第2話
始発電車の少女に気づいてから、一ヶ月が過ぎた頃。
会社の車で取引先へ向かう途中、赤信号で止まったら、高校生の集団が視界に入ってきた。十数メートル先に学校があり、その正門からわらわらと吐き出されてくる。
楽しそうに喋り、表情も明るい。青春を謳歌している様子だった。
「ああいう時代、俺にもあったなあ」
独り言を呟き、自然と笑顔になるが……。
私の表情は、すぐに固まってしまう。女子生徒の制服に見覚えがあったからだ。
始発電車で見かける少女と全く同じセーラー服だった。
セーラー服は海軍の水兵服がルーツなので、パターンは限られてくるはず。似たり寄ったりのデザインだろうし、それらの微妙な違いなんて、男の私には区別できない。
しかし袖口や襟の模様、胸元のスカーフなど、細かいパーツの色や形がそっくりな上、左胸の校章が同じなのが決め手となった。
「あの子の学校、こんな場所にあったのか……」
この近辺は確かにあの電車の路線だが、私や彼女が乗る始発電車だと、反対方向になってしまう。
学校から帰る方向であり、夕方の電車ならばわかるが、始発なのはおかしい。例えば用事で学校に泊まって朝帰るとしても、それは例外的な出来事で「いつも」になるはずがない。
彼女は何故いつもあの電車に乗るのだろうか……?