさんを信じ始めている自分がいる。恋をすれば負けだと思っているが、少しずつ好きになり始めている自分がいる。



 クリフさんは私を守るように私の前に立ち、静かに勇輝に言い放った。


「そういうわけだから、エマは渡せない」


「おい!! 」


 勇輝は殺気だってクリフさんに掴みかかろうとする。だが、クリフさんは竜人族の王である。クリフさんにとって、勇輝は虫けら同然だ。

 まるで蚊でも払うようにクリフさんが手を振り払うと、勇輝は凄い勢いで地面に尻餅をつく。そんな無様な勇輝に告げていた。


「永遠にさようなら」


 そしてクリフさんと手を繋ぎ、彼に背を向けて歩き始める。


 後ろから、勇輝の喚き声が聞こえる。だが、もう彼のことは気にしない。今はただ、仕返しが出来てスッキリしている。こんな私は、きっと性格が悪いのだろう。




 しばらく歩くと、シャーマニア街の外れに出ていた。目の前には、シャーマニアの街の端にある大きな門が見える。私はクリフさんと手を繋いだまま、その古びた門をくぐった。


「よく頑張ったな」


 クリフさんが優しく頭を撫でてくれる。それが嬉しくて幸せで、私はクリフさんに身を委ねていた。


「エマ、黒竜国に帰ろう」


「はい!! 」


 クリフさんは黒い光に包まれ、一瞬にして黒竜様へと変化する。そして私は、何の躊躇いもなくその背中に腕を回した。鱗で覆われたその硬い体が、その大きな背中が、とても愛しい。

 私がしっかり乗ったことを確認すると、黒竜は大きな羽を羽ばたかせた。


「ごめんなさい。

 結局、密輸に関しては何も出来ませんでした」


 私が顔を上げて騒ぎを起こしてしまったから、クリフさんはあの街に居づらくなってしまったのだ。落ち込む私に、クリフさんはやはり優しい。


『そんなことはどうでもいい。

 ただ俺は、エマとこうやって国に帰れて嬉しい』


「本当に? 」


 その大きな背中に、頬を押し付ける。頬だってぼーっと温かくなる。


『本当に』


 木々の間を飛びながら、穏やかな声で心に語りかけるクリフさん。


『それにエマは、いつだって俺を肯定してくれた』


「そんなの当然です!」


『とうとう俺に惚れたな』


 図星だ。実際私は、後戻り出来ないほどクリフさんのことばかり考えている。だが、それを言ってしまったら私の負けだ。


「もういい。ここで降ります!! 」


 ぱっと手を離す私に、焦るクリフさん。


『そ、それはやめてくれ!! 』


 私が落ちないように気遣ってか、途端に飛びかたが大人しくなる。こうして竜王陛下を手懐けてしまった私は、実は最強なのかもしれない。


「仕方ないですね。これからもずっと、黒竜国に住んであげます」


 わざと偉そうに言って、その大きな背中にしがみつき頬を寄せた。


 こうして、私はもとの世界に帰ることを放棄した。それは、竜王陛下に惚れてしまったからだ。一番恐れていたことが現実となった。だが、今はそれで満足している。この恋が酷い結末を辿らないようにと祈るばかりだ。


 

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