表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

現代系・ローファンタジー系列

怪異散歩

作者: 北田 龍一

「嘘からでたまこと……いやこの場合、創作から出た真かね?」


 私が怪異系ヒロインの作品を投稿して一週間……まさか夢の中で『本物』に襲撃されるとは思わなかった。

 自意識過剰、妄想の行き過ぎとも思ったが、問題は現在進行形。何せ夢から覚めても、非実体の大蛇が見える。今も睨まれているが、正直怖くない。何故なら、夢の中で抵抗したら、素人の私でも倒せてしまったからだ。恐ろしい相手と思っていたが、随分と弱っていたらしい。


「あー……出会い方は最悪だが、どうかね? 親睦を兼ねて散歩でも」


 おもむろに私が提案すれば、化け蛇は固まったまま警戒する。そりゃ『襲って来た相手を散歩に誘う』とかありえない。誰だって裏を疑うだろう。少し考え、相手が恐れていそうな事を否定した。


「心配するな。神社行ってお祓いなんかしない。悪させんなら、今後も傍にいて構わんよ」


 怪物は答えないが、こっちの言葉は分かるらしい。私が靴を履き玄関を出ると『訳がわからぬ』と目で訴えながらついてくる。普通に考えれば……ドアに頭ぶつけるサイズの怪異を、認知して黙認は正気じゃない。私は散歩しながら、誰も見ずに話を続けた。


「私の作品を読んで付け込みに来たんじゃ……いや、オカルト話に引っ張られただけで、狙ったのは偶然かね? どっちにしてもご愁傷様。お前さん変なのに取り憑いちまったぞ」


 ホラー物に触れていると、霊を引き付けるらしい……という話はよくある。作品を創作しでも同様なのだろう。困惑する大蛇に、私は心象をざっくり説明した。


「一週間前に『悪い怪異と共存しようとする人間』の作品を書いてね。そういうのを投稿した人間が、リアルで相対した途端、無下むげにするとかありえんだろ。お前さんとは関係ないかもしれんが……これは私の価値観・哲学の話だ。『面倒くさいこだわり』と言い換えてもよい」


 睨まれているのは変わらないが……奇人変人を見る目つきに変わった気がする。少し傷つくが、敵認定から外れたのを喜ぼう。


「ま、物語みたいに共存できるとは言わんよ。隙見て寝首をくなり、どっか行くなり好きにしろい。ただ……こんな素人に説教されるくらい弱ってるんだ。今、お前さんに必要なのは休養だろう」


 散歩を続け、ついた先は日当たりの良い公園。おもむろに芝生へ寝転がる私。鼻を鳴らした蛇の怪異が、距離を取って草むらに寝そべる。

 数分と経たずに怪異は眠りにつき……釣られるように、私もうたた寝してしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ