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バートン孤児院 ウォレスside①

「今日からここが、あなた達の家ですよ。孤児院のみんながあなた達の家族となるのです。仲良くしてゆきましょうね」


唯一自分たちを守り慈しみ愛してくれた母親が亡くなり、双子のウォレスとウォードはバートン孤児院へと引き取られた。


二人が生まれたのは険しい山々が連なるクロウ山脈の深い谷間(たにあい)にあり、古くからの習慣が色濃く根付く、時代に取り残されたような集落であった。


その地では双子は不吉とされ、生まれた子は忌み子として酷い扱いを受けていた。

加えてウォレスとウォードは精霊憑きだ。

魔力のない者には決して見る事が出来ない精霊と接する様はさらに彼らを忌諱される者としての拍車をかけた。


だけど二人の生みの親である母親だけは違った。

父親は早くに亡くなっており、女手一つでウォレスとウォードを育ててきた肝の据わった女性であった。

しかしその母も長年の無理が祟り、流行病にかかると呆気なくこの世を去った。


そして村人たちは残された双子を追い払うが如く孤児院へと送ったのであった。


どこへ行こうと、酷い扱いを受けようと、ふたり一緒ならどんな事でも耐えられる。

ウォレスはウォードを、ウォードはウォレスを互いの半身としてある意味自分の命よりも大切に思っていた。


きっと孤児院でも迫害されるに決まっている。

双子は忌諱する存在なのだから…と当時七歳だった二人がそこまで難しい言葉で考えていたわけではないが、そんな風に思っていた事だけは確かだ。


だけど迎え入れられたバートン孤児院で最初に告げられたのは、冒頭のそんな穏やかで温かい言葉であった。


そしてそのローザという中年手前の女性院長がウォレスとウォードに“バートン”という姓を与えてくれた。


二人を連れてきた村の者が、忌み子に村の特徴的な姓を名乗らせるのを嫌って教えなかったそうだ。


行政の方へ問い合わせれば調べる事も出来るのだが、わざわざ王都まで行かねばならず、そして大変な手間がかかるため万年人手不足の孤児院としてそれは現実的なものではなかった。

それで仕方なく身元も分からず引き取られた子と同じようにこの孤児院の名称を与える事になったのだ。


ウォレス=バートンとウォード=バートン

それがふたりの新しい名前だった。


ウォレスとウォードは孤児院で初めて、他者から人として接して貰う事の嬉しさを知った。


満足とはいかなくても温かな食事に清潔な衣類。

貧しかった村での暮らしを思うとここは天国の様だと思った。


そしてなにより精霊が宿る大きな木がある。

最近新たに生まれた精霊が宿る大きな楠が。


ウォレスとウォードは生まれた時から植物に宿る精霊に好かれる性質があった。

なぜなのかという理由はわからない。

わからないが、清い魂が好かれるのではないかと亡き母は言っていた。


双子はすぐに、楠の精霊と仲良しになり、そして「クー」と名をつけていつも一緒に遊んでいた。


魔力の無い者には精霊の姿は見えないため、孤児院の職員たちはいつも中庭で双子が奇怪な行動をとっているように見えたが、二人が精霊憑きと知っているために何も言わず見守ってくれていた。


精霊は最初は植物とも動物ともつかない存在だった。

だけど双子が成長するように精霊も成長してゆき、ある日突然人間の姿で現れるようになったのだ。


しかし精霊には決まった性別がないという。

生殖機能を持たないからだ。

だけど自然界に(くみ)するものとして不思議と雌雄どちらかの性質は持っているらしい。

そしてその精霊が強く願えば番を持ち、子を成す事も出来るそうなのだが……その仕組みは精霊界の(ことわり)の中にあるため、人間などには理解出来ないもののようだ。


最初に言ったのはウォードだった。


「クーおまえ、おとことおんな、どっちかになれといわれたらどっちになりたい?」


クーは首を傾げながら答える。


「えー?うーんそうだなぁ…ウォードはどっちになってほしい?ウォードが決めた方にするよ」


クーの言葉を聞き、ウォードは迷う事なく告げた。


「じゃあおまえ、おんなになれ。そしたらしょうらいはオレのヨメにしてやる」


「ホント!?オンナになったらウォードと一緒にいられるの?」


「ああそうだぞ。ふーふになったらずっといっしょだ」


「やったぁ!じゃあオンナになる!」


そんなウォードと精霊のやり取りをウォレスは


「……そんなきめかたでいいのかよ」


と呆れた目で見ていた。



孤児院では基本的な読み書きや計算、そして初歩的な大陸公用語であるハイラント語を教えて貰えた。

それに加えて双子が夢中になって学んでいた事がある。


近くの自警団に勤める老騎士から剣術の基礎を学ぶ事であった。


きっかけは孤児院の前の広場でウォレスとウォードが木の枝で騎士の真似ごとをして遊んでいた時だ。

その老騎士がたまたま通りかかり、なかなか筋が良いと気まぐれに剣術を教え始めた事だった。


しかし二人は一を教えて二を学ぶ勢いでめきめきと腕を上げ、すぐに老騎士は双子の才能を認める事になる。


そして二人が精霊憑きである事を偶然知った老騎士は、この双子を市井に埋もれされるにはあまりに惜しいと、遠縁にあたる王国騎士団の団長に相談したのであった。


老騎士にしてみれば、孤児である双子が将来騎士として立派に身を立ててゆけるようにとの親切心だったのだろう。


しかしそれがきっかけでウォレスとウォードはその存在に目をつけられる事となってしまった。



そしてそれは突然やって来た。



王国騎士団が双子を引き取ると孤児院に申し出たのであった。






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短めの更新かな?と思ったけど普通に更新できました。

良かった♪ฅ(ỏ∀ỏ)ฅバンザーイ


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